メッキってそもそも何? ぴかぴかに輝く「クルマのパーツ」の剥がれやキズの補修方法とは

この記事をまとめると

■金属のコーティング全般を「メッキ」と呼ぶ

■自動車の「メッキ」パーツの剥がれや傷ついた際の修復方法を紹介

■完璧な補修はパーツ自体の交換以外ないが、方法次第では補修をすることも可能だ

綺麗なメッキが剥がれた! 補修はどうすればいい?

 見栄を張って実力以上の働きができているかのように振る舞っていたのに、結局「素の実力」が明るみに出てしまったことを「メッキがはがれた」と表現することがありますが、いまでは使う人も少なくなっているようですね。

 実際の「メッキ」すら、知らないという人が出てきている気配すらありますが、それだけ日常の生活でメッキを意識することは少なくなっています。

 しかし、自動車の世界ではまだまだメッキが重要な装飾のイチ手法として認知されているので、「あー、内装のメッキ部分がはがれてるよー」なんていう声を聞くことがあるのではないでしょうか。

綺麗なクルマの必須パーツ「メッキ」の補修の仕方とは

 ここでは、そのメッキの剥がれや傷ついた際の補修の方法について話してみたいと思います。

■そもそも「メッキ」って何?

「メッキ(plating)」というのは、金属で表面を覆う表面処理のことです。昔は「滅金(めっきん)」と言ったそうで、仏像や神社仏閣の表面を金の塗膜で覆うことをそう呼んだようです。それが語源となって、金属のコーティング全般を「メッキ」と呼ぶようになりました。

 もっとも一般的な「メッキ」とは「クロムメッキ」のことを指します。銀色にキラキラ輝くアレのことです。昔の車ではバンパーグリルなどに使われていました。輝きの強さに加えて被膜が強く傷つきにくい特性があるので、バンパーやドアノブなどの接触が多い部分の保護の目的と、サビを防ぐコーティングの目的で多く活用されていました。

綺麗なクルマの必須パーツ「メッキ」の補修の仕方とは

 しかし、いまではクルマの素材の進化やデザインの変化によって重くて野暮ったい金属部品は樹脂部品に取って代わられ、それにともなってクロムメッキの採用もどんどん減っています。一見クロムメッキに見える部分も、ステンレスの薄板がかぶせてあったり、樹脂に「蒸着メッキ」という方法で金属被膜をのせたものが主流になっています。

■「メッキ」の補修ってできるの?

 ひとくちに「メッキ」と言っても、上記のようにいくつかの種類に分かれているので、補修の方法もそれに応じたものになります。基本的にどの種類でもメッキ部分の完全な補修は困難ですが、目立たなくする方法もあるので、あわせて紹介してみましょう。

金属パーツのクロムメッキの補修

 金属部品にかけられる「クロムメッキ」は「電解メッキ」という方法でおこなわれるメッキです。正式には「ニッケル クロムメッキ」と言い、ニッケルのベース層と、クロムの表層で構成されています。

綺麗なクルマの必須パーツ「メッキ」の補修の仕方とは

 施工には、ニッケルまたはクロムの元となるメッキ液に被メッキ部品を入れて電極をつなぎ、イオンの析出反応で表面に被膜を作ります。

 そうやって均一な金属の被膜が作られるので、あのようななめらかな質感ができあがるのですが、それゆえに補修は困難です。塗装のように削って塗り直す、という方法が通用しません。

 クロムメッキの補修としては再メッキという方法が筆頭に挙がりますが、それは下地作りからやり直して全体を改めてメッキする方法なので、補修という範疇を超えてしまいます。費用も数万円〜と高額になり、ウインドウモールなどの細長いパーツは、浸けるための大きな槽が必要になるため、体積の割に割高になるというデメリットもあります。

綺麗なクルマの必須パーツ「メッキ」の補修の仕方とは

簡単に補修できる場合も!

メッキに見えてじつはステンレスの薄板だった場合の補修

 昨今のクルマのウインドウのモールなどでは、メッキパーツに見えて、実際はステンレスをポリッシュ(研磨)したパーツが使われているケースも多く見られます。

綺麗なクルマの必須パーツ「メッキ」の補修の仕方とは

 この場合は、薄板とは言っても表面から下地までが一体式の同じ素材となっているので、もし傷が入ってしまったりした場合は、研磨のし直しという補修が一般的です。

 滅多なことでは傷が入ったりする箇所ではありませんが、万が一そうなってしまった場合は、ペーパー(紙ヤスリ)などで傷を削って落としたうえで、より細かいペーパーやコンパウンドで表面を磨いて傷を目立たなくするのが最善でしょう。

綺麗なクルマの必須パーツ「メッキ」の補修の仕方とは

樹脂の蒸着メッキの補修

 グリルの格子や、内装パーツの装飾などでいま多く使われているのが「(真空)蒸着メッキ」と言われる手法です。

綺麗なクルマの必須パーツ「メッキ」の補修の仕方とは

 金属パーツにおこなう「クロムメッキ」は電解質の液体に部品を浸しておこないますが、「(真空)蒸着メッキ」の場合は、真空にしたチェンバー(容器の中)のなかに納めた部品に、電気で蒸発させて気化した金属を定着させる方法です。

 この手法の利点は素材を選ばないことです。「クロムメッキ」のような電解メッキは電気を通す金属にしか施工できませんでしたが、この「(真空)蒸着メッキ」はとんどの素材にメッキが可能です。

 欠点は、被膜の強度がクロムメッキに劣るという点でしょうか。とくに樹脂などの柔らかい素材に施す場合は、素地の変形に追従しきれずに剥離してしまうこともあります。

 この方法も「クロムメッキ」と同様に、均一の皮膜が全体に広がっているため、一部の欠損の補修は困難で、こちらも、再度下地を作り直して「再メッキ」という手法が最善です。

■それでも補修したい場合は?

 結局のところ、メッキというのは特殊な方法を使って金属のコーティングをおこなうことなので、補修というのは難しいと言わざるをえません。

 しかし、いまの世の中、いろんな技術革新がおこなわれているので、完全なリフレッシュは無理でも、目立たないようにレタッチするのはそれなりに可能なようです。

綺麗なクルマの必須パーツ「メッキ」の補修の仕方とは

 たとえば、いまは通販のキットで、狭い範囲に限り電解メッキと同じ行程を施すことができるものも出てきています。

 この方法なら、いちおう金属の素材で表面を覆い直すので目立たなくすることは可能ですが、近づいてで見ると、「あ、ここ補修したね」と指摘を受けてしまうのは避けられないと思います。

綺麗なクルマの必須パーツ「メッキ」の補修の仕方とは

 もうひとつのレタッチ方法としては、メッキ調の輝きを出せる塗料で覆い隠すという手法です。高価なものでは、「銀鏡反応」を使ったコーティング方法(ガラスの鏡など)でおこなう塗装技術もありますが、もっと身近な例としては、筆塗りやエアブラシでおこなう塗装用の塗料で、メッキに近い輝きで仕上げられるものもあるので、それを使うという方法もあります。

 具体的には、「クレオス」の「ガンダムマーカー」という商品があります。これはペン型の商品で、エナメルよりも輝きが強く仕上がるというものです。

 これまでの塗装によるメタリック仕上げとは一線を画す仕上がりで、シルバー塗装のようなつぶつぶ感を排除したなめらかな輝きに仕上げることができます。探せば類似の商品が、ペンタイプに留まらず、スプレータイプなどいろいろ出ているのでチェックしてみてください。

 とはいえ、本家の「クロムメッキ」や「蒸着メッキ」のキラキラした輝きには及ばず、面積が広いほど「あ、ココ補修したね」とバレてしまうくらいの差があります。

綺麗なクルマの必須パーツ「メッキ」の補修の仕方とは

 そうは言いましたが、差は確実にあるものの、補修していない状態と比べたら雲泥の差なのは確かなので、「明らかにはがれていますね?」という状態から、「よく見ないと、遠目からは分からないね」という程度までは復活できます。塗料としてみれば少々割だかな値段設定ですが、応急処置としてはけっこう使えるアイテムだと思います。

 万が一失敗してしまっても、溶剤で拭き取って再度塗装し直せるので、ダメ元でやってみる価値はあるのではないかと思います。

綺麗なクルマの必須パーツ「メッキ」の補修の仕方とは

メッキってそもそも何? ぴかぴかに輝く「クルマのパーツ」の剥がれやキズの補修方法とは