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これまで様々な被災地を見た経験は国会質問などでも役立っている(写真:時事通信

「この投稿をみたときに膝から崩れ落ちました。もう、何やってんだと。被災地の方々に負担をかけて、レンタカーで渋滞の一因になって、国会議員がやるべきことじゃないだろうというふうに私は本当に思います」

1月8日、<迷惑系国会議員!被災地の悲痛な声を無視して現地入りしたれいわ新選組山本太郎議員が批判されるべき理由>と題したYouTube動画で、こう語ったのは日本維新の会の音喜多駿参議院議員(40)だ。

能登半島地震の発生直後の1月5日に、被災地の視察に行った、れいわ新選組山本太郎代表(49)は猛烈なバッシングにさらされた。

震災発生から2カ月。山本氏が“ボランティアバッシング”に感じた違和感、そして自らに向いた批判について振り返った(全2回の2回目)。

■“余りもの”のカレーを食べたら猛烈バッシング

「私は1月5から6日にかけて輪島に視察に入ったんですが、ご存じの通り、そのとき避難所でNPOの方から勧められた炊き出しのカレーを食べたことで大バッシングを受けました」

山本氏がX(旧ツイッター)の活動報告のなかで、被災地の窮状とともに、炊き出しに誘われて、カレーを食べたことを報告すると、《食べるのは遠慮すべきだろ》《恥を知れ》など、批判が殺到した。冒頭の音喜多議員のように、公人や有名人からの批判も……。

「私がいただいたカレーは、全体の配食が終わってNPOの方々もみんな食べ終わった後に残っていたカレーでした。もちろん、自己完結ということで自分の食料は持参していましたが、NPOの方の『おいしいから食べて行ってよ』という申し出は非常にありがたかったし、その好意を断る理由はありません。

普段の何倍もおいしいカレーでした。そうした時間の中で、『あの避難所ではどうだった』『何が足りてない』とか、被災者の方々の状況を知るうえで非常に重要なコミュニケーションがとれたと思っています。私自身がバッシング受けるのはかまいませんし、何かしらの議論のきかっけになるなら、それでいいと思っていますが……」

“余りもの”のカレーでの炎上。テレビやネットニュースなどでも取り上げられた。

山本太郎のカレーごときでこれだけ炎上するんだから、この先もボランティアがちょっと支援物資を食べたり、何かしたら炎上する可能性がある。そういったことも、ボランティアに行くことをためらわせる一因になっていると思います」

■同時期に被災地入りした議員は他にも……

“国会議員は被災地に入るべきではない”。そんな批判は、山本氏だけに向けられたものだったようだ。実は、能登半島地震の発生直後から複数の議員が被災地に入っている。

山本氏が現地入りしていたのとまさに同じタイミングで、公明党の塩田ひろあき参議院議員(62)も現地を視察し、現地の様子を写真入りで、Xに投稿した。

また、公明党の中川宏昌衆議院議員(53)も「発災翌日からのべ10日にわたり」被災地に入ったことを明かしている。さらに、自由民主党片山さつき参議院議員(64)も1月7日に被災地を視察、その一部始終を自身のYouTubeチャンネルで公開している。

山本氏を含む、震災発生から早いタイミングで現地入りした議員たちは、国会内外で情報を発信したり、国会質問を通じて政府の対応をただしたり、行政へ要望を伝えたりするなど、現地で得た知見を国会議員の仕事に生かしている。

しかし、同時期に被災地を視察した他の議員は批判の対象とはならず、山本氏だけバッシングを受け続けてきた。

だが、山本氏はあのタイミングで、現地を視察したことをまったく後悔していないという。視察を通じて、現地の声をいち早く国会に届けることができ、今後の震災対応に必要なものも見えてきたからだ。

「今回の災害でもわかったことは、災害が起きたらかなりの割合で“自己責任”で何とかしろということにされてしまうということです。これまで何度も起きてきた災害に対するノウハウが体系だって蓄積されてないんです。内閣府の防災担当を中心にそれをやっていくべきなんですけど、2〜3年で役人が交代するので人材が育ってない。

そこを考えると、まず国としてやらなきゃいけないのはノウハウを持った人たちを国で雇うしかない。災害が起きたときは、被災自治体の職員たちは動かなくていいというくらいの応援体制を今から整えておかないと。現状のままだと、首都圏直下や南海トラフ地震などのように、もっと広域の災害になった場合、かなり長期にわたって食料も救援も届かないという状態が間違いなく起るでしょう。国は、もう諦めてしまっているようにすら見えます」

山本氏が質疑に立った2月16日の災害対策特別委員会でも指摘していたように、大規模災害後に、被災地の諸問題を調査し対策を立てる“災害対策特別委員会”が開かれたのは、熊本大地震(2016年4月)で12日後、西日本豪雨(2018年6月)では11日後。しかし、今回の能登半島地震では、1カ月半後と大幅に遅延。

個人で大規模災害に備えようにも、限界がある。

「とくに都会で大震災が起こったら、隣に住んでいる人の顔もわからないという状況ですから、能登と違って助け合おうにも、かなり難しい状態になると思います。

一人で備えられることといっても、せいぜい3日分の食料や充電池を用意しておくことくらいです。今月乗り切るのが精一杯って人たちもいっぱいいるのに、1カ月分の備えなんて無理ですよ。あとは、選挙でまともな政党に投票することくらいでしょうか」

■災害現場に入って話を聞くことによって見えてくるものがある

山本氏は今後も積極的に被災地支援に携わっていくという。

「じつは、1月5日に能登の被災地から帰ってきてすぐ、建設現場で使用する小型重機の免許を取得したんです。以前から扱えるようになりたいという思いはあったんですが、忙しさを言い訳して先延ばしになっていました。でも今回、能登の被災地に行って、改めて必要性を感じたんです。

というのも、例えば消防が扱う重機は、人命救助の過程でなければ使わない運用なんです。ですから基本、被災者に必要な物資を届けるための陥没して道でなくなったところを切り開いていく作業などは、技術系の災害ボランティアやNPOの方がやっていて、その後を行政が入っていくという状態になっちゃってるんですよ。

壊れた家の撤去などに関しても、警察や消防がどんどん前に出てできればいいのですが、実際に主力になっているのは民間です。それを考えたときに、重機を扱える方は、ものすごく力になる。私がその一人になりたいという部分ももちろんあるんですが、それだけじゃなくて、やはり災害現場に入って一緒に時間を過ごして話を聞くことによって見えてくるものがある。

国が先回りして課題を見つけ、予算付けなどを行っていくためには災害現場に入って交わるということが重要だと思うんです。ですから今後も、もちろん被災地には足を運ぶつもりです」

実際に山本氏は、2月26〜27日にも石川県珠洲市を訪問。Xにこう投稿している。

〈ビニールハウスに一家で避難する農家の方、 金沢に家族を残し半壊の家から海に出る漁師さん、支援を続けるNPOの方々にも話を伺った。 参議院予算委員会に向けて、進まない復旧復興に苦しむ住民の声と必要な施策の提案、 政府に届ける準備をします〉