丸紅は2月15日から21日にかけて、社員食堂「〇Café」で「サステナブルフードDAYS」を開催した。

今回はDAIZ社の大豆ミート「ミラクルミート」を使った担々麺と、魚粉の一部を昆虫たん白飼料に置き換えて養殖したブリ「鰤(ブリ)リアント」の海鮮丼などを提供した。

さらに本社3階の「レストランヴァルテラッツァ」では3月15日まで、一般向けにも「ミラクルミート」や「鰤リアント」を用いたコラボメニューを提供中だ。

「レストランヴァルテラッツァ」ランチセットのブリのカルパッチョ
「レストランヴァルテラッツァ」ランチセットのブリのカルパッチョ

ランチセットのブリのカルパッチョは、「昆虫たん白で育てたブリ」とメニューで紹介しているが、食料第一本部/食料第二本部戦略企画室企画課兼サステナビリティ推進部の藤本希担当課長によると、「通常メニューよりも多く出ている」と関心も高いようだ。

丸紅・食料第一本部/食料第二本部戦略企画室企画課兼サステナビリティ推進部の藤本希担当課長
丸紅・食料第一本部/食料第二本部戦略企画室企画課兼サステナビリティ推進部の藤本希担当課長

今回、食品原料部フードサイエンスチームが協業するDAIZ社の「ミラクルミート」を使った社食メニューは、担々麺を用意した。開発担当者によると、「中華を食べてみたいという声もあったことから、今回は担々麺を選んだ」としている。「肉の代わりに大豆ミートを代替することでカロリーを抑えられる。前回カツカレーを提供した時も、『カロリー控えめでうれしい』という声があった」と説明する。

担々麺の開発では、「水戻し率をかなり検証した」と振り返る。ミンチタイプの「ミラクルミート」は通常3~4倍で水戻しするが、そこからさらに担々麺の汁も吸ってしまう。そこで2倍程度に留めることで、汁を吸った状態でもおいしく食べられるように工夫したという。今後の「サステナブルDAYS」では、ボロネーゼや麻婆豆腐のメニュー化を検討している。

〈魚粉の一部をミールワームに置き換えブリを養殖、長期の実証実験もスタート〉

丸紅は2023年3月、持続可能な水産養殖業とサプライチェーン構築を目指し、昆虫たん白製造・販売で世界最大のフランス企業SASYnsect(インセクト社)と協業を開始した。11月から3カ月間、養殖ブリに与える魚粉の一部を昆虫飼料に置き換える短期の給餌試験を終えた。「鰤リアント」と名付け、食味に問題ないことを検証した上で、今回マーケティングの一環として、社員食堂とレストランでメニューを提供した。

「鰤リアント」は、出荷前の3カ月間、魚粉飼料の一部をミールワームに置き換えて養殖したブリだ。昆虫たん白には、アメリカミズアブ(BSF)やコオロギなどもあるが、栄養組成を比較し、ミールワームを選んだという。たん白質は約70%と、BSFや大豆の50%台よりも高い。

今後は昆虫飼料を与えた魚が消費者に受容されるかが課題となるが、消費者調査では肯定的な結果が出ているという。1月からは1年間の長期実証実験もスタートしている。

魚粉は養殖飼料の約40%を占めている。主原料のイワシは天然資源で、漁獲量の低下や新興国の需要増もあり、世界的に価格が上昇している。魚粉代替候補のうち、大豆かすなどの植物性たん白ではブリやマダイといった肉食魚の成長性が悪く、動物性たん白は畜産飼料と競合する。

一方、昆虫は安定供給が可能で環境負荷も低く、魚粉代替原料に最適とする。現在、ミールワームの価格は水産飼料と同程度というが、魚粉価格が高騰していることから、将来的に価格面でも優位性が出てくる可能性がある。

ブリは国内養殖量が最多で、肉食魚のため食いつきもいい。昆虫飼料を与えることで肉厚になり、魚粉を減らせるので魚臭さも減るという研究報告もあるようだ。今後は成分・物性分析を行い、具体的に検証していく。すでに百貨店や大手小売りから、引き合いも来ているという。

消費者調査では、試食前だと「食べてもいい」という回答が3割、「どちらでもいい」が4割、「食べたくない」が3割だったが、試食後は約8割が「食べてもいい」と回答したという。

〈大豆油糧日報2024年3月6日付〉

DAIZ社の大豆ミート「ミラクルミート」を使った担々麺