吉田修一の“最高傑作”との呼び声も高い同名小説を、李相日の監督で実写化する映画『国宝』の製作が決定。主演の吉沢亮が稀代の女方歌舞伎役者を演じることが明らかになった。

【写真を見る】『悪人』、『怒り』につづき3度目のタッグとなった吉田修一と李相日

本作は2017年から朝日新聞にて連載された同名長編小説が原作。歌舞伎界を舞台にした本作は、連載時から大きな話題となり、2018年に単行本化。2019年第69回芸術選奨文部科学大臣賞、第14回中央公論文芸賞をダブル受賞し、吉田自身が、3年の間歌舞伎の黒衣をまとい、楽屋に入った経験を血肉にし、書き上げた渾身の作品となっている。吉田にとって作家生活20周年記念作品となる「国宝」は、4年の歳月をかけて書き上げた上下巻800ページを超える大作で、任侠の一門に生まれながらも、歌舞伎の世界に飛び込み、芸の道に青春を捧げ、芝居だけに生きてきた主人公、喜久雄が、その命を賭けてなお、見果てぬ夢を追い求めていくを姿が壮大なスケールで描かれている。

そんな小説「国宝」を映像化する李は、初めて吉田作品に挑んだ『悪人』(10)で第34回日本アカデミー賞13部門15賞受賞、最優秀賞主要5部門を受賞。さらに第35回報知映画賞作品賞、第84回キネマ旬報日本映画ベストテン第一位、第65回毎日映画コンクール日本映画大賞など国内のあらゆる映画賞を総なめにし、第34回モントリオール世界映画祭ワールド・コンペティション部門で最優秀女優賞を受賞するなど、海外でも高い評価を獲得した。再び吉田作品に挑んだ『怒り』(16)では第64回サン・セバスティアン国際映画祭コンペティション部門に唯一の邦画作品をして出品され、大きな話題を呼んだ。脚本は、第46回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門招待作品、相米慎二が監督を務めた『お引越し』(93)で脚本家デビューし『八日目の蝉』(11)などのヒット作を手掛け、細田守が監督を務めた『時をかける少女』(06)、『サマーウォーズ』(09)、『おおかみこどもの雨と雪』(12)で東京アニメアワード個人賞(脚本賞)を受賞している奥寺佐渡子が手掛ける。

芸の道に人生を捧げる本作の主人公、喜久雄を演じる吉沢にとって、今年2024年は30歳となった節目の年。物語の舞台は、戦後から高度経済成長期の日本。任侠の家に生まれた喜久雄は、数奇な運命をたどり、歌舞伎役者の家に引きとられる。激動の人生のなかで、やがて歌舞伎役者としての才能を開花させていく。これまで踊りの経験がなった吉沢は、まずはまっすぐ歩くことから始め、すり足で歩く、正座の仕方、扇子の持ち方、取り方など、基本動作を学ぶことに。稽古初日は、まっすぐ歩くことだけで終わり、撮影時にきちんと踊ることが出来るのか不安もあるなか、他の仕事をセーブ歌舞伎の稽古を行ったとのこと。

本作の撮影は今年3月からスタートし、6月クランクアップ予定。公開は2025年予定となっている。来年公開作品の目玉になりそうな本作。共演者などの続報を楽しみに待ちたい!

■<キャスト&スタッフコメント>

吉沢亮(喜久雄役)

「吉田修一先生×李相日監督の3作目。『悪人』ではただただ視聴者として感嘆し、『怒り』ではオーディションの参加者として、なにも出来なかった自分への苛立ち、完成を観てのどうしようも無い昂まりと悔しさ。そして『国宝』では当事者としてなにを思うのでしょう。稀代の女方を演じると言う、途方もない挑戦ではございますが、その挑戦の先に見える景色がなによりも美しいものである事を信じて。日々精進です」

●吉田修一(原作)

「『悪人』、『怒り』、そして『国宝』へ。夢が叶う。三たび、信頼する李相日監督に自作を預けられる喜びにあふれている。そしてもう一つ、夢が叶う。『国宝』執筆中も書き終えてからも、ずっとあることを夢見ていた。無理は承知ながら、この稀代の女方、立花喜久雄の舞台を一度でいいからこの目で見てみたいと。その夢が叶う。吉沢亮という稀代の役者を迎えて」

●李相日(監督)

「芸に身を捧げ、人生を翻弄される多彩な登場人物たちが織り成す豪華絢爛な歌舞伎の世界観。吉田さん渾身の作品を担う重圧に慄えが止まりません。小説刊行からの構想6年。言い換えれば、“覚悟“に要した年月です。決め手は、吉沢亮の存在。美しさと虚しさを併せ持つ妖艶なその存在感。役者として着実に成長し進化を遂げたいま、まさに機が熟した宿命の出会いです。数多ある困難を超えた先に拡がる未知の世界に、関係者一同胸昂る思いです」

文/スズキヒロシ

吉沢亮が稀代の女方歌舞伎役者に!吉田修一原作&李相日監督の映画『国宝』製作決定