ドイ灯1-39-9)、4か所目は石川さゆり演じるママのお店「紅の灯ノヴ」(台東区浅草4-16-4 トドロキマンション1F ※会員制)。本屋も居酒屋もいくつかロケハンしたなかで、ヴェンダース監督がこの店を選んだという。両店とも、店名も内装もほぼそのままの状態で撮影されている。

【写真を見る】「昭和」を求めて台東区にやってきたキアヌ・リ―ヴス!

台東区の魅力は海外の映画監督まで広がる

『PERFECT DAYS』の反響は大きく、公開後はロケ地巡りをしている人をSNSで多数見かける。それだけでなく、海外からはロケハンの問い合わせがあったという。「先日はマレーシアの映画監督から、『PERFECT DAYS』を観て台東区を選んだといううれしいご連絡をいただき、うちの外国人スタッフが1日かけて台東区をご案内しました」と笑顔を見せる。台東区フィルム・コミッションには外国人スタッフもいるので、英語での対応によってよりスムーズに海外のチームとやりとりができるのも強みだ。

コロナ前は海外からの撮影実績が年間100~200件ほどあったが、一度ゼロになってしまったという。ここ最近でようやく問い合わせが戻りつつあるなかで、海外案件を取り戻すための施策も打ち始めた。『PERFECT DAYS』のオープニング作品を飾った東京国際映画祭と併催されるコンテンツマーケット、TIFFCOMへの参加もそのひとつ。海外のメディアや制作者に、台東区の魅力を伝える資料を配布し営業活動を行った。

■キアヌ・リーヴスが浅草に求めた風景とは?

台東区で海外からの人気No.1ロケ地はやはり浅草。だが浅草もここ数年でどんどん新しく生まれ変わり、浅草地下街のような昭和の風景が残る場所は少なくなってきている。また、そういった場所での撮影許可取りも難しいのだという。そんな浅草に、なんとあのキアヌ・リーヴスがお忍びでロケハンに来たことがあるというのだ!「ご自身のプロデュース作品で、浅草を昭和の町だと思われて来られました。ですが、すっかり新しくなった浅草にがっかりされてしまい…。その時はショックでしたね」と振り返りつつ、「でもキアヌとロケハンを一緒にしている時は楽しかった。初日に、『ロケハンの前に、まずはラーメンだ』と大好きなラーメン屋に行ったのが印象に残っています」とにっこり。

■映像制作者必見!台東区お祭り、花火の撮影もできる!?

台東区東京23区のなかで最も面積が小さいが、浅草、上野といった人気観光地があり、浅草寺をはじめとする自社仏閣、三社祭などのお祭り、レトロな街並みから自然まで所狭する魅力が詰まった区だ。だが、海外からのイメージはやはり浅草寺の印象が強いという。「最初は浅草寺でいいんですが、次の機会が私たちの営業のチャンス。なので必ず、海外からの制作者とは直接連絡を取れるようにして、日本で困ったことはないか、日本でどういった撮影がしたいかなど、台東区に限らず撮影の相談に乗れるような関係を築けるよう努力しています」と奮闘中。

一見難しそうな撮影にも親身に相談に乗ってくれるのが台東区フィルム・コミッション。「お祭りや花火なんかも、やりようによっては撮影できます。でも最初から映画やドラマでの撮影は無理だろうと諦めている制作者も多いと感じるので、工夫次第で撮影できるということを広めていかないとならないです」と課題を語る。「例えば町会の方々にご協力いただき、神輿を準備してもらったり、役者さんに神輿の担ぎ方をレクチャーしてもらったり。もちろん大変ですが受けてもらえる町会はあるので、私たちもできる限り尽力したいと思います」と意欲を見せた。

変わっていく街を隅から隅まで歩き回り、撮影条件をデータ化し、日々住民との信頼関係を築いている台東区フィルム・コミッションのスタッフたち。そんなロケーションに想いを馳せて作品を観ると、新たな魅力が発見できるかもしれない。

取材・文/石川ひろみ

『PERFECT DAYS』の台東区のロケ裏側を聞いた!/[c]2023 MASTER MIND Ltd.