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 滅多にお目にかかれない珍しいサメ「メガマウス」が東アフリカで初めて生きたまま捕獲された。だがその結末はあまりにも残念すぎた。

 ザンジバル諸島の市場で、食材として2500円ほどで売られていたのだ。

 アフリカ全体で見ても、メガマウスザメ(以下メガマウス)が目撃されたのは今回でようやく6度目のこと。その希少価値を知らなければ、いたしかたのないことではある。

【画像】 大きな口が特徴の幻のサメ、メガマウス

 「メガマウス( Megachasma pelagios)」はネズミザメ目メガマウスザメ科の唯一の種で、その珍しさとは裏腹にほぼ世界中の水深200mのやや浅い深海に生息している。

 特徴的なのは、その名前の由来となった大きな口だ。体はオタマジャクシのようで、その巨大な口は頭の半分ほどもある。

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今回タンザニアで捕獲されたメガマウス / image credit:Wildlife Conservation Society, Tanzania Marine Programme

 メガマウスの存在が初めて確認されたのは1976年のこと。ハワイ沖を航行していた米海軍の調査船のシーアンカーに絡まっていたのだ。

[もっと知りたい!→]幻の巨大サメ、4.5メートルのメガマウスの死骸が漁網にかかる(フィリピン)

 それ以来、世界で目撃されたメガマウスザメは280匹に満たず、謎の多いサメである。

 日本近海ではどういうわけかメガマウスが捕獲されることが多く、全世界での捕獲50事例のうち13例(2011年時点)が日本でのものだ。

 最近では2020年6月11日千葉県館山市の定置網に生きたままかかっている所を地元の漁業関係者に発見され、さかなクンさんがギョギョっと解説してくれている。

 メガマウスは体長最大7mに達する大型のサメで、”メガ”という名称から太古の巨大ザメ、メガロドンが想像されるかもしれないが、体が大きい点を除けば、両者はそれほど似ていない。

 メガロドンは当時の頂点捕食者で、鋭い牙で獲物を狙った恐るべきハンターだ。一方、メガマウスは穏やかなサメで、小さなプランクトンを濾過して食べる。

 野生生物保全協会の海洋生物学者レット・H・ベネット氏によると、サメで濾過摂食をする仲間は3種のみだが、メガマウスはその中でも最小の仲間だ。

 また滅多に姿が見られないことから、単独行動するタイプである可能性が高いという。

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タンザニアで捕獲され、市場で売り出されていたメガマウス / image credit:Wildlife Conservation Society, Tanzania Marine Programme

地元の市場で2500円で売り出されていた

 ベネット氏によると、今回のメガマウスは、インド洋に浮かぶタンザニアザンジバル諸島(付近で漁船に捕獲されたという。この時点ではまだ生きていたようだ。

 研究者らは、地元の漁業の着陸地で捕獲されたサメの数千枚の写真を分析していたところ、メガマウスの存在を知ったようだ。

 だがその後ペンバ島に水揚げされ、地元の人々が食べる食材として、4万3000タンザニア・シリング(約2500円)で売られていたのだ。

 アフリカメガマウスが目撃されたのはこれがようやく6回目のこと。それ以前は、1995年から2020年にかけて、南アフリカガボンリベリアセネガルモーリタニアで1回ずつ目撃された。

 ただし、今回の発見はアフリカ東海岸における初事例という点で重要だ。おかげで、ほぼ全世界に分布するメガマウスの生息地がまた広がることになった。

 地元の人にとってはこの魚の価値を知らなかったのだからしかたがない。

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珍しいサメだが、ザンジバル、ペンバ島の市場で売られていた / image credit:Wildlife Conservation Society, Tanzania Marine Programme

もし見かけたら専門家に連絡を

 メガマウスはとても珍しいサメだが、世界中に生息しているため今すぐ絶滅する危険は低く、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは「低危険種」に分類されている。

 これまでに記録された数は280匹だが、それよりもずっとたくさんいる可能性が高い。また、その280匹のすべてが漁船によって捕獲されたものでないことも安心材料だとのこと。

 ゆえにベネット氏は、現時点で漁業がメガマウスに与える影響は限定的だと考えている。これは、その生息域での漁業があまり活発でないことも関係しているかもしれないそう。

 アフリカ以外の地域に目を移せば、2023年12月、フィリピンでは妊娠したメガマウスが発見されている。

 浜に打ち上げられた母親は体長5.5mで、まだ生まれていなかった胎児が排出されていた。これは、メガマウスがほかサメと同じように、生きている子供を出産することを示す初めての証拠であるという。

 滅多に姿を見せないメガマウスの不思議な生態について知るには、情報を共有することが大切となる。

 だからもしも運よくメガマウスと出会うことができれば、環境や漁業を担当する政府当局や、水族館や自然保護協会といった団体に連絡するよう、ベネット氏は協力を呼びかけている。

References:First record of the megamouth shark Megachasma pelagios (Lamniformes: Megachasmidae), from the United Republic of Tanzania | Zootaxa / Elusive megamouth shark caught off Zanzibar for 1st time, gets sold for $17 | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo

 
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幻のサメ、メガマウスが東アフリカで生け捕りされるも、市場で2500円で売られてしまう