ドゥニ・ビルヌーブ監督の「デューン 砂の惑星 PART2」の試写を見ました。前作のクオリティが圧倒的だったので、今回も非常に楽しみにしていましたが、これがまた想像を遙かに超える素晴らしい仕上がりで、「このレベルの映画は、あと数年は現れないのではないか」という感慨を抱きながら試写室を後にしました。

もっとも、「あと数年」たつと、恐らく「デューン PART3」が公開されると思います。ビルヌーブ監督も、「PART3」までは自分が監督するとインタビューに答えて語っていますので、少なくてもあと1本、レベル違いの凄い映画が堪能できることは保証されたようです。

さて、今回の「PART2」を鑑賞している間、私が個人的に感じていたのは、自分の中の「スター・ウォーズ」の記憶が、次々にアップデートされていく感覚です。

整理するために、日本における「スター・ウォーズ」と「デューン」の映画公開年を時系列に並べてみました。

1978年スター・ウォーズ」1作目公開
1980年スター・ウォーズ 帝国の逆襲」
1983年スター・ウォーズ ジェダイの帰還」
1985年砂の惑星デビッドリンチ監督
1999年スター・ウォーズ EP1 ファントム・メナス」
2002年「スター・ウォーズ EP2 クローンの攻撃」
2005年「スター・ウォーズ EP3 シスの復讐」
2014年「ホドロフスキーのDUNE」
2015年「スター・ウォーズ フォースの覚醒
2017年「スター・ウォーズ 最後のジェダイ
2019年「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け
2021年「デューン 砂の惑星
2024年「デューン 砂の惑星 PART2」←今ココ

第43回の本コラムでも少し紹介したのですが、ジョージ・ルーカスの「スター・ウォーズ」は「デューン」が元ネタのひとつであることは間違いありません。フランク・ハーバートの原作小説(1965年刊行)がそうなのか、あるいはアレハンドロ・ホドロフスキー1974年頃に作った絵コンテ(「ホドロフスキーのDUNE」に詳しい)がそうなのか分かりませんが、とにかく元ネタであることは間違いない。

デューン 砂の惑星 PART2」の鑑賞は、その確認作業でもありました。ポール・アトレイデスが「ルーク・スカイウォーカー」の原形であり、クイサッツ・ハデラッハが「ジェダイ」に置き換わり、声を使った超能力が「フォース」になった。ハルコンネンの巨体は「ジャバ・ザ・ハット」で再現されているし、「サンドワーム」にいたっては、造形から生態までまったく同じ……。

ティーンエイジャーの頃、映画館で「スター・ウォーズ」の1作目を見に行って、オープニングから腰を抜かしそうになるほど興奮し、ライトセーバーチャンバラに手に汗握り、ダースベイダーの強さとカリスマに驚嘆しながら、大満足で映画館を後にした思い出。「スター・ウォーズ」の新作が出るたびに先行オールナイトを見に行った若き日の記憶。

それらの記憶が、45年の時を経て上書きされている感覚。これは、かなり珍しい。前作「デューン 砂の惑星」の時も多少感じましたが、今回「PART2」鑑賞時の方が強烈です。

もちろん、「スター・ウォーズ」の初期3部作は抜群に面白かった。しかし今の自分にとっては「正典」ではなくなった。デジャブを感じながら、その記憶を消し去り、新たな記憶で上書きしようとする自分がいます。ルーク・スカイウォーカーを消去し、ポール・アトレイデスに上書きしようとする自分が。

非常に複雑な感覚ですが、これはあくまで個人的な体験です。こんな体験は初めてです。

ひとつだけ、最後に念押ししたいのは、「デューン 砂の惑星 PART2」は圧倒的な傑作で、来年(2025年)のオスカーを席巻するのは間違いないということ。IMAXで鑑賞することを強くおすすめします。

(駒井尚文)

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