大阪・なんばを拠点に活動する「NMB48」。かわいいだけでなくお笑いもこなす親しみやすいアイドルグループとして、メンバーたちはモデル、グラビアアイドル、作家など、あらゆるジャンルの前線で活躍している。

【写真】「北川謙二」山本彩着用衣装。目が覚めるようなカラフルさの中に、大阪魂が満載!

そんなメンバーの個性を彩ってきたのが、オリジナルの衣装たち。この記事では、その多種多様な形や色、制作の裏話をご紹介!NMB48の衣装デザインからスタイリングまでを担当する松永麻里さんにたっぷりとこだわりを語ってもらう。

月替わりで登場する案内人は、TikTokで「NMB48衣装図鑑」と称して衣装の細部や着脱方法を紹介し、2024年1月には衣装展の開催もかなえたれいこちゃん(前田令子)と、将来は“自分のブランドを持つ”という夢を抱き、アパレルブランドとのコラボやメンバーの衣装作りも経験したことがあるかれんたん(原かれん)の2人。一体どんな制作エピソードが飛び出すのか?第16回はかれんたんが案内人。チームNのキャプテンとなり、新たな船出を果たした7期生のまいてぃー(平山真衣)をゲストに迎え、6thシングル「北川謙二」のMV衣装を紹介する。(2023年取材)

■“ザ・大阪”なド派手衣装は曲名に負けないインパクトを誇る

山本彩さんと渡辺美優紀さんがセンターを務めた同曲は、楽曲名からしてインパクト抜群。MVで着用された衣装も、胸元からスカート、髪飾りまで、カラフルなモチーフが散りばめられたほかにはない仕上がりになっている。松永さんも、「かなり振り切って作った」と話す。

「ポップな大阪らしさ全開の衣装にしたくて、『くいだおれ太郎』をイメージしました。ベルト部分やスカート、装飾モチーフ部分などバランスを見ながらオリジナルプリントし、色は2色展開。どちらも色の組み合わせを試行錯誤しました。この衣装が、歴代で一番色の数が多いと思います。スカートはモチーフやカプセルの重さに耐えられるよう、裾にワイヤーを入れ、スカートの内側にはハードチュールを重ねています。ワイヤーを入れないと装飾の重みに耐えられないんですよ。このままハンガーにかけるとかさばるので、持ち上げて収納しています(笑)。胸元のクリア素材の部分は、踊って汗をかくと曇ってしまうので、穴の数を増やしたりしました」

目を引く装飾のなかでも、ポイントは全員の衣装に付けられているというメガネのパーツ。素朴でリアルな学生姿から画面が反転して、ド派手な世界観に変わるMVを表現している。「大きなハートやアメちゃんなどのモチーフは全部手作りで、メンバーごとに全然違う装飾になっています。グリーンのラインストーン青のりをまぶしたたこ焼きの舟皿やアメちゃんを付けました。まーちゅん(小笠原茉由)は蝶ネクタイを頭に着けちゃったりとか、とにかく派手に振り切ってます!」

山本彩さんはギター、渡辺美優紀さんには小悪魔なくまなど、メンバーごとに違うアイテムが閉じ込められたカプセル型の飾りにも注目だ。

さらに、カラフルな網ソックスに星や水玉柄の靴下、柄入りストッキングまで、細かな部分もパンチが効いている。「柄入りストッキングは踊ると破れやすいので、大量に手配しました。足元には衣装に負けないよう、厚底の白スニーカーにレインボーカラーのリボンや装飾を施し、さらに網ソックスでボリュームのバランスを見てスタイリングしました」

たこ焼きヒョウ柄も。大阪を詰め込みつつ当時のトレンドも満載!

ここからは、かれんたん、まいてぃー、松永さんによる対談タイム。

松永「このときは楽曲だけ先にいただいて、そこからイメージを膨らませてデザインしました。サンバっぽい曲だなと思ったのと、秋元先生から『原宿の青文字系アーティストのような衣装で』というテーマをいただいたので、大阪要素を入れた原宿系衣装を目指しました」

原「なるほど!」

平山「ほんまや!」

原「『こういうお靴も流行ってたね』ってお話をさっきしてたんですよ~」

平山「柄入りストッキングやクリア素材とか、当時見ていて『トレンドが詰まってる衣装やな』って思ってました」

松永「11年前なのに、よく見てくれてたね!この衣装は『くいだおれ太郎』を意識したり、アメちゃんやヒョウ柄で大阪を詰め込もうと思って作りました。柄部分の生地はほとんどがオリジナルプリントで、スカートのドット柄の大きさもいろいろと試しました。ドットが小さすぎても派手さに欠けるし、かと言って大き過ぎると小柄なメンバーも多いのでバランスが取りづらくなったり…。何度もサンプル生地を組み合わせてバランスを確認しながら進めました。モチーフも一つひとつ手作りなんですよ」

原「そうだったんですね!アメちゃんの謎が解けました」

松永「どんな髪飾りか覚えてる?」

原「えっと、たこ焼きの…」

松永「そう!青のりをイメージしたラインストーンも付けてます」

平山「えー!私、この衣装着たことなくって。知りませんでした!」

原「頭にたこ焼きって、この発想が出てくるのがすごいです!」

松永「舟皿にのったたこ焼きを大胆に丸々ヘッドアクセにしても、みんな本当にかわいくて!『これはさすがに(お顔が)負けちゃうかな…』と思っても、毎回見事に裏切ってくれる。さすがNMBメンバーだなと思いました!作ってよかったです(笑)」

平山「NMB48の衣装のなかで、一番カラフルで派手なイメージがあります」

松永「作るときも、カラフルすぎて色がわからなくなりそうになりました。そのうえ柄もたくさんあって目がチカチカするので(笑)」

■ギターにリップ…メンバーの個性が入った“未来予想図みたいなカプセル”

原「スカートに付いている、カプセルの中身もメンバーさんによって違うんですよね?」

松永「よく気づいてくれました!メガネはMVで全員が着けているから衣装のカプセルの中にも入れてるんだけど、このカプセルの中身…あ、この話、あかりちゃん(吉田朱里)がYouTubeでも話してくれてますが(笑)、あかりちゃんの衣装は赤リップが入ってるんです」

平山「え〜、このころから⁉すごい、鳥肌立ちました」

松永「まだ美容系のYouTubeやコスメプロデュースの活動は始めてなかったころなんだけど…私の中では『あかりちゃんはこれ!』ってイメージがあったんです(笑)」

原「すごーい!」

平山「メンバーからしたら宝物ですよね」

松永「そういうエピソードもあって、思い入れのある衣装です」

原「私たちやったら何入れてもらえるんやろう?」

平山「うわー、たしかに!気になる」

原「マリさんの未来予想図みたいなカプセルですね」

平山「私たちはこれから、入れてもらったものを目指します(笑)」

松永「(笑)。さやかちゃん(山本彩)はギターでロックだし、1期生って好きなものがはっきりしてたんだなって、改めて思いますね!」

原「私は身長的にアカリンさん(吉田朱里)のお衣装をよく着させてもらうので、周年ライブのときもたしかこのアカリンさんのを着させてもらって。早着替えのときはストッキングがちょっと大変ですけど、破かないようにそーっと履いています(笑)」

松永「ライブでは柄ストッキングなしにしようかなって思ったけど、みんなが『早着替えでも履く』って言ってくれて、感動しました。いっぱい予備の柄ストッキングを用意できてよかったです(笑)」

平山「このストッキングと靴下があってこそ、この衣装って感じがしますしね!」

ここで話題は、スカートに入ったワイヤーの話に。かれんたんいわく、ほかの衣装とは全然着心地が違うそう。

原「パカパカ浮いていて、ちょっと動いただけでも揺れるんです!」

松永「歌番組で着たときは、エレベーターでみんながスカートを上にあげて乗ってくれてました(笑)。スカートのボリュームがありすぎて通常の衣装なら10人乗れるのが、5人でいっぱいいっぱいで…」

原「ライブの舞台裏でも通路を普通に通れなくって、『通して〜!』って言ってました(笑)」

平山「サビで飛んだりするから、このスカートの揺れがめちゃくちゃかわいいなって思ってました。ワイヤーが入ってる衣装ってほかにないですよね?」

松永「ないですね!ワイヤーが出てこないように、毎回メンテナンスが特に欠かせない衣装ですね(笑)」

原「型崩れしないところがすごいですよね。何年経っても着られるし!」

平山「よく見ると、袖の色もパターンがあるんですね」

松永「みるきーのは黄色にピンクのネット、さやかちゃんのはオレンジに緑です。色のバランスも、何度も調整しました。この衣装って、一つ色合いを間違えると気持ち悪くなりそうで…(笑)。当時、衣装にアメちゃんやたこ焼きを夜な夜な装飾したあと、MV撮影に向かっている新幹線の中で楽曲名を初めて聞いて、『き、北川謙二?』って(笑)。夢か現実かよくわからなくなったあのときの衝撃は、今でも鮮明に覚えてますね」

平山「タイトルだけ聞くとめちゃくちゃ渋いですもんね(笑)」

松永「一瞬、わけがわからなくなっちゃいました(笑)」

平山「作曲家さんの名前とかでもなく、タイトルですもん…」

松永「曲のタイトルになった北川さんご本人が、AKBさんのライブに登場したことがあるんですよ。知ってました?」

原・平山「えっ!?」

松永「ライブで『北川謙二』を歌うときに衣装を他グループさんにお貸し出しして、北川さんの分も新しく、サイズを合わせて作りました!」

平山「えっ、めっちゃ見てみたーい!」

松永「そういうおもしろいエピソードもあって、本当にNMBらしい曲だなって思います」

原「知らなかったです~!」

■「ヒョウ柄に助けられて13年」。衣装さんとメンバーの熱いヒョウ柄

平山「照明がなくても、この衣装だけでキラキラ輝ける最強の衣装ですよね!」

松永「11年前の衣装だからまた時代が巡って、これからの衣装はまたこういう…ね?(かれんたんに振る)」

原「“非日常”で(笑)。アイドル感があってめっちゃよくない?」

平山「たしかに!最近だとモノトーンだったりおしゃれな感じの衣装も多いですけど、こういうバーン!と奇抜な衣装もNMBしか着れないなって思うので、新しい時代が来てほしいなと思います」

原「もっと言ってもっと言って(笑)」

平山「新しい公演も始まるし、世界へ向けて!」

原「大阪から世界へ!」

ここで、まいてぃーが“着てみたい”衣装の話に。

平山「『北川謙二』の衣装は加入する前からずっと着てみたいと思っていました。逆にシックな『甘噛み姫』とかもいいですね」

原「着たことないんや?意外!」

平山「そうなんですよ。特に『甘噛み姫』はワンピースのひらひらが回ったときにきれいで、一気に大人なNMBを見せられる衣装だなって思います。一度は着てみたいです」

松永「着こなせそうだよね!」

平山「着こなしてみせます!(笑)」

続いて、“好きな衣装”を質問。

平山「モノトーンはもとから好きなので、『シダレヤナギ』とか。でも、『らしくない』とか『北川謙二』とかのカラフルなのも好きなんですよね~。どの衣装も好きで選べない!」

松永「うれしいこと言ってくれますね~!」

原「まいてぃーはスタイルがいいから、パンツスタイルも似合うしね!」

平山「パンツを当て込んでいただけることも多くて。でも、スカートでもなんでもうれしいです(笑)」

松永「そう、スタイルいいんですよね。パンツスタイルもよく似合います」

平山「うれしいです。加入前からNMBが好きだったので、どの衣装を着ても『うわー!あれやー!』って、未だに感動しちゃいます」

最後に、ゲスト回恒例の、これからの全体衣装に関する希望を聞いてみた。

平山「自分はモノトーンが好きだけど、“大阪から世界へ”というテーマもできましたし、ガッツリヒョウ柄が入ってたりとか、たこ焼き食品サンプルが付いてたりするような飛び抜けた衣装もいいんじゃないかと思います。しっかり大阪の魅力を広められるような衣装を着てみたいっていうのはありますね」

松永「やっぱり、みんなの希望に共通するのはヒョウ柄ですね」

原「『ヒョウ柄をとられちゃダメだ!』って思っています(笑)」

松永「私も、“ヒョウ柄に助けられて13年”だから(笑)。何か迷ったときは入れちゃいます」

平山「ほかにも関西のアイドルってたくさんいらっしゃいますけど、ヒョウ柄はどこにも譲れないです」

松永「ヒョウ柄なんだけど、ちゃんと品がある衣装を作りたくて、13年間そこにはこだわってきています。色のバランスや生地だったり、柄の大きさとか。よく見たらヒョウ柄だったり」

原「隠れヒョウ柄ですね。たまにありますよね!」

平山「ちなみに、マリさん的に一番作るのが大変やったりとか、頭を抱えた衣装ってありますか?」

松永「さやかちゃんの卒業コンサートで『プライオリティー』を披露したときの、さやかちゃんの衣装。いろいろな人が関わった衣装なので、そういう気持ちを全部汲み取って、それまでのレベルじゃないほど精神的にも体力的にも大変でした。でもその分、作ることがなんとか実現できて、NMB48の衣装を担当させてもらえて本当に本当によかったと、心の底から思えた一着です。この話は書籍の『NMB48 衣装図鑑 踊る衣装たち』で詳しく話しているので、まいてぃーも読んでみてね(笑)」

平山「わっ、そうなんですか?楽しみー!」

書籍の話が出そうになったところで、今回はここまで。まいてぃーも普段なかなか聞けない衣装の裏話に、興味深そうに耳を傾けていた。

2023年2月からスタートしたこの連載も、次回で最終回。最後はかれんたんが案内人となり、まだ詳細が明かされていない新チーム衣装を紹介する。

取材・文=上田芽依

撮影=福羅広幸

【松永麻里 プロフィール】

東京生まれ。1995年に大妻女子大学短期大学部家政学科卒業。奇抜な衣装とメイクでパフォーマンスユニットとして活動後、2010年12月よりNMB48の衣装を担当。現在は吉田朱里など、卒業したメンバーのスタイリングも行っている。

かれんたんとまいてぃーが「北川謙二」のMV衣装の秘密に迫る!