株式会社帝国データバンクは、全国2万7,443社社を対象とした2024年2月の国内景気動向を調査・集計し、景気DIとして発表いたしました。

<調査結果(要旨)>

  1. 2024年2月の景気DIは前月比0.3ポイント減の43.9となり、2カ月連続で悪化した。国内景気は、株式相場など金融市場が好材料となったものの、消費者の節約志向の高まりや自動車の生産・出荷停止などが悪材料となり、小幅ながら悪化傾向が続いた。今後の景気は、悪材料が集中し下振れるが、夏以降から賃上げなど個人消費を中心に緩やかに持ち直すとみられる

  2. 物価高騰にともなう消費者の節約志向の高まりや、製造業の停滞などの要因から10業界中6業界で悪化した。地域別では、10地域中7地域が悪化、3地域が改善した。能登半島地震による影響が北陸地方を中心に引き続き表れたほか、天候不順や自動車の生産停止なども下押し要因となった。規模別では、「大企業」「中小企業」「小規模企業」が2カ月連続でそろって小幅に悪化した

  3. 個人消費DIは43.1と2カ月連続で落ち込み、企業からも消費者の低調な消費行動を危惧する声が多数あがっている

調査期間:2024年2月15日2月29日(インターネット調査)
調査対象:2万7,443社、有効回答企業1万1,267社、回答率41.1%
調査機関:株式会社帝国データバンク

< 2024年2月の動向 :小幅悪化 >


2024年2月の景気DIは前月比0.3ポイント減の43.9となり、2カ月連続で悪化した。


国内景気は、株式相場など金融市場が好材料となったものの、消費者の節約志向の高まりや自動車の生産・出荷停止などが悪材料となり、小幅ながら悪化傾向が続いた。


2月は、日経平均株価が34年2カ月ぶりに史上最高値を更新するなど、金融市場において好材料の多い状況が続いた。さらに、インバウンド消費や半導体関連の設備投資需要などが景気を下支えした。


一方で、能登半島地震による影響が北陸地方を中心に続いたほか、物価高にともなう節約志向の高まりに暖冬による季節需要の不振も加わった。さらに、自動車の生産・出荷停止などは製造から小売まで関連する業種の下押し要因となった。

< 今後の見通し : 夏以降に持ち直し >


今後は、雇用情勢の逼迫を背景とした継続的な賃上げや賞与、減税などによる個人消費の行方がカギとなる。また企業業績の改善が進むなか、好調なインバウンド需要や設備投資の拡大が見込まれるほか、生成AIの発展などはプラス材料と言えよう。


他方、人手不足や職人不足が長期化するなかで、2024年問題など時間外労働への対応、物価や金利の動向なども注視が必要である。さらに、一部自動車メーカーの生産停止や新型コロナ禍後の対面型サービスの需要一巡、海外経済の動向も懸念材料となろう。


今後の景気は、悪材料が集中し下振れるが、夏以降から賃上げなど個人消費を中心に緩やかに持ち直すとみられる。

業界別: 16業界32業種で悪化、買い控えや製造業の停滞などがマイナス材料に

10業界中6業界、51業種中32業種で悪化した。物価高騰にともなう消費者の節約志向の高まりや製造業の停滞、海外経済の動向などが景気の下押し要因となった。他方、史上最高値の更新が続いた日経平均株価などの金融市場の安定はプラス材料だった。

『運輸・倉庫』(41.9)… 前月比1.6ポイント減。2カ月連続で悪化。「燃料・車両価格の高止まり、ドライバー不足」(一般貨物自動車運送)といった声のほか、「中国向け出荷が減少している」(港湾運送)など荷動きの悪さを危惧する声もあげられた。また、時間外労働時間の上限規制適用を直前に控え、2024年問題に対して業界全体が不安を抱えているといった声も少なくない。

他方、旧正月を迎え中華圏からのインバウンドが後押しし、貸切バスや旅行業などで改善がみられた。

『製造』(39.8)…同0.6ポイント減。3カ月連続で悪化。2021年5月以来2年9カ月ぶりとなる30台へ低下した。新設住宅着工戸数の減少などを受け「建材・家具、窯業・土石製品製造」(同1.8ポイント減)は3カ月連続で悪化。

「豊田自動織機の不正問題で大幅に受注が減少した」(自動車操縦装置製造)といった声があがる「輸送用機械・器具製造」(同2.3ポイント減)も3カ月連続で悪化となった。また、「パルプ・紙・紙加工品製造」(同1.6ポイント減)は原材料価格の高止まりのほか、「中国向け輸出の不振や国内の買い控えなど低調な荷動き」(段ボール箱製造)などの悪材料が重なり2カ月連続で落ち込んだ。

他方、厳しいながらも「出版・印刷」(同2.2ポイント増)は、企業の採用活動が活発化しているといった声や、児童書分野は順調といった声が聞かれ2カ月ぶりに改善した。

『小売』(40.6)…同0.2ポイント減。2カ月連続で悪化。総合スーパーなどを含む「各種商品小売」(同1.8ポイント減)は、値上げによる買い控えの影響が表れ6カ月連続で悪化となった。同様に「飲食料品小売」(同1.7ポイント減)や、日用品の値上げなどが響き「医薬品・日用雑貨品小売」(同0.4ポイント減)もそれぞれ2カ月連続で悪化。自動車の不正問題に起因して受注停止や納車延期などが響き「自動車・同部品小売」(同1.2ポイント減)は2カ月ぶりに落ち込んだ。

他方、卒業・入学シーズンを控え学生服関連が好調な「繊維・繊維製品・服飾品小売」(同3.9ポイント増)は2カ月ぶりに改善した。

『金融』(47.7)…同横ばい。「新NISAや株価上昇、為替の円安が追い風になっている」(証券投資信託委託)など高値で推移する株式市場や良好な投資環境などが押し上げ要因となった。

他方、「倒産件数の増加。リスケ相談の増加」(信用金庫・同連合会)といった声も寄せられており、新型コロナ禍より業績改善できないまま事業継続を断念する企業も目立つなど、今後の景気を懸念する声も複数あがった。


規模別: 全規模が2カ月連続でそろって小幅に悪化

大企業」「中小企業」「小規模企業」が2カ月連続でそろって悪化した。いずれの規模も好材料と悪材料が交錯するなかで、小幅な変化にとどまった。

大企業」(47.7)…前月比0.2ポイント減。3カ月連続で悪化。自動車関連を含め生産調整が実施されるなど『製造』が悪化したほか、物流量が低調な『運輸・倉庫』など5業界が落ち込んだ。他方、販売単価の上昇した『小売』は3カ月ぶりに改善した。

中小企業」(43.2)…同0.4ポイント減。2カ月連続で悪化。自動車の出荷停止による納期の延期などの影響を受けた『小売』が2カ月連続で落ち込んだうえ、関連部品の卸売も下振れした。他方、好調なインバウンド需要のなかで宿泊業やレンタカーは上向いた。

「小規模企業」(42.4)…同0.2ポイント減。2カ月連続で悪化。「全体的に仕事量が少ない」「物件の照会が少ない」といった声が目立つ『建設』が下落したほか、『小売』も落ち込んだ。一方で、個人向けサービスなど『サービス』は2カ月ぶりの改善となった。

地域別: 10地域中7地域で悪化、暖冬や生産停止の影響続く

『北陸』『東北』『東海』など10地域中7地域が悪化、3地域が改善した。能登半島地震による影響が北陸地方を中心に引き続き表れたほか、天候不順や自動車の生産停止なども下押し要因となった。都道府県別では31府県が悪化した。

『北陸』(39.8)…前月比0.2ポイント減。2カ月連続で悪化し、1年10カ月ぶりに40を下回った。1月の能登半島地震による影響が続き「石川」「富山」が悪化。「工期の延期にともない入金も遅れ、資金繰りの対応が生じてきた」など、企業活動の下押し傾向が続いた。

『東北』(38.8)…同1.4ポイント減。7カ月連続で悪化し、1年ぶりに30台へ低下。域内6県中5県が悪化、「山形」が改善した。「暖冬のため季節商品が売れない」といった声も聞かれ、『小売』や『運輸・倉庫』など7業界が悪化した。

『東海』(43.1)…同1.3ポイント減。3カ月連続で悪化。域内4県がそろって下落した。自動車の生産ラインが停止し、関連する製造・小売が大きく低下した。また「中国経済の動向が懸念」など、低調な海外経済も輸出産業を中心に下振れ要因となった。

【今月のポイント(1)】買い控えなど個人消費の動向

  • 消費者物価指数は5カ月連続の2%台で推移、実質賃金指数は21カ月連続でマイナスとなっている

  • 個人消費DIは43.1と2カ月連続で落ち込み、企業からも消費者の低調な消費行動を危惧する声が多数あがっている

【今月のポイント(2)】 景況感と日経平均株価の動向

  • 証券・商品先物取引業の直近の景況感は65.3と高水準となっている

  • 企業からは、日経平均株価の上昇を景気の押し上げ要因として捉える声も複数あがっている

配信元企業:株式会社帝国データバンク

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