カラパイアの元の記事はこちらからご覧ください

 アメリカの研究者が新しい地球温暖化防止のアイデアを提唱している。大気に氷の核となる粒子を成層圏に撒いて、除湿しようというものだ。

 それによって大気中の水蒸気が減ると、そこにこもる熱が少なくなる。だから地球全体が冷えることになるというのだ。

 『Science Advances』(2024年2月28日付)に掲載された研究では、それが効果的であるだけではなく、今の時点で特に悪影響もないという。果たしてこのジオエンジニアリングは、本当にうまくいくのだろうか?

【画像】 成層圏に氷の核をまき、地球の大気を除湿

 米国海洋大気庁地球システム研究所のジョシュア・シュワルツ氏は、「それほど複雑なアイデアではありません」と語る。

 このアイデアは特効薬でも、誰も知らない魔法のやり方でもないが、正しい方向へ向けて行動するための、選択肢の1つなのだという。

 地球の大気に含まれる水蒸気は、温室効果ガスとして働く。太陽からの放射線を吸収して、そのエネルギーを地表に放つからだ。

 そこで、氷形成の核となる微粒子(氷晶核)を成層圏に撒こうというのが、今回のアイデアだ。これによって水蒸気が凝縮して氷になれば、そこに捕らえられる熱が減る。

 シュワルツ氏らの研究によるなら、もしも水蒸気の3%を除湿できれば、地球全体で冷却効果が発揮されるという。

[もっと知りたい!→]「太陽の光を遮断する」地球温暖化対策ためのアメリカで提案されているジオエンジニアリング

 今回の研究では、NASAが行ったATTREX(Airborne Tropical TRopopause EXperiment)の観測データから開発したモデルで、成層圏の除湿に必要な氷晶核粒子の量と、その結果を予測している。

 その結果、このアイデアは確かに地球温暖化の緩和に役立つだろうことが明らかになっている。

2

photo by iStock

気候変動への挑戦: 技術的課題の克服

 アイデアを実行するためには、まだいくつもの技術的な課題がある。それでもシュワルツ氏はやらない理由はないと考えているようだ。

 「私たちは、それが勝利につながると確信しています。何かまずいことになるわけではないし、具体的にやるべきこともわかっています」

 これまでの研究では、それが実行不能で、あきらめるべきだと告げるものは何一つ見つかっていないのだという。

 成層圏は地表から10~50kmの上空に広がる大気の層だ。その高さを飛べる飛行機はあるが(なにせ成層圏ディナークルーズが企画されるくらいだ)、氷晶核を撒くための技術はこれから開発せねばならない。

[もっと知りたい!→]温暖化が問題なら地球の軌道を変えたらよくね?とアメリカの議員。実際にそれは可能なのか?その影響は?

 またそれによるリスクや予期せぬ影響があるかどうかを知るために、今後も研究を続ける必要がある。

 それでも温暖化に対応する安全な方法があるなら、試してみない手はないとシュワルツ氏は話す。

 彼はまた、この方法がCO2がもたらす温暖化の70分の1程度しか冷却しないため、「CO2の問題を解決するわけではない」と述べている。

3

photo by iStock

この方法に懐疑的な声も

 一部の科学者はこの提案に対して懐疑的である。

 国立大気研究センターのケビン・トレンバース氏は、「成層圏を単独で脱湿することに焦点を当てるのは意味がない」と述べた。

 ペンシルバニア大学の気象学者マイケル・マン氏は、「シュワルツ氏はその効果が極めて小さいものであることを認めており、効果の持続性においても問題がある」と指摘している。

 多くの提案された発明のように、この効果を維持するためには定期的に成層圏に氷晶核を撒くをまき続ける必要があり、その間に大気中にどんどん二酸化炭素が蓄積されるという長期的な問題があるようだ。

References:Considering intentional stratospheric dehydration for climate benefits | Science Advances / Dehydrate the stratosphere? Study suggests it to fix climate change. / Scientists create new idea on how to hack a warming planet: drying the upper atmosphere / written by hiroching / edited by / parumo

 
画像・動画、SNSが見られない場合はこちら

成層圏を除湿すればよくない?地球温暖化を防ぐ新たなアイデアを提唱する科学者