多くの人の心をつかむために、必要なこととは?



睡眠改善ブームの中で登場し、発売1年でシリーズ累計出荷数2億本を突破した「ピルクル ミラクルケア」。大ヒットの理由とは?



 食文化研究家のスギアカツキです。『食は人生を幸せにする』をモットーに、食トレンド、スーパーマーケットスタバ、ダイエットフード、食育などの情報を“食の専門家”として日々発信しています。


 私は日頃から、世の中で売れた食料品に注目し、その理由や人気の秘密を探っています。毎年のようにヒット商品は生まれますが、2023年、特に気になったのが「ピルクル ミラクルケア」。


ヤクルト1000」が大注目された後に現れたライバル商品とも言える存在でしたが、後発にも関わらず“発売1年で2億本”という大ヒットを記録したのです。


 私はその理由がどうしても知りたくなり、メーカーに取材をすることにしました。



日清ヨーク(株)マーケティング部 部長の犬飼 美穂子さん。じつはサプリや健康食品を買っても長く続かない性格。自分自身が続けられるために必要な条件を徹底的に追求したそう



 そこで今回は、日清ヨーク マーケティング部 部長の犬飼美穂子さんにピルクルの魅力や大ヒットの理由、今回の大ヒット商品における開発苦労話などを聞いてきました。


ピルクルは「乳酸菌飲料をごくごく飲みたい!」という夢から生まれた



今年の冬に私が沼った「ピルクル プレミアムクリーミー 白桃」※店舗によっては販売終了



 そもそもピルクルといえば、私にとってはコンビニで売っている「紙パック入りの乳酸菌飲料」のイメージ。


 高校や大学の部活帰りによく飲んでいた記憶がありますが、実は開発者が幼少期に抱いた“夢”をカタチにした飲み物なんだそう。


 乳酸菌飲料ならではのおいしさに感動し、“あの味をもっとたくさんごくごく飲みたい!”という願望、いや夢をかなえた製品なのです。


「たっぷり飲んでも重い飲み心地にならないよう、おいしさにもこだわって製造しています」(以下、犬飼さん)


 2023年にピルクルは誕生30周年を迎え、新たな商品が続々と登場するなど、相変わらず私達をワクワクさせてくれています。


◆“健康機能とおいしさ”を両立したい



腸内環境を改善する特定保健用食品として認められた「ピルクル400」



 長い年月の中で、「ピルクル」は進化してきました。


 腸内環境を改善する特定保健用食品として認められた「ピルクル400」が登場。400という数字は、生きた乳酸菌NY1301株が400億個(65mlあたり)含まれていることから名づけられました。


「仕事終わりやリフレッシュしたい時に、甘さのあるドリンクを飲みたくなりますよね。そんな時、ただおいしいだけの飲料を選ぶよりも腸内環境を改善するという機能性があると、罪悪感が和らいだりしませんか? 健康でありたい、腸内環境を改善したいという人にとって、手軽に無理せず続けられることはとっても重要です。私達が提案する商品はすべて、“能動的においしく飲める喜び”を大切にしています」


◆現代人の疲れを解決するために生まれた「ピルクル ミラクルケア」



大ヒットになった「ピルクル ミラクルケア」



 それでは現在大ヒットになっている「ピルクル ミラクルケア」は何がちがうのでしょうか? その答えは、機能性表示が「ピルクル400」とは違い、「睡眠の質を改善し、日常生活の疲労感を軽減する」という点にあります。


 一見、2022年に流行りはじめた睡眠改善ブームに急いで乗った商品かと思いきや、なんと発売3年前の2019年から着想がはじまっていたそう。


「当時ある調査で『成人の約8割が疲れいる』(※1)、『特に30~40代の疲労改善意識が高い』(※2)というデータがありました。そこで現代人の疲労を解決できるような商品開発をしたいと着想し、研究がはじまりました。私たちは「脳腸相関(※3)」のメカニズムに着目して、腸内環境改善と、疲労感の軽減を目指し、きちんとエビデンスを提示できるように時間をかけてヒト試験を行いました。その流れの中で“睡眠の質”にフォーカスしていったというのが実情です」


※1…「日本の疲労状況2021」(一般社団法人日本リカバリー協会)
※2…「健康ニーズ基本調査2021」(株式会社日本能率協会総合研究所)
※3脳腸相関…脳と腸の状態がお互いに密接に影響を及ぼし合う現象のこと


◆機能性だけでは売れない時代。「安さ」を強調する勇気を出した



「パッケージの色、カロリー、そして価格にもこだわっています」と話す犬飼さん



 そうは言っても今の時代、機能性を掲げる飲料はどの店でもたくさん並んでいます。そこで考えたのが、「価格面での優位性」だったそう。


ピルクルミラクルケアは、続けていただくことが大切と考えています。無理なく継続していただくために1本当たりのカロリーを抑え、スッキリとした味わいにしました。更に継続のために重要なのは、やっぱり『価格」であると考えました。多くの人は、価格が高いと続けるのは難しいと思うのです。しかしながら、弊社としても業界的にも『安さ』をアピールした広告戦略はほとんどありませんでしたから、言い出すためには大きな勇気が必要でした」


 2023年に放送し、錦鯉を起用したユニークなCMでの「睡眠と疲労感をケア。しかも安い!」というフレーズ、心に残っている人は少なくないかもしれません。


 ここで計算をしてみると、私の近所のスーパーで売られている「ピルクル ミラクルケア」は1本あたり47円(税込)。某ライバル商品は140円でした。この圧倒的な安さには正直驚きを隠せませんでした。


 日清ヨーク公式サイトに掲載されている臨床試験の結果によると、4週間で睡眠スコアに有意な差が出ているようです。そこで4週間飲み続けるとして計算すると、1316円になります。


 価格以外にも、1本(65ml)27キロカロリーというヘルシーさを意識したこと。従来は、赤カラーが多かった乳酸菌飲料売り場で、パッケージのカラーを目に留まる高級感のある濃紺にするなど、さまざまな試行錯誤を重ねて誕生したそうです。


 国民の可処分所得が下がっている時代に、機能と共に発信する「しかも安い!」というメッセージは想像以上に心に響くメッセージなのかもしれません。


 もちろんこれらのピルクルシリーズは医薬品ではないため、私達それぞれが適切な選択をすることは重要です。


 とにかく現代人の疲れが癒され、多くの人が安心して眠れる時代になりますように……。


<取材・文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>


【スギアカツキ】食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12



腸内環境を改善する特定保健用食品として認められた「ピルクル400」