井上との対戦に挑むネリ。このマッチアップは国内ではどう見られているのか。(C)Getty Images、(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 ついに決定した“ビッグマッチ”は、日本国外でも大きな注目を集めている。3月6日に正式発表に至ったボクシング世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)とWBC1位のルイス・ネリメキシコ)によるタイトルマッチだ。

【動画】井上尚弥戦に向けて不安の声も ネリが公開したミット打ちをチェック

 ゴールデンウイーク真っ只中の5月6日に実現した対戦は、まさに歴史的な顔合わせと言える。舞台となる東京ドームで、ボクシングの世界戦が行われるのは、1990年2月11日マイク・タイソンとジェームス・ダグラス(ともに米国)がヘビー級王座戦を繰り広げて以来、34年ぶりの快挙だ。

 東京ドームでの過去2度のボクシング興行はいずれも5万人超の観客を集め、熱狂を生んだ。ゆえに井上のみならず、ネリにとっても声価を高めるうえで貴重な挑戦の場と言える。

 もっとも、下馬評は一方的な見方が強まっている。昨年12月に史上2人目となる2階級での4団体統一を果たした井上が「優位」と見る声は根強いのだ。それはネリの母国識者も明確に示している。

 3月6日に行われた記者会見を受けた記事を執筆したメキシコ人ジャーナリストのオマールペラルタ氏は「パンテーラ(豹の意)ことネリは、ナオヤ・イノウエを日本で倒すという不可能なミッションに挑む」と強調。「負けるためにティファナから行くつもりはない」とした本人のコメントを伝えたうえで、「両者の差を考えても、全てが不利に働き、難しい調整が求められるこの試合は、一見すると無謀とも思える」とシビアな評価を下した。

 また、「ネリは常に不完全なファイターだ。誰もが羨む才能の持ち主だが、自分の才能を台無しにしてしまう行動もしてきたファイターだ」と持論をぶつけたペラルタ氏は、2017年と18年に行われた山中慎介とのタイトルマッチ時に起こしたドーピング判明や体重超過のトラブルも列挙。そのうえで、「彼にはチャンピオンにふさわしい献身的な姿勢が欠けていた」と記し、井上戦への期待を寄せた。

イノウエパウンド・フォー・パウンドで世界最高の位置に君臨する男だ。多くの人が彼をベストだと思っているし、その解釈は非難されるものではない。26勝無敗、23KOという成績は、破壊的でありもはやスペクタクルだ。

 強さと美しさを併せ持つ彼は、母国では観客を魅了し、世界中にその名を知られている。そんな日本の怪物と、ホームヒーローを犠牲にしてでも失態からの再起を図り、生涯最高の試合をしようとするメキシカンの対戦が5月には見られるはずだ」

 対戦発表会見で「ネリに対して圧倒的な差で勝つことができたら、また自分のキャリアの中でステップアップができると思う」と自信を漲らせた井上。そんな怪物に“メキシコの悪童”がいかにして立ち向かうのかは実に興味深いところだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

「全てが不利。一見すると無謀」“悪童”ネリの井上尚弥戦に母国記者もシビアな見解「才能を台無しにしてしまう戦士」