認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンは2017年より日本国内の子どもの貧困対策事業として、低所得のひとり親家庭への食品支援事業「グッドごはん」を運営し、ひとり親家庭への食品配付を行っています。
当団体は、グッドごはんを利用するひとり親家庭を対象に、前年の収入に関するアンケート調査を毎年実施しています。今回、2023年の収入や、物価上昇下の生活状況などについて調査を行いました。
調査の結果、低所得であることや物価上昇による影響を受け、食事や子どもの教育環境が制限されるなど、困窮した生活を送るひとり親家庭の実情が明らかとなりました。

アンケート概要

「ひとり親世帯の収入に関するアンケート」

  • 実施日程:2024年2月2日2月18日

  • 対象者:グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業「グッドごはん」の利用者 ※利用者は、ひとり親家庭等医療費受給者証保有者に限る(ひとり親家庭等医療費受給者証とは、18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証)

  • 回答方法:アンケート回答フォームへの入力(オンライン)

  • 回答者数:2,391名(回答率38.3%)

  • 回答者属性:

    - 性別:女性 2,302名|男性 53名 (無回答除く)

    - 年代:10代 0名|20代 86名|30代 564名|40代 1,185名|50代 531名|60代以上 10名 (無回答除く)

    - 居住地域:首都圏(主に東京・神奈川・埼玉・千葉) 1,251名|近畿(主に大阪・京都・兵庫・奈良)925名|九州(主に佐賀・福岡)215

●4人に1人 年間の就労収入が100万円未満

回答者(グッドごはんを利用するひとり親家庭の保護者)の就労のみによる2023年の年収(手取り)を調査したところ、「1円以上100万円未満」が25.1%、「100万円以上200万円未満」が43.4%など、就労収入の低い世帯が大きな割合を占めていることが明らかとなりました。

回答者本人の就労のみによる2023年の年収(手取り)


また、就労形態についての回答を得た結果、回答者の半数以上が非正規雇用で就労している(2023年末時点)ことがわかりました。

回答者の就労形態(2023年末時点)

ひとり親は、家事や子育てを一人で担う場合が多く、仕事に費やす時間を思うように確保できないジレンマを抱えることも少なくありません。さらには、家族の介護や自身の健康問題など、様々な理由から就労へのハードルが高くなるケースもあります。

●6割近くが世帯年収200万円未満 物価上昇も生活に打撃

回答者の世帯全体における2023年の年収(各種社会手当・養育費・同居家族の収入含む)に関し、下図に示すとおり、「200万円未満」が58%に及びます。

回答者の世帯全体における2023年の年収(手取り)                各種社会手当・養育費・同居家族の収入含む


回答者からは、困窮する生活や将来への不安に苦悩する声が上げられました。

  • 苦しすぎる。4月から娘が小学校だがお金がなく全く用意できてない。家族は痩せる一方

  • コロナ禍から養育費が未納になり、なお家計が苦しい

  • 毎日の生活だけで精一杯で今後の為の貯金が無く、子どものためのお金が無いのがとても不安

  • もっと働きたいのに、自分の鬱病、子供の不登校…もう無理です。どうしたら良いのか分かりません。離婚した元主人からの養育費も無くとても生活が苦しい。子供たちは未来に希望も夢も無いと話します

また、厳しい経済状況の中、昨今の物価上昇が、ひとり親家庭の家計をさらに苦しめている状況がみられます。

「最近の物価上昇で、あなたの家計はどのように変化しましたか」という質問に対し、「非常に苦しくなった」と回答した人は6割にのぼりました。

物価上昇による家計への影響程度

さらに、回答者からは、「今までも厳しい生活をしてきたが、収入は変わらないのに物価が高くなりさらに苦しくなった」といった声が上げられています。

2023年における職場での賃上げの状況を問う質問において、「自分の給料は変わらなかった」と回答した人が75%を超える結果となり、物価上昇下で収入が上がらず、より困難な暮らしを余儀なくされている状況が浮かび上がりました。

2023年における回答者の給料の変化

物価上昇下における具体的な生活状況に関し、以下の図のとおり、「物価上昇で家計が苦しくなったことが主な理由でとっている(とった)行動」について回答を得ました。

物価上昇で家計が苦しくなったことが主な理由で とっている(とった)行動  (複数回答)

「家で冷暖房器具を使うことを控えている」「肉や魚、野菜を控えている」を選択した回答者が6割を超え、日々の生活行動に著しく支障が生じている様子がうかがえます。また、56.1%もの回答者が「自分の食事の量を減らしている」を選択しており、健康的な生活が脅かされるほどの切迫した暮らしに陥っている状況もみられます。さらには、子どもの進学や習い事、学用品の購入を制限している家庭もあり、いま現在の生活のみならず、子どもの将来にわたる影響が懸念されるほどの困難に直面している場合があります。

●深刻な生活苦・・・実際の声

回答者から、困窮した生活の実情を伝える様々な声が寄せられました。

  • Aさん 30代 世帯年収200万円未満 子ども2人(14歳以下)

    「死別でのシングルマザーですが、今後子供達にどれだけお金がかかってくるのか、それを1人でやれるのか心配です。近くに頼れる両親もおらず、心療内科にかかりながら何とか仕事をして子育てをしている状況なので、先の不安は尽きず心に余裕もない為、子供にも優しくなれない時があります」

  • Bさん 40代 世帯年収200万円未満 子ども2人(14歳以下)

    「次男が軽度知的の遅れがある自閉症で勤務時間を増やす事が難しく、収入が頭打ちになってしまい生活の向上が難しい」

  • Cさん 50代 世帯年収100万円未満 子ども1人(14歳以下)

    「コロナ禍で育児と介護で退職を迫られ離職。再就職先を探しても、もう以前の収入や就労環境は望めない年齢を痛感しています。介護と育児の両立をワンオペでこなす辛さは記憶がなくなるほどきついです」

●子どもの貧困は社会の損失

厚生労働省の国民生活基礎調査(2022年)によると、日本のひとり親世帯の半数近くが相対的貧困状態にあります。

困窮を招く要素は複雑に絡み合っており、一度貧困に陥ると、その状態から自力で脱却することは容易ではありません。また、困窮家庭は、今般の物価上昇にみられるような社会不安による影響を大きく受け、一層脆弱な立場に置かれやすいと考えます。

このような環境に身を置く子どもたちが、周りと比べて健康的な生活を送れなかったり、学業やあらゆる体験の機会を諦めたりするといった経験を積み重ねてしまえば、将来大人になった時、自分自身の能力や可能性を発揮できずに社会から取り残されるリスクが高まります。

未来の社会を担う存在は、子どもたちです。そのため、子どもの貧困を看過することは、その子自身の可能性だけでなく、未来の社会の安定・成長の損失をも引き起こすと言えます。

すべての子どもたちが将来への希望をもち、来る社会の担い手となれるよう、今の社会全体で困窮家庭に目を向け、貧困問題の改善に取り組んでいくことが求められます。

■団体について

特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンは、国際組織グッドネーバーズ・インターナショナルの一員として、2004 年に開設されました。「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」を目指し、国内外の子ども支援を行っています。公益性の高い団体である「認定NPO 法人」として東京都から認可を受けています。

https://www.gnjp.org/

■ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」とは

「グッドごはん」とは、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満のひとり親家庭を対象に、食品を無料で配付する事業です。

企業や個人の寄付によって集まった、お米や調味料レトルト食品、お菓子など、約10,000円相当のカゴいっぱいの食品を毎月ひとり親家庭に配付しています。

2024年1月時点で、首都圏、近畿および九州において約50か所に配付拠点を設けています。

https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/

※通常、配付拠点に直接取りに来られる方を対象に食品を配付しています。

生活保護受給中の方は対象外です

配信元企業:特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパン

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