大人の社交場・銀座のクラブにホステスとして勤めているみずえちゃんと申します。先日、友人らと広尾にあるちょっといいレストランで食事をしていたら、隣の席の老夫婦が記念日のお祝いをしていました。私もああなっている予定だったんだけどなあ、とため息が出ました。

 その傍ら、ライターとしても活動しており、これまでに私がお酌をさせていただいたおじさま方との実体験をもとに、夜遊びやモテに関する情報を発信をしています。

◆Xで“即報”しているナンパ師の正体

 銀座で働けるお店を探していた頃、面接の帰りにとある男性からLINEがありました。ライターのお仕事で数回顔を合わせた「ナンパ師」を自称する男性でした。

 LINEを開くと、「渋谷で飲んでるから来ない?」とのことでした。その日はせっかく2200円かけてヘアメイクをしてもらったのに、まっすぐ帰宅するのは寂しいなと考えていたタイミングでしたし、X(旧Twitter)で即報、いわゆる“お持ち帰り”報告をしているたぐいのナンパ男たちの正体を突き止めてやろう……まではいかなくてもちょっと興味はあった私は、渋谷へ行くことにしました。

「モテを科学する」「ナンパを極めれば女を抱ける」などと豪語し、池袋を歩いていたら1日100回くらいすれ違う、ちいかわキーホルダーを鞄にぶら下げている女の子たちの下着姿を「出会って20分で即」と誇らしげに投稿している男たちの正体とは?

 結論から言うと、のこのこ出かけて行ってよかったです。勉強になりました。一部の男性にとっては教訓になりそうなポイントがいくつかあったので、今回は本人を特定されないように多少のフェイクを加えつつ「謎のナンパ師」についてお話したいと思います。
 
居酒屋で行われたモテ講座

 ナンパ師に案内されて入った居酒屋の個室。そこには韓流風ファッションの中年男性2名と、数名の女の子がいて、「お待たせー」と言って着席したナンパ師に、男性2名は「ども」と頭を下げました。

 ここでナンパ師のプロフィールをざっくり説明すると、彼はXのフォロワー数万人の自称インフルエンサー。そして中年男性2名はその生徒(?)らしい。

 女性たちはというと、OL風の方もいれば、モデルのたまごさん、20代前半の学生さんもいてバラエティ豊かです。いずれも私同様ナンパ師の知り合いだと話していました。そこで開催されたのは、合コンでも異業種交流会でもなく、ナンパ師によるモテ講座でした。

◆「ネイルを褒めろ」という助言に思うこと

 男性2名がなぜ年不相応な韓流スター系ファッションであるのかはさておき、終始もじもじしていて居心地が悪そうなのが気になりました。中年BTS風によると「初対面の女性と何を話したらいいのかわからない」とのことでした。

 するとナンパ師は「ネイルを褒めろ」と助言。「ほらね、こうやってネイル綺麗だねって」と言って、私の手を取ると指先に触れました。

 「自然にボディタッチできるでしょ」と。いやいや全然自然じゃねーよ。不自然の塊だろうが。ここ数年、「ネイル綺麗だね」と許可なく手に触れる男性にちょいちょい出会うのですが、あれはどっから仕入れているアイデアなのでしょうか。

 GACKTでもミッチーでもギリギリ気持ち悪いので絶対にやめましょう。

◆間違いだらけのモテ講座

 お酒もすすみ、中年男性たちも多少は饒舌になります。「僕は〇さん(自称ナンパ師)みたいに千人切りを目指しています」と彼は言いました。慈悲深い私は、「目指すのは勝手だけれど、それは女性の前では絶対に言わない方がいいよ」と教えてあげました。男性はうつむいて「はい」と答えました。

 ナンパ師は「そんなんじゃダメ」と、男性にダメ出し。

「美女は貶せ」と、男性に謎のアドバイスを与えました。「例えばね」と私をさして「あなためちゃくちゃ不細工っすね。銀座のクラブってレベル低いっすね」と続けました。めちゃくちゃ不細工とはもちろん私のことです。「しかもおばさんだし」と、とどめを刺した後「トーク力でカバーしてんすね」と加えました。彼曰く、これがムチとアメ戦法。

 美人は褒められ慣れているから「綺麗ですね」ごときではピクリとも喜ばない。むしろ貶せ。貶され慣れていない美人を貶すことで「特別な男」として認識されるんだ、というわけらしいです。全然意味がわかりません。多分、私が不細工でおばさんだからだと思います。まじで根に持ってます。
 
 そもそも「綺麗ですね」と、その辺のナンパ師に言われても嬉しくないだけであって、坂口憲二に言われたら誰だって大喜びなんですよ。

帰り道で「俺のこと気になってんでしょ」

 微妙な空気のまま、23時を過ぎ、そろそろお開きにしましょうということになりました。OL風とモデルの卵、学生はそれぞれ別の路線に分かれて帰宅。「池袋で西武池袋線に乗り換える」と話すナンパ師と、当時池袋に住んでいた私は山手線内回りに乗り込みました。

「俺のこと気になってんでしょ」となぜか自信満々のナンパ師を適当にやり過ごすこと約15分。電車は池袋駅のホームに到着しました。やれやれやっと解散……と思いきや、彼は「ねえ、家こない?」「何もしないから」「ねえ、なんで? ダメ?」と、なおも食い下がります。

 なんで“即れる判定”されたのか本当に謎だし、不名誉です。「無理です」とだけ告げて猛ダッシュ(実際は酔っ払いなりに超頑張った競歩)で逃げました。

◆モテる男は即報しない

 身近なモテ男を見渡してみるけれど、誰ひとりとして即報なんてしていません。ファンや顧客、友人のガールフレンドとねんごろな関係になったとして、彼らにとってそれはわざわざ報告するほどの特別なイベントではないから。

 もちろん「千人切り」を自慢したりもしません。正確には、リピーターが多すぎて千人も切っていられない。加えて、結婚していたり、同棲しているパートナーがいる彼らにはそんな暇はない。千人切りを自慢するのは、定期的に会う関係の女性がいない非モテ男性であることを自白しているようなものです。

 非モテを拗らせた結果、ちいかわをぶら下げて歩いている女の子に手あたり次第に声をかけて、毛玉のできた化繊パンツの写真をXに投稿しているんです。悲しいですね。

 ちょっと前に話題になったドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション 結婚したい彼と彼女の場合〜令和の婚活漂流記2024〜後編 」に登場した、婚活アドバイザー・植草美幸さんのもとを訪れる男性たちなんて、まだまだ何とかなりますよ。

 救いようがないのは、変なナンパ師の有料noteを購入している層じゃないでしょうか。女にモテたいはずなのに、女の言うことには聞く耳を持たず、謎ナンパ師の「モテの法則」とかを鵜呑みにしているピュアな人たちが、いつか目を覚ましますように。南無。

<文/みずえちゃん>

【みずえちゃん】
1989年生まれ。新潟県長岡市出身。関西外国語大学卒業後、大阪市内の広告代理店に勤務する傍ら、キャバ嬢デビュー。結婚、離婚、地方の激安キャバクラを経て、現在は銀座ホステスとライターを兼業。X(旧Twitter):@mizuechan1989

“根に待つタイプの女”みずえちゃん(筆者)