電動キックボードやペダル付電動バイクなどの特定小型原付をめぐり、保安基準に適合しない商品を国土交通省が公表しています。現車を実際に買い付けて、実際に乗って検査。不適合品の排除と是正に効果を上げています。

単なるダウングレードではない 特定小型原付だけに求められる走行安定性がある

オンラインショップで出回る電動キックボードなどの特定小型原付を実際に買い付け、試験機関で検査する「市場サーベイランス」を国土交通省が行っています。必要な保安部品を備え基準にあった性能であるかを、実際に調べます。不適合品があれば同省ウェブサイトに掲載。効果を上げています。

電動キックボードの多くは現在、免許不要の「特定原付(特定小型原付)」に分類されます。免許が必要な「一般原付」と比べると、定格出力はどちらも0.6kWですが、最高速度が違います。特定原付は速度21km/h以上のスピードがでないように制御する必要があり、もしスロットルの操作だけで、それ以上のスピードが出る場合は、運転免許が必要な一般原付などとして販売する必要があります。

ある販売メーカーは、輸入品をそのまま販売できるほど簡単ではないと話しますが、特定原付に求められる走行性能は、それだけではありません。保安基準を策定した国土交通省物流・自動車局技術・政策安全課が解説します。

「一般原付は車道しか走ることができませんが、特定原付は自転車道や、特例特定小型の基準を満たした場合には歩道を走ることもあります。そのため歩道と車道などにある段差を想定した走行安定性が求められます」

簡単に言うと、歩道と車道の段差などを想定して、乗り越えた時にも安定して走ることができる性能が要求されます。具体的には5cmの窪みのある傾斜を走行する「窪み・傾斜出口」、2cmの垂直な段差を乗り越える「段差(垂直)」、落差10cmの傾斜を走行する「傾斜」、角の取れた3cmの段差を乗り越える「段差(カーブ)」の試験を、車両設計速度上の最高速度と低速(8km/h)の2つの速度で試します。

車検制度がない車両の保安基準は簡易的で、販売する側の自主対策に任されています。オンライン販売では、その性能を購入者が確かめることも困難です。国土交通省の「市場サーベイランス」は、その隙間に埋もれる不適合品の排除を目的として始まりました。サーベイランスとは“監視”という意味です。前述の担当者は話します。

電動キックボードなどの特定小型原付について、オンラインショップなどの調査から81車種が市場に出ていることがわかっています。その時点で22車種が性能認定を受けていました。我々がサーベイランスの対象としたのは59車種。その中で12車種が保安基準不適合になっています」

基準不適合! その後どうなる?

不適合の原因となっているのは、主に前照灯や尾灯の光量不足や、照度範囲不足です。ほかにも、ウインカー左右の間隔が狭く24cm以上離して取り付ける基準にあっていなかったり、昼間の点滅が識別できないなどの問題がありました。

また、コンパクトに折りたためることを重視するあまり、段差を乗り越えるなどの走行安定性に欠ける車両も1車種ありました。深刻な例としては、ブレーキの制動力不足が1車種で見つかっています

現車確認試験後に保安基準不適合が確定すると、その情報は「不適合車両一覧」という形で掲載されます。2024年3月1日現在で電動キックボード、ペダル付車両など11車種が、国土交通省のウェブサイトに掲載され、事業者や車種名、各社の対応が明らかにされています。

「保安基準不適合の車種は12車種あったのですが、そのうちの1車種は、市場に出回っている車両も含めて、すべて保安基準に適合するように措置されたので、この一覧からは削除しています」(技術・政策安全課)

国土交通省の市場サーベイランスは、基準適合が目的なので、販売元が「性能等確認制度」を利用して適合品として販売するように是正したケースも5車種でありました。保安基準の適合が確認された車種は、その証であるシールを車体に貼ることで外見的にも見分けることができるようになります。

「特にインターネット経由で購入し、公道で走行する場合は、国交省ウェブサイトや性能等確認済みであるかに注意して、保安基準にあった車両を選んでいただくようお願いします」(前同)

国交省はいまだ確認が終わっていない27車種(2024年2月末日現在)についても、年度内の確認済を目指しています。

歩道を走る無届のペダル付電動バイク。こうした極めて危険な違法走行が横行している(中島みなみ撮影)。