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 チャーリーとチョコレート工場でお馴染みウィリーウォンカが、工場を持つ事になるまでの活躍を描いた映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は、世界中で大ヒットした。

 そのチョコレート工場が実体験できるというイベントが、イギリススコットランドのグラスゴーで開催された。

 ところが、初日に訪れた家族連れは失望感を隠せず、詐欺行為として警察に通報する事態となった。いったい何が起こったのか?

【画像】 ウォンカのチョコレート工場にインスパイアされた実体験イベント

Inside £35 'immersive' Wonka experience parents are calling a 'shambles'

 2月24日スコットランドのグラスゴーでイベント会社「ハウス・オブ・イルミナティ」主催による"チョコレート・エクスペリエンス "が開催された。

 これはウォンカとチョコレート工場の作品にインスパイアされた、2日間にわたる実体験イベントというふれこみで、チケットは1枚35ポンド(約6600円)で発売されていた。

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 子供のためのイベント入場費用にしてはまぁまぁ高い金額だ。しかし、子供たちに夢を与えることはディズニーであれ何であれ決してお安くはないのだ。

 そう思った親たちは、早速チケットを購入し、当日に会場へ出向いた。

 ハウス・オブ・イルミナティのウェブサイトの宣伝では、会場は特別な小道具や特大のロリポップ、甘いお菓子の楽園を約束されていた。

 また、このイベントが「ウィリーのチョコレート体験」と名付けられているように、今までにないチョコレート・ファンタジーを満喫し、魅惑の瞬間をとらえる機会が得られると参加者は信じていた。

 ところが、実際に会場に足を踏み入れた家族連れは、広告で宣伝していたものとまったく異なる光景を目にした。

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image credit:X@CultureCrave

お粗末な装飾があるだけの倉庫

 ウィリーウォンカにインスパイアされた体験とあったのに、広い倉庫の中は間に合わせの手抜き装飾感が抜けきらず、明らかに35ポンド払う価値がないように見えた。

 立体的な装飾はあるのだが、ぽつりぽつりと設置されてあるだけで、あとは画像生成AIを使用した宣伝が多く、子供たちも親も戸惑いを隠せないようだった。

 子供2人を連れて行くために家族5人分の料金を払ってチケットを購入した母親アラナ・ロッケンズさんは、このように感じた。

なんなのこれは。ものすごくお粗末だわ。説明されていたものとはまったく違うじゃないの。

 しかし、今更引き返すことはできない。アラナさんは子供たちのために失望を悟られないように、楽しく笑顔でいようと努めたという。

詐欺行為で警察に通報する親も

 金儲けのために手っ取り早く装飾を施したように見えたイベント会場は、多くの親たちの怒りを買い、主催側に返金を求める苦情が相次いだ。

 また、「詐欺行為だ」とイベント主催会社を警察に通報する親もいて、会場には警察が駆け付ける事態になった。

 そのころには、複数の親によって倉庫の映像がSNSでシェアされていた。

 その結果、イベントは24日の午後までに切り上げられ、早々に中止となった。

 参加した子供たちには、イベント主催者側から小さなグミ1個とスーパーのレモネード1/4カップが提供されただけだった。

雇われた俳優たちも「ここは夢が死ぬ場所」と呆れ

 このイベントのために雇われた2人の女優は、その週末にテーマに沿った衣装で出演するために500ポンド(約95000円)を支払う約束をされたという。

 しかし渡された肝心の台本はちんぷんかんぷんな表現で、AIが作成したように見えたという。そして、彼女たちが前日の夜にリハーサルに現れたとき、さらなる警鐘が鳴り響いた。

 会場は、何の準備も工夫もなされていないように見えたのだ。

まさかこの状態で明日開催するんじゃないだろう。これから準備をするに違いない。

 そう思ったが、期待していた当日も全く変わりなく2人は呆れ果てた。

ここは夢が死ぬ場所だと思いました。

楽しい時間を過ごしたいと思って参加した子供たちがかわいそうだと思いました。

 また別の俳優マイケルアーチボルドさんも、イベント当日のお粗末な装飾に恥ずかしさを感じたそうだ。

 もう1人の俳優ポール・コネルさんは、台本のいくつかのシーンはまったく意味を成しておらず、特殊効果なしでは再現不可能だと語った。

 俳優たちによると、イベント主催者はすぐに台本を破棄し即興で各キャラクターを演じるように言ったという。

 イベントとしてはあまりにもひどい状態に、俳優たちはある時点で「自分たちが仕事の報酬を受け取る可能性は低いのではないか」と疑い始めた。

 しかし、子供たちを見ているとできる限り楽しませてあげたいという思いがあったため、4人はただ働きを覚悟で子供たちを楽しませることに集中したそうだ。

 コネルさんによると、イベントが開催して1時間もたたないうちに親から苦情が出始め、倉庫内では主催者を怒鳴る声も聞こえたという。

イベント会社は参加者に返金を約束する声明を発表

 英国政府機関Companies Houseによると、このイベント主催会社の「ハウス・オブ・イルミナティ」はロンドンを拠点とするイベント会社のようだが、わずか3か月前に法人化されたばかりだという。

 同社は自らを 「ファンタジーと現実が融合し、比類ない没入体験を生み出す領域」と表現しているが、実際の企画はお話にもならないほどひどかったようだ。

 イベントの突然の中止から数時間後、同社はFacebook(現在は削除)のページで参加者が払ったチケット代金を全額返却することを約束する声明を掲載した。

今日は多くの人にとって非常にストレスの多い一日となりました。

残念なことに、直前になって私たちはイベントの多くの部分で失望させられ、最善を尽くして続行し、押し通そうとしました。

このような事態になったことを深くお詫び申し上げます。

 同社がプロモーション画像やキャラクター画像の生成にAIを使用したかどうかは完全には明らかになっておらず、この話題については言及していない。

反感を買って雲隠れしたイベント会社の責任者

 ハウス・オブ・イルミナティのディレクターであるビリー・クールは、このイベントで反感を買って以来ネット上での存在感をほとんど消してしまった。

 不満を抱いた参加者たちは、「イルミナティ詐欺の家」というFacebookグループを作り、イベントでの体験を共有し、返金を確保するための努力を組織している最中だ。

 一方、ハウス・オブ・イルミナティにスペースを貸したイベント会場所有者は、「イベントがあのような形で中止になったのは実に残念だ」と話している。

 ちなみにロッケンズさんは、返金を確認するメールは受け取ったがまだ口座に返金されていない。ハウス・オブ・イルミナティの投稿によれば、最大10営業日かかるとのことだ。

 ロッケンズさん一家とって、家族のために5枚のチケットを購入したことはかなりの痛手だ。

イギリスの生活費危機のさなかでは、ほとんどの家庭があんなひどいもののためにお金を出す余裕はないでしょう。

絶対にチケット35ポンドの価値はありませんでした。

 しかし、ウィリーウォンカの大ファンである子供たちが少しでも楽しめたのなら、行ってよかったと思うことにしたいと話している。

References:“Disastrous” Willy Wonka Experience Charged Kids $45, Labeled a Complete Scam by Parents/ written by Scarlet / edited by parumo

 
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