アメリカ・ケンタッキー州の橋の上で発生した車の多重衝突事故で、大型のトレーラーが頑丈な欄干を突き破って宙づりになるという事態が発生した。
今にも下の川へとまっさかさまに落下しそうなトレーラー。そこからかろうじて動ける状態だった運転手の救助に向かったのは、駆けつけた消防士の中の一人だった。
一刻を争う状況の中、ワイヤーからぶら下がっての救助に成功。わかっていても手に汗にぎる救助の様子をメディアが一斉に報じている。
Video shows rescue of driver as semi dangles off bridge
現場はケンタッキー州ルイビル市の橋、クラーク・メモリアル・ブリッジ。この橋はアメリカの主要幹線道路、国道31号線を支える大きな橋だ。
その下を流れる川は、ミシシッピ川の支流オハイオ川で、ルイビル付近では幅約1.6km、深さ51mにもなるという。
問題のトレーラーは事故により、その橋の側面に危ういバランスで引っかかったままぶら下がっていた。
あまりに周囲が巨大なせいで、遠目では車体が一瞬小さく見えるが、橋の上に駆けつけた消防士や警官と比較すればかなりの大きさなことがわかるだろう。
・合わせて読みたい→これはもう、ホラーです。高速道路でトレーラーが暴走し大炎上するという恐ろしい事故が発生(メキシコ)
さっそく救助に向かった一人の消防士。はしご車のクレーンからのワイヤーで宙づりになり慎重に降下していった。
幸いにも運転手(女性)は意識もあり、かろうじて動けたようだ。
消防士は、首尾よく運転手にハーネスをつけてもらえたようだ。見てるだけでもハラハラするが、2人は救助チームによってゆっくり引き上げられ、無事に橋の上に到着した。
車3台の衝突事故の影響で突き出たトレーラー
今回の事故の詳細は不明だが、当局によると、このトレーラーは、この日の正午に発生した車3台がからむ衝突に巻き込まれる形で、橋の脇にぶつかり欄干を突破。結果このような状況になったとみられている。
なお消防によると、救い出された運転手は、救助直後でも会話ができるほどで、容態が安定した今は地元の病院に搬送されている。
また今回起きた多重衝突事故では、巻き込まれたもう一人の負傷者も直ちに現場から搬送されたが、その後の容態はまだ発表されていない。
高所専門の消防士。救助は訓練のたまもの
今回の多重事故では、ルイビル市の消防士総勢30人のほか、救急医療チーム、警察などが一斉に現場に到着。橋の両側が封鎖され、速やかに救助活動が行われた。
橋にトレーラーがぶら下がるという異例の状況は、トレーラーの運転手だけにとどまらない二次的な事故のリスクもあったが、幸運にもすべての命を守ることができた。
中でもワイヤーで降下したブライス・カーデンさん(29歳)は、高角度からの救助を専門とする消防士の一人で、訓練のたまもの、とインタビューに語った。
このような状況にそなえて100回以上も訓練してきました。私が着いた時、彼女(運転手)は必死に祈っていました。私はまず「深呼吸してください。あなたにしてほしいことはこれです」と言いました。ハーネスを正しくつけるには彼女の協力が必須だったんです。
装着が完了すると彼女をシートベルトから解放し、こちらの救助システムに移しました。それで私たちはうまくいくと確信できました。
彼女は非常に冷静に私が安全のためにすべきことを手伝ってくれました。すべてが最善に進んだので宿舎に戻ったら、今回の救助を再現してまた次に備えるつもりです。
ブライスさんは、シートベルトをつけたまま、ひたすら祈っている彼女にまず深呼吸をさせた後、ハーネスを身につける手伝いをしてほしいと頼んだ。そこから2人の脱出劇が始まったという。
ABCニュースより救助の様子
45分間で完了した救助。ブライスさんを含む全員がヒーロー
この素晴らしい救助の結果に、消防署長は「要救助者を落ち着かせるには彼が適任だった。今日はみんなヒーローだ」とコメント。
ルイビル市の市長も、勇敢なブライスさんをはじめ救助を支えた全員への賞賛と感謝をXに投稿した。
On behalf of the City of Louisville, I want to give a huge thanks to firefighter Bryce Carden and the other first responders who rushed to the scene today and bravely rescued the truck driver on the Clark Memorial Bridge. She is alive thanks to your heroic efforts. pic.twitter.com/32df5oqe6k
— Mayor Craig Greenberg (@LouisvilleMayor) March 1, 2024
また一躍メディアの脚光を浴びたブライスさんも「まったく緊張せずに救助ができたのは、信頼できる仲間がいたおかげ」とも語っている。
なおルイビル市警察署によると、今回の救助完了までの時間は長めにみてもわずか45分。事故の通報を受けて動き出してから1時間ももかからずに運転手の女性を橋の上に救い出せたという。
一人では成し得ない大がかりな救助はお互いの信頼あってこそ。消防署長の投稿どおり、負傷者の処置にあたった医療関係者も含め、全員が一丸となり活躍した日だったようだね。
References:facebook / youtube / abc.net / boingboingなど /written by D/ edited by parumo
コメント