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飲み会の幹事は、やっかいな仕事だ。参加者は食べたい物や店の雰囲気まで勝手な要望をいってくる。みんなを満足させても感謝されることは珍しいし、逆にしくじれば悪口を言われてしまう。

都内在住の40代男性は、頼られたら断れない人情肌の性格。それを周囲に見抜かれているからか、これまでの人生で、数々の飲み会幹事を引き受けてきたそうだ。男性は「無謀な要求がたくさんありました……」と語る。(取材・文:昼間たかし

「明日、60人で飲み会できる店を探してほしい」

男性がここしばらく、幹事を引き受けた飲み会で一番理不尽だと感じたのは、新宿駅周辺で開かれた、とある会合の「打ち上げ」だったという。

「主催者からは『新宿駅周辺で、予算3000円以内で、飲み放題がある店にしてくれ』と言われました」

これだけだと、必ずしも無茶な要求とまでは言えない。多くの店がひしめく新宿だから、そういう店も存在するからだ。

「いやいや、確かにありますけど、それって学生や若者を中心とした、安く酔っ払いたい層の人たちをターゲットにした店ですよね。ところが打ち上げは、参加メンバーが40代以上中心。だったら、もうちょっと価格帯を上げて、それなりの店にしたほうがいい」

確かに、その条件だと、大人向けの落ち着いた店は難しい。ほとんどが安酒で酔っ払った若者が騒ぐような店になるだろう。

「ですよね。だから私もせめて予算を4000円にと提案したんですが、主催者に『4000円もかかったら、みんな打ち上げに参加せずに帰っちゃう』と一蹴されてしまいました」

結局男性は「3000円以内・飲み放題付き」の条件で、ネットで探した適当な店を予約することになった。店の雰囲気は案の定で、ガラの悪そうな若者が大騒ぎしている。料理の方もお察しで、刺し身とも言えないような半分凍った魚の切れ端や、冷凍のフライドポテトなど、気分が上がる要素がどこにもない内容。男性は「どうしようもない2時間でした。参加者たちも盛り上がるどころか意気消沈で、ぎこちない感じになって終わってしまいました」と告白する。こんな状況なのに、参加者の脳裏には「使えない幹事」のイメージが刻まれてしまったのだろうと思うと心が痛む。

ほかに、どんな理不尽な要求があったかと聞いてみると……。

「明日、60人で飲み会できる店を探してほしい」←なぜ前日まで放置していたのだ。

「食べログに載っていない店がいい」←片っ端から食べログで検索して、ヒットしない店を探れと!?

よくもまあ、次から次へと幹事泣かせの案件が出てくるものだ。

そんな男性、リアルタイムでも飲み会幹事を引き受けてしまい、胃の痛い思いをしているそうだ。

「各地から東京に人が集まる会合があるんですが、自分以外の主催者は大阪と埼玉県在住だったので、『東京の店がわからない』と幹事を押しつけられました。今回の条件は、参加者が10人で、『貸し切りがいい』ということでした。10人で貸し切りというのも選択肢があまりないのですが、たまたま馴染みの、こじんまりとした店が対応してくれることになったので、そこにお願いしたんです」

ちょうどいい店が見つかり、ほっとしていた男性。ところが、ここに問題が生じる。

「後から後から『やっぱり参加します』という人が増えてきたんですよ」

10人のはずが、ぽつりぽつりと増えて、参加希望者はついに14人に。男性はおそるおそる店に連絡した。本来なら席数は最大13席。しかし、親切な店主は「14人なら、なんとかしよう」と引き受けてくれたそうだ。ところが、参加希望者は次々と増えていく。

「2、3日後に、16人になった、大丈夫だよね?と、他の幹事から連絡が来ました。いやいや、さすがに大丈夫じゃないですよ!」

いくら席を詰めても、さらにプラス2席は無理そうだ。男性が頭を抱えていたら、この幹事は他人事のように「自分は立ち飲みでも大丈夫なんですよ」などと言ってきたそうだ。

「気を遣ってるつもりなのかもしれませんが、立食するような店でもないし、立ち飲みなんてありえない。快く貸し切りに応じてくれた店主のことを考えたら、いまさらキャンセルしにくいし、いったいどうすれば良いんでしょうか……」

なんとまあ。男性は「もはや、自分が欠席したほうがいいのではないか」と考えているそうだ。

まあ、飲み会幹事なんて引き受けるもんじゃないね。

なぜ人は飲み会幹事に「無茶すぎる要求」をしてしまうのか。