ついに日本で導入が始まった新型Eクラス
セダンとステーションワゴン、それぞれの車型と、3種類のパワートレインに試乗がかなった。
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メルセデス・ベンツEクラスといえば、価格帯は青天井のハイエンドカーの中では基本のキながら、1台ですべてをこなす実用的ドライバーズカーとしてアガリともいえる車。
上にはSクラスやマイバッハのようなショーファードリブンが控えるが、Cクラスやハッチバックのようなベーシックがもち合わせない余裕はデフォルト、そういう立ち位置だ。新型はW114から数えてW124のような名車を挟み、新型はじつに6代目、W214型となる。
セダンの全長4960×全幅1880×全高1470mmは、先代W213より+20/+30/+15mmとマイルドに拡大し、その恩恵はおもに後席レッグスペースのような室内スペース拡大にあてられたという。
単独ブランドとしてのEQはなくなるとはいえ、EVに見劣りしない広々感、そして星を散りばめたグリルといったEQ風ディティールは受け継いだ。またステーションワゴンはリアエンドのスラントを強めた、よりスポーティなシルエットといえる。空力もセダンがCd値0.25/ステーションワゴンが同0.28とまずまずだ。
ヘッドライトは100万画素超えのマトリクスLEDで、E 350 eは車線から逸脱しそうな時に、路面のラインを自動的により照らす機能も初採用。テールランプも一新された。
インテリアで際立つのは、ダッシュボードのラインと一体化したエアコン吹き出し口と、全車オプション設定となり助手席にまで周り込むほど拡大されたMBUXスーパースクリーンだ。またダッシュボード上には車内用カメラがあり、これはZoom会議やセルフィ―に使えこそすれ、決してドライバーを監視しているわけではないという。
まずはE 200のセダン、続いてE 220 d ステーションワゴンの試乗を開始した。いずれもアヴァンギャルドだ。
コンサバ一辺倒のドライバーズカーではない
結論から述べておこう。新しいEクラスのライバルはもはや同じクラスや価格帯の車というより、令和のドライバーズカーとして大真面目にスマートフォンにケンカを売っている。
ようは、貴方のパートナーは電話機ではなくEクラスですよ、と。そういう強い主張を、あらゆる方向から囁いてくる。
というのも、センターディスプレイから(オプションの)助手席ディスプレイにまで展開する新世代MBUXが、充実どころか完結している。サードパーティーのアプリを直接ダウンロードできるため、Zoom等を入れれば車内でオンライン会議も可能だし、車両の5G通信でストリーミングの音楽も聞ける。
助手席側は別アカウントでログインでき、メールやメッセージ系などスマホ側のアカウントやテザリングが前提の機能もあるが、何なればアンドロイドやカープレイにエミュレートしなくても、個人のビジネスエクスプレスとして書斎として、用が足りてしまうほど分厚く完成度の高いインフォテインメントなのだ。
些細なことだがラジオの画面で、FM各局のロゴが3Dのカルーセルスライダーになっているのにも驚いた。他の輸入車ブランドのローカライズでは無論、国産車もサボりがちな表示ひとつのデザインにも、スキがないのだ。
ちなみに車載オーディオ、ブルメスター4Dサラウンドシステムは、音楽に合わせて照明の色やトーン、さらにシートに振動さえ伝えてくる。スマホにはできない何かだ。
なぜメルセデスがインフォテインメントに注力するかといえば、欧州ならびにドイツ人のGAFA嫌いは知られた話で、今や顧客のプライバシーを守ることは優先事項のひとつ。それは今日のセキュリティ感覚で、メルセデスが連綿と続けてきた安全神話の延長でもある。
メルセデスがエンタメ化したのではなく、質実剛健がデジタル・エンターテインメントをとり込みつつあるのだ。それこそEクラスというドライバーズカーの指標がリードすべき方向性であり、メルセデスらしい進化といえる。
今世代で本命感が強いのはPHEV
すべて電動化され…というとドキリとするだろうが、E 200のセダンとE 220 d ステーションワゴン、あくまでICEの2モデルはISG搭載。つまりMHEVの2Lダウンサイジングターボだ。
車内に滑り込むと、ダイヤモンドステッチにパーフォレーションがシックかつスポーティな、レザーシートが迎えてくれる。内装はさすがのメルセデス・クオリティで、運転席からは運転中に見えなくなる助手席側スクリーンの機能もいい。質感もともかく素材の量感、そして広大なタッチパネルのハイテク感に支えられた豪華内装といえる。
走り出すと、動的質感は先代以上に洗練されたものの、驚くほどでもない。低速からステアリングの手応えは滑らかに軽く、無闇にずっしりした手応えで質感フィールを高めるより、むしろ速度域に合った応力と量感が、ガソリンとディーゼルとも自然なフィールで際立っている。
街中で軽快にとり回せるガソリンと、重量はやや増すがしっとり志向のディーゼル。そんなキャラの違いも健在だ。とはいえガソリンがディーゼルのようにフラットな仕事ぶりで、逆にディーゼルの軽快な回り方とパンチ力が、両者を明確に分けない雰囲気すらある。街乗りなら前者、荷物を積んでの長距離行が主なら後者という、乗り方や用途にしか、差異が見いだせないような気がしてくる。
そんな多少のモヤモヤを抱えながら3台目はセダン、PHEVことE 350 eスポーツエディションスターに乗って、薄皮が剥がれるように合点がいった。前の世代では未だディーゼルモデルに焦点が合っていた、あの本命っぷりがPHEVにまさしく感じられたのだ。具体的にどういうことか。
112kmのEV航続距離とV6のような咆哮を両立
低速域では少しゴツゴツするが、概してしなやかな脚で、速度域が上がるにつれ芯が出るようなスタビリティは、メルセデスのいつもの十八番だ。
E 350 eは唯一エアサス装着車ということもあり、車重2210kgとICEより250~370kgも重い分、よく動く足まわりが与えられている。バッテリー容量は25.4kWhもあって、コミューターEV並といえるが、電気ならではのダイレクトなレスポンスと低重心、そしてこれまたメルセデス得意の、重さを利したしっとりした乗り心地が、絶妙のバランスを醸し出す。
加えてPHEVの美点は、スムーズさに加えパワー感にある。アクセルを踏み込むと期待以上のことが起きる。まるで直4らしからぬ、V型ユニットのようにツブの揃った野太いエキゾーストノートで、エンジンが主張してくるのだ。
増幅回路ナシの音だそうだが、決して匿名性の高いエンジンではない。それでいてEVモードでの最大航続距離は112kmもあるパワートレインなのだ。
回生の具合はドライブモードによって変わるが、効率はまずまずのようで、試乗した小1時間の最後の方はスポーツモードで走行中充電したとはいえ、残量67kmでスタートしたはずなのに、むしろ70km超を指していたことにも驚いた。しかもE 350 eはChaDeMoも備え60Kwまでの中速充電もこなせるし、メルセデスは欧州の電動車として例外的にV2Hにもずっと対応している。
ひとつ難をあげつらうなら、3台ともデジタルインテリアパッケージ/アドバンストパッケージ/レザーエクスクルーシブパッケージ/AMGラインパッケージなどなど、235~260万円強のオプションが別建てとなること。
ガソリンのセダンが894万円/ディーゼルのステーションワゴンが995万円/PHEVのE 350 eが988万円ながら、実質的にいずれも1200万円強の車ということだ。為替事情もあるがアコースティックガラスまでオプションというのは世知辛いところではある。
それでも、とくにPHEVの完成度を目のあたりにすると、EQブランドの看板を下げたことでメルセデスの電動化戦略は減速するどころか、巧みに従来シリーズにそのノウハウが活かされたこと、トレンドセッターとしてEクラスの盤石の安定ぶりを、確信できるはずだ。
試乗車のスペック
メルセデス・ベンツ E 200アバンギャルド(ISG搭載モデル)
価格:894万円(税込 オプションなし)
全長×全幅×全高:4960×1880×1470mm
燃料消費率:14.3km/L(WLTC)
車両重量:1840kg
パワートレイン:直列4気筒1997cc+ターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:204ps/5800rpm
最大トルク:32.63kg-m/1600~4000rpm
ギアボックス:9速オートマティック
メルセデス・ベンツ E 220 d ステーションワゴン・アバンギャルド(ISG搭載モデル)
価格:955万円(税込 オプションなし)
全長×全幅×全高:4960×1880×1470mm
燃料消費率:18.2km/L(WLTC)
車両重量:1940kg
パワートレイン:直列4気筒1992cc+ターボ
使用燃料:軽油
最高出力:197ps/3600rpm
最大トルク:44.87kg-m/1800~2800rpm
ギアボックス:9速オートマティック
メルセデス・ベンツ E 350 e スポーツ・エディション・スター
価格:988万円(税込 オプションなし)
全長×全幅×全高:4960×1880×1485mm
燃料消費率:12.7km/L(WLTC)
車両重量:2210kg
パワートレイン:直列4気筒1997cc+ターボ
使用燃料:ガソリン
エンジン最高出力:150kW/6100rpm
エンジン最大トルク:32.63kg-m/2000~4000rpm
モーター最高出力:95kW/2100~6800rpm
モーター最大トルク:44.87kg-m/0~2100rpm
ギアボックス:9速オートマティック
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