股のぞき」で知られる日本三景の一つ「天橋立」(京都府宮津市)で起きた観光客の転落事故を受けて、「のぞき台」の真下にイエローの警戒色を使用した大きな「注意書き」が今年3月から設置された。

事故の原因が悪ふざけだったとみられることだけでなく、海と空のパノラマを味わえる景観が醍醐味だったことから、SNSでは「景観を損なう」「過剰に反応すべきではない」といった声があがっている。

そうした声は、公園の運営会社にも届いているが、「行政や警察に注意されたわけではなく、社内で決めた。二度目の事故は起こすわけにはいかない」と苦悩の末の対策だったという。

一つの事故をきっかけとして、多くの人の「楽しみ」が制限されることをどのように考えれば良いのだろうか。

●「日本三景が台無しだ」怨嗟の声が続々と…

事故は今年2月15日に発生した。「股のぞき」発祥の地とされ、天橋立が一望できる「傘松公園」で、股のぞきをしようとした50代男性が同僚から押されて、のぞき台の約15メートル下まで転落してケガを負った。

公園の運営会社によると、それまで20年ほど転落事故は起きておらず、今回の事故も「レアケース」という。

のぞき台の手すりには以前からA4サイズの注意書きはあったが、事故の2日後にはそれより大きな立て看板を設置した。

さらに、3月から黄色地に「Danger ahead」「この先危険」「立ち入り禁止」など日本語、中国語、英語のメッセージを記載した幕が台の直下に取り付けられた。 真っ黄色の注意書きは、台に乗れば否応なく目に入ってくる。

SNSでその存在が知られると、「日本三景も台無し」「設置される前に見に行った方がよかった」と悲嘆に暮れる意見や、「過剰反応する運営側が間違い」など、運営会社の対応を疑問視する意見もあがった。

●「正直なところやりたくなかった」転落事故現場を覗きこむ人も

運営会社の担当者は3月7日、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「景観を損なうという声は届いています。自然のままで残すことが一番だとわかっているので、正直なところ、やりたくはありませんでした」と悩ましい心境をこぼした。

現在は、批判の矛先のほとんどが事故の当事者に向かっているものの、仮に転落事故が立て続けに起きれば、その批判が会社に向かってくるであろうことも予想される。

展望台へ向かうケーブルカーなどを運行しているだけに、「お客様を運ぶ仕事もしている以上、会社としては安全を考えなければなりません。何もしないわけにもいかず、会社の方針として注意書きを設置しました」と話す。

危険な前兆もすでに感じられているようで、事故が大々的に報じられたこともあって、現場を訪れた観光客が「ここかな」と落下場所を覗きこむことがあるそうだ。

そうした状況を踏まえれば、大きな注意書きも仕方ないことなのかもしれない。

「会社としては、どうしても、また事故が起きてほしくありません」

転落事案の天橋立に"注意の掲示”で「過剰反応すべきでない」、批判受けた運営会社も苦悩「正直やりたくなかった」