ロシア最高裁判所は昨年11月、LGBT(性的マイノリティ)の権利を訴える国際的な市民運動を「過激派」と見なし、活動を禁ずる判断を下した。それに先立つ2022年12月、LGBTに関する情報の拡散、宣伝、デモなどを禁ずる「同性愛宣伝禁止法」が成立した。

LGBTの人権活動や国際団体との協力はもちろん、バーの利用、営業なども禁じられた。そればかりか、今年2月には、ロシア中部のニジニー・ノヴゴロドで、虹色のイヤリングを付けていただけの女性が逮捕される事件も起きている。

そんな流れに抗う人もいる。

アレクサンドル・ヒンシテイン下院議員は先月27日、Gazeta.ru紙とのインタビューで、次のように述べた。

「外見に関する限り、北朝鮮のように男性のヘアスタイルを公認するようなことはない。大の大人が唇に色を塗り、爪を伸ばしたいと思えば、誰もそれを禁じることはできない」

極端な抑圧的国家、パターナリズムの例として挙げられがちな北朝鮮だが、韓国風のヘアスタイルを取り締まったりしている。しかし、そんな北朝鮮には、特定の性的指向を抑圧する法律は存在しないのだ。

性的マイノリティへの人権侵害を全く行っていないはずなのに、抑圧の象徴にされるとは理不尽だ。そう思う向きもいるかもしれないが、それは正確でない。

法による支配が徹底せず、権力者の「お気持ち」次第で、国民のクビが飛ぶのが北朝鮮だ。性的マイノリティは、資本主義文化に染まった不純分子、異色分子として、社会から抹殺されている。

韓国の北朝鮮向けのラジオ局・自由北韓放送は2011年9月、咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)で起きた事件について報じた。

同放送によれば、元在日朝鮮人の帰国者と思われる女性が数人、逮捕された。その容疑は、自宅で集まって「ある行為」を行っていたというものだった。つまり、レズビアンだったということだ。裁判にかけられた彼女らは、「日本で知った腐った病気の資本主義思想に染まり、風紀紊乱行為を行った」として、公開処刑されてしまったという。

一方、咸鏡北道出身の脱北者、キム・ドンナムさんは、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)とのインタビューでこのように答えている。

「誰かが男性が好きだと言えば、精神がおかしくなった人扱いされます。北朝鮮ではそのような人は49号対象者と言われます」

この49号とは、精神病院の閉鎖病棟を指す。大抵は山奥にあり、生きて退院できる人は1割に過ぎないと言われている。

非社会主義、反社会主義行為を行った人に対する公開闘争会議の様子(画像:デイリーNK)