陸上自衛隊の駐屯地も近くにあります。

2023年秋に操業を停止

広島県並びに呉市は2024年3月4日、昨年秋に操業を停止した日本製鉄瀬戸内製鉄所呉地区の跡地利用について、防衛省から「多機能な複合防衛拠点」として用いたいと打診があったことを明らかにしました。

すでに広島県では、同跡地の利活用を検討するための業務委託に係る公募を3月1日より開始しています。

県では跡地の基礎情報や詳細調査を行い、その特徴を明らかにするとともに、今後成長が見込まれる産業やニーズの調査を行い、日本製鉄に提案・協議するための具体的な跡地利活用策の案を得るとしていることから、今回の防衛省の打診はそれに沿ったもののようです。

他方で、広島県は、日本製鉄と呉市、その3者協議の場を新たに設置し、広大な土地、工業用水、埠頭設備などのインフラ状況や交通網などの周辺環境を踏まえ、立地に適した将来性のある利活用策についての調査を進めていくとしています。

こうした動きを念頭に、防衛省からは、日鉄、防衛省広島県、呉市の4者による協議を行いたいとの申し入れがあったとのこと。これに対し呉市は、「防衛省から丁寧に話を伺ってまいりたいと考えていますが、県や市にとって、必要な情報は共有していただくよう要請するとともに、呉市からは、防衛省や日鉄に必要な意見を伝えてまいりたいと考えています」とコメントしています。

呉市には海上自衛隊の呉基地があり、さまざまな自衛艦の母港となっているほか、新隊員の教育などもここで行われています。特に潜水艦神奈川県横須賀と呉の2か所にしか配備されておらず、またエアクッション揚陸艇の運用が可能な大型輸送艦は、呉に集中配備されています。

また、このエアクッション揚陸艇の整備拠点は対岸の江田島に設けられているほか、海上自衛隊特殊部隊である特別警備隊SBU)も同じく江田島に配置されています。

近傍の海田町には陸上自衛隊の駐屯地があり、そこには第13旅団司令部と隷下の主要部隊が駐屯しているため、そういったことも加味して今回、防衛省は跡地利用について打診したのかもしれません。

海上自衛隊呉基地の様子(柘植優介撮影)。