全国公開中の「映画 マイホームヒーロー」。本作は、累計発行部数370万部を突破し、現在も「週刊ヤングマガジン」にて連載中の同名漫画を原作に、2023年10月クールに放送されたドラマの完結編として劇場公開される。

【写真】クールな表情でこちらを見つめる齋藤飛鳥さん

半グレ犯罪組織の一員と発覚した娘の彼氏から家族を守るため、ごく平凡な父親から殺人犯となってしまった鳥栖哲雄を佐々木蔵之介さんが演じ、ドラマでは毎週ピンチが訪れる展開が話題を呼んだ。ドラマ版で決着がついたと思われた鳥栖家の戦いだったが、本作では再び始まる半グレ犯罪組織との命を懸けた戦いをきっかけに、最大の危機に直面することとなる。

ドラマ版から続投のキャスト多数が登場し期待が高まる本作で、鳥栖家の長女・零花を演じる齋藤飛鳥さんにインタビューを実施。ドラマから7年後を描く本作での役作りや共演者とのエピソードなどを交えて、劇場版への思いを聞いた。

■見どころは映画ならではのスケール感

――齋藤さんはミステリー作品をたくさん読まれているということで、サスペンス要素の強い本作の原作漫画を読んでの感想はいかがでしたか?

齋藤飛鳥】ドラマのオファーをいただいたあとに読んだのですが、純粋におもしろくてサクサク読み進めました。次の展開もすごく気になるし、今まで知らなくて損した!って思うくらい、こんな漫画があったんだ、という印象でした。

――ドラマは第1部で完結しましたが、劇場版の脚本を読んで感じたことを教えてください。

齋藤飛鳥】劇場版の脚本は、ドラマの脚本をもらったあとくらいにいただいて。ドラマでは零花ちゃんが半分くらいしか出てこなかったのですが、映画ではこんなに出てくるんだ、という驚きが最初にありました。それに、あくまで哲雄さんメインのドラマ版とは違って、いろいろな視点が含まれていたので、また違うおもしろさがあると思いました。

――撮影はドラマと同時期だったと思いますが、映画ならではの見どころはどんなところでしょうか。

齋藤飛鳥】スケール感はやっぱりドラマよりもさらに増していますし、アクションシーンも増えています。零花ちゃんのアクションももちろんありましたし、「そんな戦い、実写でどうやってやるの?」みたいなところも、大きいスクリーンならではの表現ができていると思います。そういう部分のインパクトというのがすごく強くて、見どころになっていると思います。

■役作りで意識したのは一貫性のある零花の姿

――ドラマの撮影が終わって、10日くらい空いて劇場版の撮影が始まったということですが、劇場版は7年後という設定です。その7年間について、役作り的なところでどなたかとお話をされたりしましたか?

齋藤飛鳥】時系列とか細かい設定に関しては、木村多江さんがよくお話してくださったイメージがあります。ドラマの顔合わせで本読みをしたときに「この家族ってこうだよね」とか「零花ちゃんのことをこういう風に思っているから、こういうことを言うのよね」みたいなことを、多江さんが結構導いてくださった記憶がなんとなくあって…。具体的には覚えていないですが、その7年間についても少し多江さんとお話したような気がします。

――本読みのときから鳥栖家のお母さんだったんですね。

齋藤飛鳥】そうですね。本読みの日に家族役3人でお話したときに、「この3人なら大丈夫そうだね」みたいな感覚をお互いにもっているような雰囲気があって、それがちょっとうれしかったことを覚えています。お二人ともすごくベテランの方々ですし、そんなお二人に引っ張ってもらうしかないという気持ちだったので、「蔵之介さんと多江さんについていかせてもらえるんだな。頼もしいな」って思いました。

撮影が始まってからも、カメラが回っていないときにいろいろとお話してくださって。乃木坂46から卒業するタイミングだったので、多江さんは「グループではこういうお仕事のとき、どうなの?」って聞いてくださったりとか、蔵之介さんも「アイドルのライブを一回だけ見たことがあるんだよ」とか、お二人ともすごく優しいので、私に寄り添った話題をたくさん振ってくださいました。

――役作りについてもお伺いしたいのですが、7年経っての零花ちゃんの成長や変化については、どのように捉えてどう表現しようとしたのでしょうか?

齋藤飛鳥】ドラマの零花ちゃんと比べて、7年でだいぶたくましくなっているので、見え方としての変化はすごく大きいと思うんですが、思い返すと、零花ちゃんはドラマでもちゃんと心が強かったり、自分や周りを信じる力が強かったり、正義感をしっかり持っているような子だったので、その一貫性と、昔のちょっとボケっとしてた零花ちゃんもちゃんと垣間見えるといいな、みたいなことを思っていました。

――ちなみに、齋藤さんご自身は哲雄くらい距離感が近いお父さんでもアリですか?

齋藤飛鳥】難しいですね(笑)。…100%鬱陶しいとは思わないですけど、必ず一度は鬱陶しいと感じると思います(笑)。でも、そう思われても、めげずに乗り越えてくれるお父さんはすてきだと思います。

――哲雄はもちろん、登場人物それぞれが葛藤を抱えている作品ということで、齋藤さんが最近葛藤した出来事を教えてください。

齋藤飛鳥】普段あまり、葛藤することがないんですよ(笑)。人として大事なことだと思うので葛藤したいんですけど、悩みがあっても、これを選んだらいいんだろうなって解決策がすぐ浮かんじゃう。そうやって最短の距離を取ろうとしちゃうので、なかなか葛藤できなくて。…でも、グループ卒業のタイミングでは葛藤しましたね。みんなになんて伝えようかなとか、コンサートの構成をどういうふうにしようかなとか。自分のことも考えつつ、メンバーのことも考えつつ、ファンの方のことも考えつつ、全部のバランスをとるのがすごく難しかったです。関わる人が多い分、決めかねることが多かったですね。

■「俳優業は100%向いているとは思わない」と語る理由は冷静な感覚

――グループ卒業後もマルチにご活躍されていますが、特に俳優業の魅力についてどう感じているか、最後に教えてください。

齋藤飛鳥】俳優業は100%自分に向いている、とは思わないし、やらなくていいんだったら、やらない方がいいと思ったりもするんですけど…(笑)。と言いつつ、やってみると深みがすごくあるお仕事だなと思います。それこそお芝居って何が正解か不正解かわからないものじゃないですか。そんな正解がない中でこの仕事をずっと突き詰めていらっしゃる蔵之介さんをはじめとする方々が、この作品にすごく真摯に向き合っている姿を一番近くで見られたりして、とても刺激のあるお仕事だと思いました。

ただ楽しい、という気持ちだけではないですけど、やりがいはもちろんすごくあるし、今後もやりたいと声を大にはしないですが(笑)、私にいただける役があるのなら頑張れたらいいなと思っています。

――向いていないと思うのはなぜでしょうか?

齋藤飛鳥】最近少しずつ、他人の人生を演じることのおもしろさもわかってきましたけど、よくよく考えると「それってどういうこと?」って思っちゃうんです。一瞬引いて見てしまうような、そういう冷静な感覚は俳優としてはいらないような気がするんですよね。

――では、本作のオファーがあったときはどういう気持ちだったんですか?

齋藤飛鳥】めちゃくちゃ迷いました!でも、零花ちゃんの場面が多すぎなかったので少し安心したところもあって。原作もおもしろいし、蔵之介さんや皆さんのお芝居を見て勉強ができたらいいな、みたいな気持ちでした。映画では出番がすごく増えていて、「あれ、思ってたのと違うぞ」とはなりましたけど(笑)。

でも、やっぱり作品は抜群におもしろいですし、ドラマから一緒にやってきたメンバーでの映画だからこその深みのようなものがスクリーンを通して伝わったらうれしいので、ぜひたくさんの方に見ていただきたいです。

撮影=大塚秀美

ヘアメイク=秋鹿裕子(W)

スタイリスト=市野沢祐大(TEN10)

取材・文=大谷和美

衣裳協力=ピアス/ロードス(03-6416-1995)、その他スタイリスト私物

(C)2024 映画「マイホームヒーロー」製作委員会

鳥栖家の長女・零花を演じた齋藤飛鳥さん