FDAが退役迫る4号機を用いたチャーターフライトを実施。そこではパイロットが「前代未聞の取り組みです」と話すほどのレアな企画が組み込まれました。どのようなものだったのでしょうか。

2024年3月9日退役予定

「前代未聞の取り組みです」と、パイロットは話しました。静岡を拠点とする航空会社FDAフジドリームエアラインズ)で2024年3月9日に退役する“4号機”ことエンブラエル170型の「JA04FJ」。この退役に先駆け3日に行われた最後のチャーターイベントが行われたときの一幕です。

このチャーター便の便名は「サンキュー、04FJ」にちなんだ3904便。同社の基幹空港である名古屋小牧空港を発着するフライトです。小牧空港は航空自衛小牧基地に隣接している軍民共用空港で、この日、小牧基地では航空祭が行われていました。

このチャーターフライトでは、離陸から通常の旅客便とは異なる試みが実施されました。

小牧空港・小牧基地の滑走路は2740mあり、エンブラエル170のような小さめのジェット旅客機にとっては、十分すぎる長さです。通常こういったケースでパイロットは、エンジンの推力をある程度のラインまで上げて走り出し、出力安定後に離陸推力にセットする方法が一般的です。

ですが、この便ではブレーキをかけた状態で、エンジンを離陸推力にセット。そこからブレーキを開放し一気に加速する、通称「ロケットスタート」を実施。エンジンをふかすと普段の旅客便とは違う揺れが客室に伝わったのち、大きなGを感じた刹那、離陸しました。

「前代未聞」はフライト終盤で発生

遊覧フライトは富士山周辺などを空中から眺めるといったもので、乗客が早めに乗り込んだこともあり、富士山上空を2周しました。ただしこのフライトのハイライトは、終盤に待っていました。

4号機は航空祭が行われている小牧空港・小牧基地の滑走路上空で低空飛行(ローパス)を実施します。同便の乗客は、政府専用機であるボーイング777-300ERやKC-767空中給油機といった航空祭の展示機を、低空から見ることができたというわけです(機内からの小牧基地側の撮影は禁止)。

さらにローパス後、着陸したこの機は進行方向左手側にある小牧空港ではなく、右手側にある小牧基地の誘導路へと曲がります。パイロットが「前代未聞」といったのは、国内の自衛隊航空祭のイベントのひとつとして、民間機であるFDA機の通過が組み込まれている、ということだったのです。

なお、4号機はFDAでは初めて、他社から中古で譲り受けた機体で、2010年10月に運航開始。FDA機としてこれまでの飛行時間は3万時間を超えています。製造は2006年で、FDAによると、エンブラエル170のなかでも世界で一番、着陸回数が多い機体であるとメーカーから言われたという、“隠れレア機体”です。今回の退役も、ほかの機体よりも機齢が高いことが要因とのことです。

退役前のチャーターイベントが行われたFDAの4号機(画像:FDA)。