この記事をまとめると
■大ヒットしていたスバル・レガシィの対抗馬として登場したのが三菱レグナムだった
ブームのど真ん中に三菱が投入したステーションワゴン
いまでは国産ステーションワゴンはスバル・レヴォーグ、トヨタ・カローラツーリング、カローラフィールダーぐらいのもので、希少な存在となっているが、1990年代は国産ワゴンが大人気だった時代だ。1991年に初代ホンダUSアコードワゴン、1992年にトヨタ・カルデイナ(欧州仕様は初代アベンシス)、1993年には2代目スバル・レガシィ、1994年には筆者も2台続けて乗っていた2代目USアコードワゴン、1998年に3代目スバル・レガシイ、日産ステージアなどが登場。
レガシィのスポーツワゴンというキャラクターに対してステージアはプレステージツーリングワゴンというキャラクターで、セダンとは違うラゲッジルームの使い勝手から、アウトドアやロングツーリングに適し、多くのワゴンファンを生んでいた。どちらも最高280馬力を発生した、ハイパワーステーションワゴンという共通点もあった。
そんななか、大ヒット中のレガシィの対抗馬として1996年に登場したのが、三菱のレグナムだった。1996年にフルモデルチェンジを行った、当時のスポーツセダンの代名詞でもあったギャランのステーションワゴン版であり、レグナムとは「王位、王権」の意味を持ち、開発コンセプトはプレステージスポーツワゴン。そのデザイン性、完成度は高く、ギャランとともに1996-1997年日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞している。
ボディサイズは全長4670~4710×全幅1740〜1790×全高1450〜1480mm。ホイールベース2635mm。パワーユニットはなるほどギャランのステーションワゴン版だけあって、その頂点となる6A13型2.5リッターV6ツインターボ(280馬力、37.0kgm)および販売の主力となった4G93型1.8リッター直4DOHCで、量産車として世界初の直噴GDIエンジン(ハイオク指定!)、2リッターV6、2.5リッターV6の4種類を搭載していた。ミッションは4速AT、5速AT、5速MTの3種類が用意されている。
当然ながら、ギャラン譲りのアイテムをふんだんに採用。サスペンションは前後ダブルウイッシュボーン、駆動方式にランサーエボリューション譲りの、エンジンパワーを効率よくタイヤに分配するAYC(アクティブ・ヨー・コントロール=電子制御デファレンシャル。4WDを曲がりやすくしてくれる)を備えたVR-4グレードのフルタイム4WDもあったのである。当時としては日本初のサイドエアバッグも用意されていた。
レグナム独自の装備としては、ラゲッジルームへの荷物に積載を考慮した、重い荷物を積んでも車高が維持されるセルフレベリングサスペンションにも注目が集まった。とくにVR-4グレードは、アクティブなライフスタイルを送るクルマ好きに愛好されたものだった。
アグレッシブすぎたスタイリングが裏目に出た
もちろん、ラゲッジルームの広さ、分厚いカーペット敷きの豪華さもレグナムならではで、逆スラントしたフロントフェイスに代表されるアグレッシブなスタイリッシュさとともに、スポーティかつ当時のレガシィよりワンランク上の車格もあって、上級スポーツワゴンとして日本のみならず、欧州、北米などにも輸出され、一定の人気はあったと記憶する。
1998年にはレグナムの真髄と言えるかも知れないVR-4 type-Sをベースにした特別限定車のスーパーVR-4が登場。専用のエアロパーツを始め、当時のクルマ好きの憧れでもあったMOMOの本革巻ステアリング、レカロシート、そしてラリーアート製マフラーなどを奢っているのが特徴だった。
いま思い出してもなかなかのキャラクター、スペック、VR-4の走行性能を誇ったレグナムだが、1990年代中頃は、たとえば1994年に発売されたホンダ・オデッセイ、1996年に日本中の家族を幸せにしたホンダ・ステップワゴンなどの乗用ミニバンが続々と登場し、時代は一気にミニバンブームへと突入。
その余波を受け、アグレッシブすぎたエクステリアデザイン、1997年から2000年にかけて三菱自動車にはいろいろと問題が発覚したこともあり、販売は低迷。2002年8月に生産を終了。同12月に販売終了。残念ながら、1代限りのモデルとなったのである。
とはいえ、とくにスーパーVR-4は、三菱らしい機能、走行性能満載の、いまやネオクラシックなプレステージスポーツワゴンであったことは確かである。
コメント