謎の痛みやめまい、ふらつき。年齢を重ねると増えるそれらは大病の前兆かもしれない。体が発するサインを見逃すことなく、原因を初期段階で摑むにはどうすればいいのか。

◆初期症状がわかっても医者に正しく伝えないと意味がない

「3つ目の病院で、ようやく血液のがん『悪性リンパ腫』と診断されました。それまでずっと排尿障害、腰痛といった症状に悩まされましたが、最初に病院を受診してから、4か月がたっていました」

そう語るのは笠井信輔氏。フジテレビを退社し、フリーに転向した直後の’19年に悪性リンパ腫のステージ4と診断された。4か月半の入院と抗がん剤治療を経て、現在は完全寛解している。

「まず顕著だったのは尿のトラブル。急に尿意を覚えるのに、猛烈にいきまないと尿が出てこない、排尿時に痛みが出る、1~2時間でトイレに行きたくなる……これらの症状から診断されたのは『前立腺肥大』でしたが、治療をしても一向によくならない。また腰の激痛で寝返りも打てず、芝居は幕間で退席するほど。ぎっくり腰を疑い、整体院に通った時期もありました」

◆診断まで時間がかかった要因

その頃には体重が5㎏も減っていたという。

「『フリーになって環境が変化してやせたのかな』と喜んでいましたが、これも今思えば明らかに悪性リンパ腫の前兆です。症状は細かくメモしていましたが、『治療には関係ないだろう』と勝手に思い込んで医師には伝えてなかった。これも診断まで時間がかかった要因だと思います」

血液のがんである悪性リンパ腫は、全身に症状が出るため判明しづらい病気だ。

「悪性リンパ腫の典型的な前兆に、首などのリンパ節の腫れ、寝汗も多いようですが、僕は該当しませんでした。5大がんなら基本的に全国の病院で治療できますが、症例数の比較的少ない悪性リンパ腫や希少がんは、病院情報にアクセスしづらい、という問題がありますね」

◆素人が正しい医療情報にたどり着くには?

どの病院で治療するか、セカンドピニオンを受けるか、素人が正しい医療情報にたどり着くのは、容易ではない。

「適切な治療に繫げるには、やみくもにネットで調べず、まずは信頼できる知り合いから情報を得ること。がん保険など保険会社の相談窓口も有用ですね。また、がんになった場合に最も心強いのが全国のがん診療連携拠点病院に設置されている『がん相談支援センター』です。初期症状の不安から手術費用の目安など、患者本人以外でも匿名で利用できます。しかも無料。こういった情報がより広く伝わることを切に願いますね」

医師に症状を「伝える力」と医療のリテラシー。たとえ病の前兆を自覚しても、これらが揃わなければ、適切な治療には繫がらないのだ。

◆「いい病院」にかかる3つのコツ

①ネットよりも信頼できる知人に相談し口コミを得る

②医療保険の相談窓口を賢く利用する

③悩みはすぐ「がん相談支援センター」に質問する

【フリーアナウンサー笠井信輔氏】
1963年生まれ。『とくダネ!』では約20年間キャスターを務める。’19年フリーに。近著に『がんがつなぐ足し算の縁』(中日新聞社)など

取材・文/週刊SPA!編集部
※3月5日発売の週刊SPA!特集「[ヤバい病気]の前兆」より

―[[ヤバい病気]の前兆]―


笠井信輔氏