テリー そもそもは、何で漫才協会の会長になったの?

 野球で言うとコーチから監督になったみたいな感じで。もう副会長を6、7年やってたんですよ。ずっと青空球児師匠が会長だったんですけど。球児師匠の体調が悪いというのが一番大きな理由ですね。

テリー 漫才協会の会長って、儲かるんですか?

 いや、全然です。お金のことを考えたら漫才協会をやめた方がいいです。

テリー あ、そうなんだ。

 はい。だって(東洋館のある)浅草まで車で行って、コインパーキングに止めて、舞台に上がったら、いつもマイナスですから。

テリー 駐車場代の方が高いんだ(笑)。

 YouTube(「ナイツ塙会長の自由時間」)だって、ほとんど持ち出しですし。だから、お金のことだけを考えたら漫才協会をやめて、もっと他のことに脳味噌使った方がいいでしょうね。

テリー じゃあ、もうほんとに名誉職というか。

 でも会長になって、ものすごく気をつけなきゃいけないなと思いました。会長になってYouTubeで最初にやったのが「コント山口君と竹田君」さんのコンビ名を変えてもらう企画だったんです。「漫才協会なのにコントが付いてるのはおかしいから『山口君と竹田君』に改名しなさい」って。山口さんとは事前に打ち合わせしてるドッキリだったんですけど。そしたら、後で母親から電話が来て、権力に取りつかれておかしくなったって言われて。

テリー あ、そう(笑)。

 僕、「そんなひどいことなのかな」って、わからなくなっちゃったんですよ。で、昨年末に後輩芸人にドッキリを仕掛けたら、それが炎上して。その時に「やっぱり世間の人からすると、会長とかいう役職が付くと見る目が変わるのかなぁ」と。それは今の時代、気をつけないとパワハラとかにつながるということがよくわかりました。

テリー 会長というだけで権力者みたいに思う人がいるんだね。

 そうですね。だから「あいつ1人で牛耳ってる」とか思われないように、発言に気をつけてますね。

テリー でも、塙さんが会長になったことで協会の知名度も上がって、所属芸人が増えてるんじゃ無いの?

 僕はまだ会長になった半年なので。20人ぐらいですかね。

テリー 映画の中で爆笑問題サンドウィッチマンも誘ってたよね。

 そうですね。でも、その辺りは難しくて。爆笑さんやサンドさんには入ってもらいたいんですけど、育成にも力を入れなきゃいけないから、ジャイアンツソフトバンクと同じになっちゃうなと思って。いい選手を取ることが組織のためになるかは別の話なので。

テリー まぁ2軍で頑張ってもFAで選手取ってこられたら「結局、俺ら出番ないじゃん」って選手は腐っちゃうね。

 僕がやらなきゃいけないのは、漫才協会の若手からスターを育てることなので。会長になったら逆にスカウトしづらくなりましたね。副会長の時は軽い気持ちでしたけど。

テリー なるほどなぁ。

 やっぱりテレビ局が漫才協会の企画をやろうとなった時に候補として挙がってくるのが、だいたいU字工事とかカミナリとか、テレビに出てるメンバーなんですよ。だけど、こっちが出したいのは、宮田陽・昇とかロケット団とか、寄席で活躍してる人たちなんです。でも、知らないって理由で全部却下されちゃう。だから、U字工事カミナリも僕がスカウトしましたから、バランスがすごく難しいなって、最近思います。

ゲスト:ナイツ 塙宣之ナイツ はなわ・のぶゆき)1978年千葉県生まれ。大学卒業後の2000年、落研の後輩・土屋伸之と「ナイツ」結成。2008年の「M-1グランプリ」(ABCテレビ)で3位に。以降、2010年まで3年連続で同番組の決勝に進出。2007年、史上最年少で「漫才協会」の理事に就任すると、副会長を経て、2023年、会長に就任した。現在は「ナイツ ザ・ラジオショー」(ニッポン放送、月~木)、「ナイツちゃきちゃき大放送」(TBSラジオ、毎土)、「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」(ニッポン放送)などにレギュラー出演中。また2018年より「M-1グランプリ」の審査員も務める。

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