―[貧困東大生・布施川天馬]―


◆東大生が選ぶ無駄な教育投資とは

みなさんは、子どもの教育にどれだけお金をかけていますか? 受験ブームの高まっている昨今は、猫も杓子も塾に通う時代。地方ならばいざ知らず、都心部に住んでいる家庭であれば、塾や予備校に通っていたり、通うことを検討していたりする方も多いのではないでしょうか。

現代では教育手段は多岐にわたります。昔ながらの塾・予備校家庭教師に加えて、「スタディサプリ」のような映像授業プラットフォームも出現しましたし、参考書も以前より質が高い。また、一口に塾と言っても集団指導の塾、個別指導の塾、映像授業中心の塾、はたまた「武田塾」のようにコーチング専門の塾と、これも種類が豊富で、どこにどれだけの投資をするか迷うでしょう。実際、どの手段を使うべきなのでしょうか。

私は、独自に現役東大生、東大卒業生100人を対象として、幼少からの学びの環境についてアンケートを実施しました。すると、東大生は様々な手段を活用していることが分かりました。多くの方が、塾・予備校・通信教育・参考書などをバランスよく使いこなしています。しかし、同時に「これは無駄だった」と多くの東大生が感じている教育投資の存在も浮かび上がってきました。

今年の2月20日に、このアンケート結果を分析し、そこから考察できる内容をまとめた『東大合格はいくらで買えるか?』を上梓しています。今回は、東大生の多くに無駄だったと断じられる教育投資の正体についてお伝えします。

◆無駄な教育投資は映像授業!

東大生たちが無駄だったと感じた教育投資とは、映像授業でした。映像授業といえば、受験業界でも最大手の東進ハイスクールが有名です。実際、東進予備校出身の東大生は数多くおり、一見映像授業が無駄だと感じていないように見えます。

今回のアンケートでは「なぜ無駄だと感じたか」の理由についてもインタビューしています。映像授業を無駄だとする方々から共通して上がっていた理由は「どうせやらないから」。

映像授業は、特にオンデマンド配信されているような授業サービスだと、いつでもどこでも授業を受けられて、とてもお得に見えます。映像なので理解している単元のビデオは飛ばせますし、逆によくわからないところは繰り返し何度も聞きなおせます。ですから、親からすれば「部活や習い事で忙しい子でも、授業が自分のペースで受けられる夢のようなサービス」に見えるのではないでしょうか。

しかし、「いつでも受けられる」ことは、「いつか受ける」確約をしていません。いつかは必ず授業を受ける担保があってこそ、「いつでも受けられる」利便性は輝きます。逆に、「いつでも受けられるからいいや」と後回しにされるケースが頻発しているのです。

今回とったアンケートの中でも「オンデマンドだったためほとんど授業を視聴せずに終わってしまった」「お金を払っただけで活用できなかった」「自習室利用権を目当てに加入したが、結局通わなかった」などの意見が寄せられています。

もちろん、映像授業の質が劣っているわけではありません。「いつでも授業が受けられるサービス」を利用していて、結局利用せず終わるのは、利用者側に非があることは明らかです。ですが、皆様にも「ジムに加入したがほぼ通わないまま退会した」ような経験があるのではないでしょうか。東大受験生といえども、人間なのですから、「いつか行けるから今日はいいや」と考えてしまうことは仕方ないでしょう。

◆なぜ東大生は映像授業塾に入るのか

映像授業最大手の東進予備校は、非常に良質な講義ビデオが集められていることは有名です。授業を受講さえすれば、素晴らしい体験ができます。

一方で、一定数の受験生が映像授業を利用しないまま終わってしまう。それに、映像授業の欠点として「先生にすぐ質問ができない」ことが挙げられます。東大生の中には、これを嫌う人も多い。それなのに、東進ハイスクールが毎年開く東大合格祝賀会には、大量の東大新入生が集まります。

この理由は、東進予備校が成績優秀者に熱烈なラブコールを送って優遇措置を払うところにあります。東進予備校は毎シーズン無料で招待講座を開いたり、無料模試を開催したりして、とにかく多くの受験生の情報を獲得します。

そして、その中の成績優秀者には、特待生待遇を持ち掛け、東進に在籍だけしてもらうのです。こうした籍だけ置く受験生は、講座をほぼ取らず、受講料も払わないで、普段は校舎にも姿を現しません。先ほど「自習室利用を目当てに通った」人がいましたが、この方もおそらくはその口でしょう。

東進側からすれば、成績優秀な受験生を確保し、彼らの持ち帰ってくる合格実績を自分たちのものにできるので嬉しい。生徒たちは、無料で自習室が利用できたり、模試が受けられたりするので、嬉しい。両者ともに得する関係というわけです。

そして実は、東進ハイスクールは学校法人ではありません。株式会社ナガセによって運営される、株式会社です。営利を追い求めるのは当然と言えます。

ただ、この仕組みが合格した東大生のためになったかと問われると、はなはだ疑問に思えます。ほとんど姿を現さない一部のエリートが勝ち取った実績を高々と宣伝し、純粋にその合格実績を見て加入してくるような方々もいるはず。いったい、何を信じればいいのでしょうか。

とはいえ、同じようなことは、どこの予備校もやっていることです。各予備校の東大合格者数を足すと、その年の東大生の数を大きく上回ります。このような「宣伝用の特待生」制度は、程度の問題なのかもしれません。

ですが、どうしても私には、「在籍だけしている特待生」の合格実績をひけらかすことには、抵抗を感じられるのです。このからくりを知らない、特に地方の方々は、どのように受験に太刀打ちしていけばいいのでしょうか。これからは、受験業界もモラルが試されます。

【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Twitterアカウント:@Temma_Fusegawa

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