「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」の快進撃が止まらない。過去10年(年率)、そして、5年(年率)のトータルリターン・ランキングにおいて全ファンドでトップの成績に君臨しつつ、過去1年でも88.83%のリターンでトップ5(レバレッジ型を除く)の成績に入った(いずれも2024年1月末時点。ウエルスアドバイザー調べ)。中長期の運用成績のみならず、短期の成績でも優れた同ファンドの魅力について、ファンドの運用を担当する野村アセットマネジメントのシニア・ポートフォリオマネージャーの加藤明氏に、SBI証券の投資情報部シニア・ファンドアナリストの川上雅人氏が聞いた。

◆「テンバガー」を実現した成長要因とは?

川上氏:「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」は、2023年12月からSBI証券が厳選した長期好実績のファンドである「SBIセレクト」となっており、「SBIセレクト」の中からさらに厳選した「SBIプレミアムセレクト」のファンドとなっています。当ファンドは「SBIプレミアムセレクト」15本の中でも、良好な運用実績から足元で最もお客さまからの支持を得ているファンドとなっており、新NISAがスタートした今年に入ってから資金流入が拡大し、2月はさらに資金流入が拡大しています。

 インデックスファンドの人気が高い中で、このファンドの基準価額(分配金再投資)は、ファンド設定来の約15年で約18倍(2024年1月末時点)になっています。過去10年でみると基準価額(分配金再投資)が10倍になったという、「テンバガー」なファンドです。半導体市場の成長は目覚ましいものだと日々の生活の中でも実感はありますが、具体的に成長の要因としてはどのような点が挙げられますか?

加藤氏:ファンドを設定して以来の15年間はもちろんのこと、半導体市場はあらゆる電動化・デジタル化の波に乗り、過去半世紀以上にわたって世界のGDP成長の2~3倍という速いペースで拡大を続けてきました。これほどの長い期間にわたり高成長が続いてきた市場は少なく、さらに2020年頃からはAI(人工知能)やIoT機器が爆発的に普及する半導体「第4の波」に乗り、新たな成長サイクルに入ったと考えています。

 過去30年余りを振り返ると、1980年代は「メインフレームの時代」といえ、大型コンピューターが大量の半導体を消費する第1の波が起こりました。第2の波は1990年代のパソコンの普及の時代です。インターネットの登場によって個人が誰でもパソコンを保有するようになりました。2000年代になるとモバイル・ネットワークが整備され、いつでもどこでもインターネットに繋げられるようになり、スマートフォンやクラウドサービスの急速な普及で第3の波が来ました。そして、AIやIoT機器の普及にけん引される第4の波が現在の半導体市場の隆盛といえます。

 半導体市場は今後年率10%程度の市場成長を続け、2030年には1兆米ドルの市場になると予測されています。1970年代から約50年をかけて5,000億米ドルの市場に成長しましたが、はるかに短い期間で5,000億米ドル分を上乗せするような飛躍的な成長が見込まれています。

 また、競争環境の改善も半導体関連企業の業績成長を支えました。半導体市場は過去多数の企業が激しい競争を繰り広げ、値下げ競争に巻き込まれやすいこともありましたが、M&Aによる企業数の減少などにより、過度な競争環境から脱却し安易な値下げをせず利益が確保できる構造に変化したといえます。

◆今後の成長をけん引する「AI」のインパクト

川上氏:2030年に1兆米ドルの市場に拡大するといわれる半導体市場において、ファンドの運用担当者として加藤さんが注目しているテーマは何でしょうか?

加藤氏:この先の10年は「生成AIサービスに欠かせないデータセンター向け高性能半導体」が市場成長をけん引するとみています。生成AIの市場規模は、2022年に400億米ドル程度でしたが、2030年には1.3兆米ドルと約33倍に拡大すると見込まれています。AIはテクノロジーの仕組みを根本的に変えると考えられていて、ITやサイバーセキュリティの重要な部分を今後はAI技術が担っていくようになると予想されています。

 そして、AI技術の進化によって、半導体の微細化技術がAIが必要とする処理能力に追い付かないという現象がおきています。従来、半導体は2年ごとに2倍のペースで微細化によって集積度を高めてきました(ムーアの法則)が、AIが必要とする処理能力はおよそ3-4カ月で2倍という猛スピードで高まっています。微細化の進展を待っていられず、製造コストはかかるもののチップサイズを大型化して処理能力を高めることを実現しています。この大型化によって半導体製造工程が複雑化し、半導体製造コストが上がっています。この結果、従来は半導体の数量が拡大するに従って1個当たりの単価が下落するという流れだったものが、近年は数量の増大に加えて価格も上昇するという構造に転換しています。これが半導体関連企業の成長を押し上げていると考えております。

川上氏:エヌビディア社をはじめとして、半導体関連企業に注目が集まっていますね。業界としての、今後の成長の糧となる分野はどのようなところだと思いますか?

加藤氏:エヌビディア社は超高性能データセンター向けGPU(:3Dグラフィックスなどの画像描写をおこなうための演算処理を行なう装置のこと)であるH100シリーズや次世代のB100シリーズに加え、AI開発プラットフォームであるCUDA(エヌビディアが開発・提供するGPUプログラムの開発環境のこと。CUDAを用いることで、GPUの複数の演算器を利用した高速な並列演算処理を行なうことができるようになる)を擁し、この分野で圧倒的なシェアを誇ります。

 エヌビディア社の卓越した競争力は、半導体チップというハード面のみならず、ソフトの側面であるAI開発プラットフォームCUDAでも圧倒的なシェアを持っているという点です。かつて、パソコンが一般家庭に浸透していく時に、CPUにインテル社の半導体を使ったウィンドウズOSのパソコンが大ヒットし、「インテル」と「ウィンドウズ」を掛け合わせた「ウィンテル」という言葉が、パソコン業界の勝者の象徴でしたが、現在のエヌビディア社は、AI業界において1社で「ウィンテル」を提供しているようなものです。

 現在はAWSやAzureといったハイパースケーラー、JPモルガン社などの大企業が主な顧客となっていますが、今後は高齢化の進展や人口の減少などによる国家競争力の低下をカバーするため、生成AIサービスを活用して国全体の生産性を向上させたい政府機関・軍が新たな重要顧客となりそうです。その流れを裏付けるかのように、半導体メーカーのマネジメントが国のトップと面談する機会はこれまであまりありませんでしたが、欧米各国はもちろん2023年12月頭には日本の岸田首相が来日したエヌビディア社CEOジェンセン氏と会談し、生成AIサービスなどに必要なGPUをできるだけ多く供給するよう同社に要請しました。先日取材した世界的な半導体製造装置メーカーも、投資家は長期的な生成AIサービスのポテンシャルを過小評価しているとの考えを持っているようでした。

 また、エヌビディア社以外ではサーバー間でデータのやり取りを行う高性能通信チップを提供するブロードコム社やマーベルテクノロジー社に注目しています。ハイパースケーラーを中心にデータ処理能力を高めるために単体ではなく大量のAIサーバーで並列処理を行うための高性能通信チップの需要が拡大しており恩恵が大きいと判断しています。

 データセンター向け以外では高性能PC需要の高まりに期待しています。2023年11月にシリコンバレーにある半導体各社を取材しましたがPCやスマホ向けに対しては明るい話題が増えてきた印象を持ちました。実際にPCは昨年半ばに在庫調整が終了、インテル社やマイクロン社などの業績は底打ちし徐々に回復しつつあります。2024年はWindows10のサポート切れが2025年に迫っていることやCopilotなど生成AI機能を搭載したWindows12が発売されることもあってAI PCへの買い替え需要が盛り上がりそうです。なお、足元で開発されている生成AIサービスは、マイクロソフト社のCopilotやアドビ社のFireflyなど基本的にはビジネス用途向けのものが多く、企業で使われるのであればまずはPCのアップグレードが必要となりそうです。

川上氏:今後の業界構造の変化などに対してはどう考えていますか?

加藤氏:AI向け半導体としては、AMD社のMI300シリーズやインテル社のガウディシリーズなどがあり、AI開発会社もエヌビディア1社だけに依存することを避けたいという意識が働きますから、AMD社やインテル社の製品も採用しています。しかし、AI開発プラットフォームであるCUDAを押さえている強みは大きく、なかなかエヌビディア社に代わる企業の台頭が考えにくい状況です。AI市場が成熟し、使われる半導体が一般化するような市場にならない限りは、エヌビディア社の強さは揺らがないのではないかと思います。

◆半導体サイクルを超える長期成長を捉える「つみたて投資」

川上氏:半導体産業にはサイクルがあり、業績の好不調の波も大きい産業というイメージがあります。これまで好調な運用成績を残していますが、どこかのタイミングで不調の波がやってくる可能性はないのでしょうか?

加藤氏:たしかに半導体市場にはサイクルがありますが、それらのサイクルを乗り越えて長期的に高い成長を遂げてきた市場であり、今後も長期的に成長が見込まれる市場と考えています。

 以前の半導体市場はPCやスマホなど特定製品の需要変動の影響を大きく受け、収益や株価の変動が激しい業界として知られ、「短期的な景況感の影響を受けやすい」という特徴がありました。半導体市場のサイクルは3年~4年で繰り返され、2年~3年の拡大期の後で1年程度の調整期がありました。現在は2023年半ばに市場が底入れして拡大期に転じたところと見ています。拡大期を2年~3年とすると2025年半ば~2026年半ばまでは拡大基調が続くと期待されます。株価は半年先くらいで動いていますので2024年末から2025年末くらいまでの株高があってもおかしくないといえます。

 ただ、今回の半導体サイクルは長期化する可能性が高いとみています。過去の例では、1995年8月に「Window95」が発売されパソコンの需要が爆発したサイクル、そして、2005年に欧米で3G通信サービスが普及し、ブラックベリーからiPhoneにつながるスマートフォンが登場したサイクル、さらに、2015年にAWSなどクラウドサービスが普及期を迎えたサイクルは約4年と長期化しました。概ね3サイクルに1回は拡大期が3年程度(サイクルは4年)に伸びることがあり、今回のAIとIoTがけん引する拡大期も、旺盛なAI向け半導体需要によって拡大期が長期化するのではないかという見方があります。

 また足元では、電気自動車、ロボット、工場自動化などアナログ半導体といわれる分野でも用途が多様化し拡大しています。今後は、半導体用途の多様化に伴い、収益や株価の変動が安定していくことが期待できます。とりわけ、AIを搭載した自動ロボットが物流倉庫で仕分けや搬送を行なうなど、人の判断が必要とされた作業でさえもロボットに任せられるようになったり、動画ニーズの高まりなどを受けてデータを処理するデータセンター向けの需要が急増したりと、半導体の需要が今後もさらに伸びると予想されます。

 もちろん、半導体サイクルが伸びることがあっても、いずれ訪れる在庫調整による調整局面からは逃れられないかもしれません。ファンド設定来の在庫調整期の半導体株指数※の値動きのマイナス幅はコロナ禍での特需からの反動があった2022年を除くと年間でならせば5%~10%程度でした。

川上氏:好不調のサイクルを超えて大きな成長が期待できる半導体株式には、つみたて投資による長期投資と相性がよさそうですね。新NISAで長期の資産形成をスタートされた方も少なくないと思います。当ファンドは新NISAの「成長投資枠」の対象ファンドです。今後も大きな成長が期待できる「野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」を投資対象としてぜひ、ご検討ください。