JRのきっぷには、インターネットではほぼ予約できず、「みどりの窓口」に並び発売開始と同時の午前10時00分00秒に発券ボタンを押してもらわないと予約できないレアものが存在します。そのようなきっぷの競争率を可能な範囲で調べました。

夜行列車は昔から競争率が高い

鉄道のきっぷの中にも、予約すること自体が困難な「レアもの」が存在します。例えば運行開始初日の初列車や最終運行日の最終列車のように期日に意味があるケースや、珍しい車両が珍しい路線を走る臨時列車などです。

現在でも一部の駅には、発売開始と同時に発券してくれる窓口(いわゆる10時打ち)と「そのための列」が設けられていますが、こうした列車の運行日には、発売前日から駅周辺のホテルを予約して、始発列車の到着以前から並ぶ人もいるほどです。

なお定期運行されている列車でも、人気のある設備は予約困難です。かつて運行されていた寝台特急北斗星」の豪華個室寝台「ロイヤル」は、27年の歴史の中で一貫して予約困難なレア個室でした。私(安藤昌季:乗りものライター)は金曜日の「ロイヤル」を家人の協力を得て狙ったことがありますが、予約できたのは4人中1人だけでした。

北斗星」の「ロイヤル」以上の競争率だったのが、寝台特急トワイライトエクスプレス」の最上級個室寝台「スイート」です。私は家人2人で予約へ向かい、妻が予約できましたが、訪れた駅の「みどりの窓口」では「長年この仕事をしていますが、このきっぷを見たのは初めてです」といわれたほど。普段から相当な競争率だったと考えられます。寝台特急カシオペア」の「カシオペアスイート」も人気で、別の日に4回チャレンジしましたが、予約できたのは一度だけでした。

現代では、多くの人が狙うのが寝台特急サンライズ瀬戸・出雲」の個室寝台です。具体的には1人用A個室寝台「シングルデラックス」、2人用B個室寝台「サンライズツイン」、1~2人用B個室寝台「シングルツイン」の3設備狙いが多く見られます。また特急「サフィール踊り子」のグリーン個室も人気があるようです。

10時打ち失敗… ムムッ、旅行会社か

サンライズ瀬戸・出雲」の個室寝台はインターネット予約サービス「e5489」でも購入できるので、現在は自身のスマートフォンなどでも「10時打ち」できます。しかし、インターネット回線は駅の「みどりの窓口」より圧倒的に遅く、10時にアクセスが集中して落ちやすいうえに、かつ発券までの手間が多いため、かなり困難といえます。

もっとも、複数人での予約を狙った人が、余計に取れた分をキャンセルすることがあるので、「e5489」での「10時打ち」が無駄ということはありません。午前10時から10分間くらいはキャンセルが出る可能性があるため、スマートフォンで何度か挑戦する意味はあります。

ちなみに、発売開始時点ですでに予約されているケースもあります。旅行会社のツアーできっぷが販売前に押さえられている場合です。ある観光列車では、大手旅行会社が「全席確保」を売りにしたツアーを販売していました。こうした列車だと「10時打ち」をしても絶対に予約できません。ツアーに予約した乗客がキャンセルした場合のみ、一般売りされるということになります。

レアきっぷは記念日や臨時列車を除けば、現代でも夜行列車に多いといえるでしょう。臨時列車なら夜行特急「WEST EXPRESS 銀河」が人気です。

WEST EXPRESS 銀河」については、JR西日本の事前申し込みサービスを使えば、インターネットからでも同一条件で「10時打ち」が可能ですので、純粋に「運」ということになります。ただし「グリーン個室プレミアルーム」と「ファミリーキャビン」は、事前申し込みの対象ではないため、こちらは「みどりの窓口」で「10時打ち」をしないと、予約はかなり厳しくなります。

では、実際の競争率はどの程度なのでしょうか。複数の知人に謝礼を支払い、10時打ちに協力してもらいました。複数人で別の駅に分かれ、そのうち何人がレアきっぷを取れるのか確かめてみたのです。少しでも窓口への対応負担と予約の競争率を下げるために、3月平日発の下り「サンライズ瀬戸・出雲」と「WEST EXPRESS 銀河」のレア設備を狙ってみました。

最後は「運」 でも確率を上げるには

まずは「サンライズ瀬戸」。4室しかなく、最もきっぷが取りにくいといわれる「サンライズツイン」へ4人での予約を試みましたが、予約できたのは1枚。喫煙室でした。「『禁煙室で』といわれるとまず取れませんので、『禁煙喫煙どちらでも』といった方がいいですよ」と駅係員から助言された通りの結果です。

次に「サンライズ瀬戸・出雲」で計12室ある「シングルデラックス」を狙いました。これは5人中2人。「瀬戸」「出雲」それぞれが予約できました。必要なのは1枚だけなので、余計に取れた「シングルデラックス」は即座にキャンセルしています。

サンライズ瀬戸・出雲」の「シングルツイン」については禁煙室狙いでしたが、3人中2人が予約できました。「禁煙喫煙どちらでも」とすれば、確率が上がりそうです。

別の日に「WEST EXPRESS 銀河」の「グリーン個室プレミアルーム2人用」を狙いました。5人で挑み2人が予約できました。もちろん余計に予約したきっぷは即座にキャンセルします。同時にインターネットの事前予約で、2人利用として「ファーストシート」と「クシェット」も申し込んでおきましたが、「ファーストシート」は予約できず、一方「クシェット」は2席予約できたので、これもキャンセルしています。

平日運行で4室ある2人用でもこれですから、「WEST EXPRESS 銀河」で最も人気があり1室しかない「プレミアルーム1人用」を金曜日発で予約するとしたら、信じられないほどの幸運が必要だと感じました。

「みどりの窓口」減る中において

なおレアきっぷとはいえ、「10時打ち」に失敗したらもう買えないと諦めることはありません。(我々が行ったように)発売直後のキャンセルが出る可能性もありますし、キャンセル料がきっぷの額面の30%に跳ね上がる出発日前日の直前には、キャンセルが出やすくなります。私は「運行2日前のキャンセル」を狙ってインターネットで予約状況を確認し、「サンライズツイン」に振り替えたこともあります。

個人的に感じるのが、レアきっぷを狙うために必要なのは「根気」です。インターネットの空き状況を定期的に確認したり、取れなくても諦めずに別の日にチャレンジしたりということです。とはいえ「人事を尽くして天命を待」っても、運には敵いません。

「10時打ち」の待機列に並んでいた人に話を聞くと、臨時「サンライズ出雲」の「シングルデラックス」は、「20回10時打ちしたけど、予約できたのは1度だけ」との声も。また複数人で予約したとしても、取れない時は全く取れないようです。

近年は「みどりの窓口」が大幅に減少しています。JR西日本のようにインターネットでの「事前申し込みサービス」を拡大し、人気設備であっても誰もが平等な機会で「10時打ち」ができるようになるとよいですね。「希望設備のキャンセルが出た場合にメールで自動通告」「希望日以外でも、希望した列車の希望した設備が空いている日を閲覧可能」となれば、乗車率の向上や、駅窓口の対応負担減少が期待できるでしょう。

もしくは人気設備を「ツアー形式」として販売し、きっぶ転売などを行う悪質な人は、乗車時に個人認証を行い予約を無効にするなど、転売を困難にする方法はあるように思えます。こちらも、キャンセルが出た場合は希望者へメールなどで通告するといった販売ルールとすれば、乗車率の向上も見込めるのではないでしょうか。

そして、複数回予約できなかった人は、クルーズトレインななつ星 in 九州」ツアーのように、当選確率が高くなるような仕組みもありだと思います。

寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」。予約困難な設備もあり、きっぷの購入には苦労が伴う(画像:photolibrary)。