あまりにも壮大なスケールのために“完全な映像化は不可能”と言われ続けてきたフランク・ハーバートの伝説的SF小説に、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が果敢に挑んだ『DUNE/デューン 砂の惑星(21)では、“砂の惑星”アラキスを舞台にしたアトレイデス家とハルコンネン家の壮絶な戦いが描かれた。ついに公開される待望の続編『デューン 砂の惑星PART2』(3月15日公開)では、全宇宙を巻き込んだ最終決戦の火蓋がついに切って落とされる。そこで本稿では、前作を簡単におさらいしながら、本作をIMAXで観るべき理由を紹介していこう。

【写真を見る】砂漠のディテールからアクション、サンドワームの襲来、そして登場人物たちのドラマまで…すべてが格段にスケールアップ

■現代の巨匠ドゥニ・ヴィルヌーヴが追い続けた夢が、最高のかたちで実現!

「究極の映像体験」という言葉が『デューン 砂の惑星PART2』にはぴったりだ。というのも、「Filmed for IMAX」作品の本作は全編IMAX認証デジタルカメラで撮影され、IMAXシアターでのみ、通常スクリーンと比べ「見える範囲がぐっと広がる映像世界」を体験することができる。壁一面に広がるIMAXのスクリーンいっぱいに映しだされる惑星アラキスの光景は、IMAXの高精細なカメラと投影技術によって、スクリーンを観ているのではなく目の前に実際に広がっているかのよう。

前作も「Filmed For IMAX」作品として一部のシーンの撮影にIMAX認証デジタルカメラが使用されたが、今作ではヴィルヌーヴ監督と撮影監督のグリーグフレイザーは、制作初期の段階から全編でIMAXカメラの撮影に挑むことを決断。それはIMAXというプレミアムラージフォーマットの力を存分に発揮できる作品であると前作が証明したこと、そして観客にこのうえない映画体験を味わってほしいという熱意があったからにほかならない。

「映画の大半が砂漠のシーンなので、高解像度映像と最大の没入感を得るためにすべてをIMAXカメラで撮影することにしました。砂漠を小さなディテールまでとらえ、アラキスの砂漠の上を実際に歩いているような感覚を作りだすために試行錯誤を重ねた」とヴィルヌーヴ監督が語っている通り、映画が始まった途端、観客は一気に砂の惑星に降り立つこととなる。そこから166分、荒涼とした砂漠の上を登場人物たちと一緒に走り続ける。このうえない臨場感とスリルで喉がカラカラになること間違いなしだ。

1965年に出版された原作小説「デューン 砂の惑星」は、「スター・ウォーズ」シリーズや『風の谷のナウシカ』(84)、「アバター」シリーズなどその後制作された様々な映画やアニメに多大な影響を与え、多くの映画監督たちが完璧な映像化を志しては頓挫を繰り返してきた。そんな伝説的SF作品にヴィルヌーヴ監督が魅せられたのは彼が映画学校に通っていた35年以上前。いつか自分の手で完璧なかたちで映画化することを決め、名実共にハリウッドを代表する監督となった後、ようやくそれを実現させた。

コロナ禍のパンデミックの影響によって世界各地で“映画館離れ”が急速に進んでいたなか公開された前作は、全世界34の国と地域で初登場No.1を獲得。全世界興収4億ドルを超えるヒットを記録しただけでなく、第94回アカデミー賞では作品賞など10部門にノミネートされ、技術部門を中心に6部門を受賞。それでもヴィルヌーヴ監督は満足することなく、「まだ旅は終わっていない」と世界観のさらなる拡大と進化を誓い今作に取り掛かった。それだけの熱量をもってヴィルヌーヴ監督が目指した完璧な姿は、IMAXで観てこそ完成するといっても過言ではないだろう。

■“救世主”となったポールに待ち受ける激闘の数々を、IMAXで体感!

ここで一旦、前作『DUNE/デューン 砂の惑星』をおさらいしておこう。“この惑星を制する者が全宇宙を制する”と言われる惑星アラキス(通称デューン)の統治を任されたアトレイデス家の長、レト公爵(オスカーアイザック)。しかし前領主であるハルコンネン家と皇帝の仕掛けた策略に嵌り、レトは命を落とし、アトレイデス家は壊滅状態に陥ってしまう。唯一生き残った後継者のポール(ティモシー・シャラメ)は、母レディジェシカ(レベッカ・ファーガソン)と共に砂漠の民フレメンのもとへと向かう。彼らとの合流を求めるポールは、フレメンの掟に従って決闘に挑み、それに勝利することでフレメンに加わることを許された。

そして今作はその直後から物語が始まる。ポールはフレメンの戦士として訓練を受け、巨大な砂虫(サンドワーム)を乗りこなす術を身につけることで人々からの信頼を得る。フレメンの戦士であるチャニ(ゼンデイヤ)と惹かれ合っていくポールは、やがてフレメンの預言にある“救世主”となることを期待されるのだが…。

その頃、ハルコンネン家はアラキスを完全に掌握するべく、新たな策略を練っていた。それはフレメンを抹殺すること。映画の前半は、このハルコンネン軍vsフレメンの激闘がアクションシーンのハイライトとなる。砂の微粒子の質感まで完璧に確認できるディテール豊かな映像と、体の芯まで伝わってくる爆撃の振動。巨大スクリーンを隅々まで使って繰り広げられる怒涛のアクションシーンに、思わず自分も最前線に立っているかのような臨場感を味わえること請け合いだ。

そして“迫力”という点においてはやはり巨大な砂虫(サンドワーム)の登場シーンが圧倒的。前作では砂漠のなかを彷徨うポールたちの前にその姿を現したサンドワームだが、今作ではフレメンたちの重要な手段としても機能する。「どうすればサンドワームに乗ることができるのか、自ら論理を定義し、技術を作り出さなければならなかった」とヴィルヌーヴ監督が語るように、原作でも描写されているこの“砂虫乗り”は本作の重要なスペクタクルの一つとして特にこだわり抜かれた部分。

砂漠に埋め込まれ、一定のリズムを刻むことでサンドワームを呼び寄せることができるという起震杭(サンパー)。「ズシン、ズシン」と、広大な砂中を突き刺すような振動音は、IMAXの聴くというより全身で感じるような高精度なサウンドと相まって緊張感をより一層高めてくれる。遠方のほうで砂煙が立ち込めたと思うと、あっという間に目の前にサンドワームがその姿を現す。最大で400mはあるというサンドワームの姿を巨大なスクリーンで目撃することこそ、本作をIMAXで体験する醍醐味の一つ。

このサンドワームを、ポールたちはどのように乗りこなすのか。ヴィルヌーヴ監督が「いままで手掛けたなかでも最も複雑なシーンだった」と説明するダイナミックなシーンは、視覚や聴覚、そして全身で余すところなく体感しよう。

■ドラマ性も一気に加速!登場人物の息遣い一つ聞き逃せない

砂の惑星に戻ってこられるなんて夢のようだった」と語るポール役のティモシー・シャラメ。今作ではアトレイデス家の後継者としてだけではなく、フレメンたちを率いる救世主としての新たな運命を背負い、苦悩と葛藤を味わう複雑な心情を見事に表現していく。そしてゼンデイヤ演じるチャニとのラブストーリーという新たな側面も描かれるなど、各登場人物たちを取り巻くドラマ性の高さも前作から格段に進化したポイントだ。

一方、敵対するハルコンネン家では、前作で強敵としてアトレイデス家の前に立ちはだかったラッバーン(デイブ・バウティスタ)が大きな困難に直面。まさか敵役にもここまでの奥行きあるドラマが与えられるとは。さらに前作で戦いの最中に死亡したと思われていたガーニイ(ジョシュ・ブローリン)の再登場。彼の勇姿も見逃せない!

前作のキャラクターたちのドラマもさることながら、今作では新キャラクターも続々登場する。名優クリストファー・ウォーケンが演じる皇帝シャッダム4世と、フローレンス・ピュー演じる皇女イルーラン。ハルコンネン家の後継者としてアラキスに送り込まれるフェイド=ラウサを演じるのは、『エルヴィス』(21)のオースティン・バトラー。エルヴィス役で見せた甘いマスクを封印し、鋭い眼力と冷徹な表情でこの上ない威圧感を放つ。そんなフェイド=ラウサにある目的のために近付く、ベネ・ゲセリットの一員がレア・セドゥ演じるレディ・フェンリング。また、先日行われたプレミア上映で出演が明らかにされたアニャ・テイラー=ジョイがどんな役柄で登場するのかは本編を観てのお楽しみだ。

複雑に絡み合う豪華キャスト陣によるアンサンブルの果てに訪れる最大の見せ場は、やはりフェイド=ラウサとポールの決闘シーン。それまで鳴り響いていた音楽がぱたりと止み、両者の剣が激しくぶつかり合う音や、翻した体が風を切る音。踏み込む足音に、両者の余力を示す息づかいまで全部しっかりと聞かせる演出が、このシーンの緊張感を最大限まで増幅させる。壮大なスケール感や迫力満点なアクションだけでなく、こうした人間の生々しさをダイレクトに届けてくれることこそIMAXの真髄。この究極の決闘に、視界だけでなく心まで奪われてしまうことだろう。

すでに公開されている北米では、初日3日間で前作を倍近く上回るオープニング興収を記録。現地メディアの報道によれば、各地の劇場で本作をIMAXで体験しようとする観客が殺到。座席が圧倒的に不足する事態となっており、多くの劇場で3週間先の上映までチケットが入手困難なほど大反響を巻き起こしているという。日本では3月15日(金)の公開に先駆けて、3月8日から3月10日(日)までの3日間限定でIMAX先行上映が実施。IMAXでいち早く体験できるこのチャンスに、デューンの世界へ没入しよう!

文/久保田 和馬

IMAXの醍醐味が凝縮した『デューン 砂の惑星PART2』の見どころをチェック!/[c]2024 Legendary and Warner Bros. Ent. All Rights Reserved IMAX[r] is a registered trademark of IMAX Corporation.