この記事をまとめると
■イギリスのサマセット州に「アリエルモーターカンパニー」というメーカーが存在する
■スチール製チューブラーフレームで構成される超軽量ボディが特徴となっている
■途中からはホンダのタイプRエンジンを搭載しており、軽量でハイパワーな仕立てとなる
アトムはまさに公道を走るフォーミュラカー
自動車をスポーティな方向のみに進化させていくと、それは最終的にはこのようなモデルになる。イギリスのサマセット州に本社のあるアリエルモーターカンパニーが生産しているライトウエイトスポーツカー、「アトム」シリーズの進化を語るのならば、おそらくはこのような表現を用いるのがもっとも正しいのではないだろうか。
そもそもアトムの始まりは、コヴェントリー大学で進められていたLSC(ライトウエイトスポーツカー)プロジェクト)の「アリエル・アトム」にあった。この研究開発には外部の企業からの資金的な、そしてまた技術的な援助も得られ、1996年のバーミンガムショーにおいて、LSCは初公開されることになる。
ここでの評価で大きな自信を得た研究室の講師、サイモン・サンダースは、それから3年後の1999年、アリエルモーターカンパニー社を設立。アトムの量産に向けての準備を開始したのだ。
そして2000年、最初のアトムが発売される。その姿はフォーミュラーカーよりもさらにカウリングの面積が小さな、空力面で重要なノーズコーンやサイクルフェンダー、コクピット、リヤのエア導入口などをカバーしたのみで、スチール製チューブラーフレームが、ボディの枠組みを構成するデザインだった。
ファーストモデルに搭載されたエンジンは、ローバー製の直列4気筒Kシリーズ。排気量は1.6リッターと1.8リッターが搭載され、最高出力は各々113馬力、128馬力を発揮していた。その数字は平凡だが、一方で車重は450kgと驚異的な軽さだったため、じっさいの走りは乗る者の誰をも感動させるスパルタンなものだった。
2003年に登場した「アトム2」からは、ホンダ製のK20A型2リッター直列4気筒エンジンが採用され、これには自然吸気とスーパーチャージャー付きの2タイプが用意された。最高出力は前者が223馬力、後者は300馬力に引き上げられ、さらに軽量化も450kg強にまで徹底されたため、走りのレベルは加速性能をメインにさらに魅力的なものになった。
このアトム2の走りがあまりにも過激すぎるという声もアリエルには多く届いたのだろう。2007年にリリースされた「アトム3」、そして2013年デビューの「アトム3.5」では、フレームの補強やアクセルのバイワイヤ化、エンジンマウントの大型化などによって、より扱いやすさにターゲットを定めたチューニングが施されている。エンジンはホンダのK20Z4型に変更され、自然吸気で248馬力、スーパーチャージャー付きは304馬力を発揮した。
ホンダエンジン搭載で超刺激的な1台に!
アトム3はその後、2013年には「アトム3.5」へと進化するが、これは搭載エンジンに変更はないものの、おもにフレームの強化やノーズコーンの延長などを施したマイナーチェンジモデル。メーターパネルがデジタル式となるなど、コクピットの雰囲気もより現代的になった。最高出力はスーパーチャージャー版のみ314馬力に向上した。
さらにアリエルは、アトム3と3.5の間には10台の限定車として「無限チューン」を、また3リッターのV型8気筒エンジンを482馬力の最高出力で搭載するとともに、500kgの車重を実現した25台限定の「V8」を、いずれも2010年に発表。アリエルの名はスポーツカーのなかで、さらに存在感を増していくことになったのである。
そして現在、彼らが生産しているモデルが2018年にデビューを飾った「アトム4」だ。ここまでのヒストリーを読んでいただければ理解できるように、アトムの車名に付される数字は、搭載エンジンが変わると最初の数字がひとつずつ進む。
ちなみにアトム4で選択されたパワーユニットは、ホンダのシビックタイプR用、すなわちK20C1型で2リッターの直列4気筒であることは変わらないが、じっさいにはそれをターボ化するなど、ベースのK20C1型エンジンから流用された部品はほぼないといっても、それは間違いではないくらいだ。最高出力は324馬力と355馬力の2タイプ。両エンジンの違いはECUのマッピング、そしてエグゾーストのデザインにある。トラス構造のパイプフレームも、剛性を高めるためにその太さが拡大された。
アトム4のバリエーションとしてラインアップされる「アトム4R」は、エンジンの最高出力をさらに405馬力に高めたモデル。サイドポンツーンはもちろん標準で、それはエンジンの冷却に必要不可欠なアイテム。左側には追加のラジエターが、また右側にはインタークーラーがレイアウトされている。ターボのブースト圧は3段階に調節ができる。
オプションではあるが、ミッションにクワイフ社製の6速シーケンシャルマニュアルを用意しているのも走りを極めるファンには嬉しい。なにしろエア圧で1秒間に5段ものシフトをフルスロットルのまま実行してくれるというのだから。
アリエルのアトム・シリーズ。それはスポーツカーが次々に電動化していくいま、もっとも古典的なコンセプトではあるがスパルタンで面白い、そんなモデルといえるのかもしれない。
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