景気の予告信号灯となる「身近なデータ」として、今回は「外国人観光客インバウンド兼六園姫路城五稜郭タワー」を取り上げます。24年1月の訪日外客数は、19年1月比でほぼ同数となりました。観光地の観光客数・前年同月比はまちまちですが、コロナ禍前を上回るところも…。本稿にて詳しく見ていきましょう。※本連載は宅森昭吉氏(景気探検家・エコノミスト)の『note』を転載・再編集したものです。

24年1月の訪日外客数は、19年1月比でほぼ同数

~24年の訪日外客数は、3,188.2万人と過去最高だった19年の実績を上回りそう。24年1月は19年比▲0.0%

1月の訪日外客数は、2,688,100人となった。能登半島地震発生後、東アジアを中心に訪日旅行への影響が一部見られたものの、前年同月比では+79.5%の増加となり、また19年1月2,689,339人との比較では▲0.0%(▲0.046%)とほぼ同数を記録しました。なお、訪日外客数は23年10月に19年比+0.8%と、単月で新型コロナウイルス禍前の水準を初めて上回りました。その後、19年比は11月0.0%。12月は+8.2%と推移してきました。

日本政府観光局によると、東アジアでは台湾、東南アジアではフィリピン、欧米豪・中東地域においては米国などで訪日外客数が増加したことが、今月の押し上げ要因となったということです。23市場のうち10市場(韓国、台湾、シンガポールインドネシアフィリピン、豪州、米国、カナダメキシコ、中東地域)において1月として過去最高を記録したほか、韓国、台湾、豪州では単月過去最高を更新したといいます。

訪日外客数が3,188.2万人と過去最高だった19年の実績に24年1月の19年比▲0.046%をかけると3,186.7万人になります。

なお、JTBの調査「2024年(1月〜12月)の旅行動向見通し」によると、24年の年間訪日外客数は3,310万人と、19年比+3.8%の増加が予測されています。過去最高が期待されます。

「外国人orインバウンド」関連現状判断DIは低下したが50超え

~「外国人orインバウンド」関連現状判断DIは60割れになったものの、22年5月から続いている景気判断の分岐点50超は維持

24年1月の『景気ウォッチャー調査』で、「外国人orインバウンド」関連の現状判断DIは54.9と、23年12月の63.1から低下しました。地震や航空機事故を嫌気したインバウンド需要の減少が懸念されたことから現状判断DIは60割れになったものの、22年5月から続いている景気判断の分岐点50超は維持されました。

一方、先行き判断で「外国人orインバウンド」関連DIは、22年4月の46.9以来18ヵ月ぶりの50割れになった10月49.9から、上昇に転じ、11月58.1、12月60.4、1月61.4と改善しています。

なお、「外国人orインバウンド」関連のコメント数は、新型コロナウイルスが流行していて外国人の入国が規制されていた時期は極めて少ない状況で、「外国人orインバウンド」関連の現状判断コメント数は、21年9月・10月は1人だけでした。23年は新型コロナウイルス感染症の水際対策が緩和され、海外からの旅行者が戻ってきました。「外国人orインバウンド」関連の現状判断コメント数が回復しました。23年6月から11月の6ヵ月は70人台・80人台の高水準でした。12月は65人と5月以来7ヵ月ぶりに60人台に低下したものの、24年1月は81人に戻りました。

観光地の動向はまちまちだが、コロナ禍前を上回るところも

~24年2月の五稜郭タワーの入場者数19年2月比は+11.2%の増加

いくつか観光地の動向をみましょう。世界遺産外国人観光客も多く訪れる姫路城の入場者数は、21年11月から直近24年1月まで27ヵ月連続で前年同月比増加となっています。24年1月の入場者数は8.4万人、前年同月比+32.5%の増加になりました。但し、コロナ禍前の19年1月の9.9万人、20年1月の10.7万人にはまだ届いていません。

函館の五稜郭タワーの入場者数は23年年間では19年比▲3.3%とコロナ禍前を下回りましたが、2月、3月、4月、6月、7月、10月、11月の7ヵ月では19年の同じ月を上回りました。ほぼ、コロナ禍前の水準に戻ったと言えるでしょう。24年1月の入場者数は4.2万人、19年1月比は▲2.4%、20年1月比は▲0.1%と微減ですが、24年2月は5.2万人、うるう年ということもあって19年2月比は+11.2%の増加になりました。

観光地の観光客数の前年同月比はまちまちです。五稜郭タワーでは22年2月がまん延防止等重点措置期間で営業休止だったため、入場者数の前年同月比は23年3月から11月まで9ヵ月連続増加した後、12月の前年同月比が▲1.3%と減少になったあと、24年1月と2月は+20%台の増加と、概ね増加傾向です。名古屋城の入場者数は22年4月から23年12月まで前年同月比は21ヵ月連続増加です。佐賀の吉野ヶ里歴史公園の入場者数の前年同月比は23年1月から24年2月まで14ヵ月間では5月と11月を除き12ヵ月間が増加です。

能登半島地震の影響が大きい24年1月・2月の金沢兼六園の入園者数前年同月比減少。北陸新幹線の開業などに期待

能登半島地震の影響が大きい金沢兼六園の入園者数は24年に入って減少傾向です。23年は桜の開花時期が早かったため、23年3月の前年同月比は+320.2%の増加でしたが、23年4月は▲3.1%の減少になりました。23年5月から12月までは8ヵ月連続して前年同月比増加でした。24年1月は前年同月比▲38.7%、2月は同▲36.4%になりました。

北陸新幹線が、24年3月16日に、金沢~敦賀間で延伸・開業します。それにより、北陸3県内も新幹線で1つにつながることとなり、北陸と首都圏、また関西圏・中京圏との移動時間が短縮されます。多くの方が北陸地域を訪れやすい環境が整うことは、北陸の復興に寄与することでしょう。

2月の景気ウォッチャー調査から「北陸新幹線」関連・先行き判断DIを計算すると58.3(コメント数12)と景気判断の分岐点50を上回りました。また「応援割」関連・先行き判断DIを計算すると53.1(コメント数8)とこちらも景気判断の分岐点50超です。

※本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。

宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト

三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミストさくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。

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