「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2023」の合評上映会3月7日に都内劇場で行われ、昨年7月のワークショップに参加した15名の中から選抜された城真也、野田麗未、山本十雄馬、西口洸の4作家が最終課題である短編映画を完成し、披露した。

「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」は、日本映画の振興の一環として文化庁より特定非営利活動法人 映像産業振興機構(VIPO)が委託を受け、2006年度よりスタート。次代を担う長編映画監督の発掘と育成を目指し、プロのスタッフの指導のもと、オリジナル脚本で25分から30分の短編映画を製作。同時に作品発表の場も提供している。

これまで多くの商業映画監督を輩出している本プロジェクト。出身監督では昨年、吉野耕平監督「沈黙の艦隊」、松永大司監督「エゴイスト」、ふくだももこ監督「炎上する君」、草刈勲監督「死体の人」、真田幹也監督「尾かしら付き。」などが劇場公開された。

4作家の作品は脚本指導後、製作実地研修として昨年11月から順次クランクインし、今年1月の仕上げを経て完成した。城監督作品「明るいニュース」は、清掃員の仕事をクビになった男の鬱屈とした思いを緊張感とともに軽やかに描いている。キャストの篠原悠伸、安亜希子、伊藤佳範、宮田佳典と上映後の舞台挨拶に登壇した城監督は「自分の世代的には登り坂を知らずに下り坂。閉塞感のある時代に生きてきた。昨今はその果てに凶行に走るような人もいると思うが、そういう人を、人殺しの星の下に生まれたサイコパスとして、恐ろしい映画をつくるのではなく、自分たちの近くにいるような、ある種共感できるような主人公を描いてみようと思った」などと述べ、関係者に感謝した。

野田監督作品「光はどこにある」は、消化器内科病棟で働く看護師が、心残りな過去と葛藤しながら、末期がん患者やその家族と向き合い乗り越えていこうとする姿を描くもの。主人公の看護師を円井わんが演じ、東龍之介、霧島れいか、鷲尾真知子が共演している。円井、東、霧島と登壇した野田監督は「過去に看護師を経験した時に思い残したことだったり、心に残っているものなど、過去の自分をたくさん詰め込んだ作品。短編(30分)でこのテーマを描くことは難しかったが、自分そのもののような作品を、大好きなキャスト、スタッフと作らせてもらった」などと思いを語った。

山本監督作品「勝手口の少女」は、母親から日常的に虐待を受けていた中学2年生の少年を主人公に、現実と幻想、現在を過去が交錯させながら少女との出会いを描く。キャストの斎藤汰鷹、石田莉子、黒沢あすかと登壇した山本監督は「自分ひとりの力ではどうにもならない、長い時間の流れの中に自分がいて、見えない檻の中にいる感覚。ある意味、過去に決着をつけるという思いがあった。オーディションで出会った2人(斎藤、石田)が脚本を超える解釈をして、感情の揺らぎを表現してくれた」などと述べた。

そして西口監督作品「恋は真っ赤に燃えて」は、アフリカ系アメリカ人と日本人のミックスと、その親友、ヨーロッパ系アメリカ人と日本人のミックス転校生、そしてクラスメイトの少女という高校1年生4人の交錯する思いを独特なタッチで描くコメディ。キャストのトロツキー・マックレンドン、高橋翔、中島瑠菜、田中智也、板尾創路と登壇した西口監督は「映画に関わってくださったすべての方に感謝の思いを込めて。映画に込めた思いは……映画で表現した通り」と挨拶し、本作を思いついた理由については「思いついたのは……こんな世の中だから……という感じですかね。これは僕なりの『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を撮ったつもり」などと終始独特な雰囲気で語った。

左から西ヶ谷寿一スーパーバイザー、城真也、野田麗未、山本十雄馬、西口洸の4監督 (C)2024 VIPO