名作映画を紹介する上映イベント「TAIWAN MOVIE WEEK」が昨年に開催されたことも記憶に新しく、近年盛り上がりを見せている台湾作品の特集をWEBザテレビジョンでも展開。本記事では台湾BLが世界的に注目されるきっかけとなった「History」シリーズ第1弾のなかの1作「HIStory 離れて、離さないで」をチョイス。本ドラマがいかに萌えを与えるか、3つのポイントに分けて考察する。

「HIStory5 未来のきみと出逢って~Love in the Future」より

■かわいげも併せ持つチャーミングな俺様

本ドラマは「イタズラなKiss〜Miss In Kiss」のデューク・ウーと本作でブレイクしたエディソン・ソン共演で描く台湾ボーイズラブストーリー。大学生のフォンホーのともとに母の再婚相手の息子の数多くの荷物が届く。続いて現れた“息子”は、なんと人気アイドルのチェン・チンだった。親同士の再婚で兄弟として一緒に住むことになった2人だが、チェン・チンはわがままに振る舞い、根が優しいフォンホーは何かと世話を焼いてゆく…というのが物語のあらすじ。

まず萌えポイントの1つめはチェン・チンの俺様なキャラクターだ。壁ドン顎クイ、頭ポン、これらは少女漫画などで人気のシチュエーションだが、共通していることはいったい何か?そう、これらで胸ときめかすのは俺様キャラクターなのである。俺様なキャラクターが主人公の行き場をなくして接近したり、顎をクイッと持ち上げて顔を向き合わせたりすると、そのリードする大胆な姿にドキドキとさせられて心揺さぶられるのだ。ただし、俺様はともすれば自己中心的なキャラクターに見えかねず、やはり受け手側に好意がないとときめきは成立しないものである。

チェン・チンは俺様な姿勢を見せるもののどこかかわいげがあって、フォンホ—がほだされるのもうなづける魅力がある。期待していた仕事がなくなればチェン・チンはしょんぼりとしょげ、その後に1つしかないベッドに自分も寝ると宣言するようすは強引ななかに甘えん坊な顔も見え隠れして憎めない。道を歩いていてフォンホ—の前を自転車が通れば、チェン・チンはグイッと力強く引っ張って抱え込むが、はたと気づいて照れて体を離す。チェン・チンは自信家でグイグイと行動するところにドキッとさせられるが、純粋さがあって好感が持てる。チャーミング俺様だからこそ、胸をキュンとときめかせてくれるのだ。

■手放しで萌えられる“公式妄想”の強み

次に注目して欲しいのはフォンホーの女友だちのモンモンで、彼女はBLファンだ。モンモンはBLファンの視聴者にとっては同じ目線を持つ非常にありがたい存在。BLファンはキャラクター同士についていろいろと妄想をふくらませる人が多く、ラブラブだったりイチャイチャしたり、2人が仲良くしているところを想像するだけで幸せな気分になってくるというもの。ただ、中には勝手にこんな妄想していいだろうか、と若干の後ろめたさを感じる人がいるかもしれない。そこへきて、このモンモンがいれば一切の不安なく視聴者も妄想が楽しめる。なぜならBLファンのモンモンは、フォンホ—とチェン・チンがイチャラブしているところを妄想し、それが劇中でしっかりと映像化されて描かれるのだ。

例えば、フォンホ—から昨夜は普通に寝たと聞くだけで、モンモンはベッドに寝転がっている彼らを妄想。グミを食べさせ合って笑ったり、スマホを見たり、見つめ合ったり、ラブラブな2人のシーンが繰り広げられる。むつみ合う彼らの姿を見るだけで胸がキュンとなるはず。登場人物が劇中で妄想してくれるから、視聴者のほうは公式から供給される妄想シーンを楽しむことができるというわけだ。手放しで堂々と胸キュンシーンを堪能して欲しい。

■さまざまな距離を一足飛びで詰められる“義兄弟”は最強アイテム

最後のポイントはフォンホ—とチェン・チンの関係が義兄弟であること。血が繋がっているわけではないが、義兄弟は家族という絆で結ばれているから親密度は高い。そして、家族だから同じ家に住むという設定も違和感なく必然的だ。ラブストーリーでは出会った2人が距離を詰めていくのがもどかしく焦れったいものだが、義兄弟は一足飛びに心理的にも物理的にも距離が近くなる。2人で一緒に過ごすシーンもたっぷりと見られて、それだけ萌えもたくさん得ることもできる。

フォンホ—は序盤でハネムーンに向かう母から電話を受け、新しい弟と仲良くするように告げられる。そして訪ねてきたのは人気アイドルのチェン・チンだ。かくして、雲の上のような存在の人気スターとひとつ屋根の下の暮らしが始まり、視聴者は彼らの日常を存分に眺めることができるのだ。

小競り合いながら夕食をともにしたり、同じベッドで重なり合って寝たり、観賞魚を並んで眺めたり。弟のチェン・チンがわがままを言って、フォンホ—がお兄さんらしく優しく世話してあげていてキュンとさせられる場面が散りばめられている。義兄弟は萌えをいっぱい速攻チャージできる最強アイテムなのだ。

義兄弟ですぐにゼロ距離になるチェン・チンがかわいく俺様に振る舞い、なんだかんだ言いつつ懐深い兄のフォンホーが面倒を見て、BLファンのモンモンが妄想を供給してくれる。「HIStory 離れて、離さないで」はさまざまな方位からの萌えを素早く与えてくれる、充足感に満ちたボーイズラブストーリーなのだ。

◆構成・文=牧島史佳

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