古代ヨーロッパの謎を解明する鍵が、チェコ共和国で発見された。ヘビがカエルのような生き物を飲み込もうとしている姿を描いた青銅製のベルトバックルが見つかったのだ。
これらは、チェコ第二の都市、ブルノの南東およそ60kmのブレツラフィ村近くで発見されたもので、マサリク大学の考古学者らは、8世紀のものとみている。
このベルトバックルは、これまで未知だった異教カルトの存在を示唆しているという。
ドラゴンまたはヘビとの戦いは、さまざまな文化において、宇宙創造神話の基本的なモチーフのひとつとされている。だが、カエルとヘビの間の相互作用は豊穣信仰の習慣に関連づけることもできる。
中央ヨーロッパではこうしたモチーフの遺物がさまざまな場所で発見されている。さらにその発見場所が分散しており、数百キロ離れた場所でも見つかってることから「中世初期にさまざまな起源をもつ多様な人たちを結びつけていたであろう未知の異教信仰」の存在を指摘する見解がかねてからあるのだ。
ヘビがカエルを飲み込もうとしているモチーフのついたベルトのバックルが、モラヴィア南部、ブレツラフィ近郊で発見されたとき、ユニークな装飾が施された珍しい遺物だと思いました。
しかし、同じモチーフの遺物がドイツ、ハンガリー、ボヘミアからも見つかっていることがわかり、これはキリスト教到来前の中世初期にさまざまな地域の人々を結びつけていた、未知の異教信仰を表している遺物だということに気づきました。
そこで、もっと詳しく調べるための、国際研究チームをたちあげたのです
マサリク大学、考古学・博物館学のジリ・マハーチェク氏は語る。
同様のモチーフはヨーロッパの他の地域からも発見されている。Aラーニ (チェコ)、B ツァンベク (ハンガリー)、C イッフェルスドルフ (ドイツ)、Dノヴィー・ビジョフ(チェコ) / image credit:Machaček et al, Journal of Archaeological Science 2024 (CC BY 4.0)
この遺跡からは、以前に古代ゲルマンのルーン文字が刻まれた動物の肋骨が発見されたことで話題になったことがあった。
ヘビが獲物を飲み込むというテーマは、ゲルマン、アヴァール、スラブの神話に登場し、普遍的に理解される重要な表意文字と言えます。
今日、私たちはその正確な意味については推測することしかできませんが、中世初期には中央ヨーロッパの多様な人たちを精神的な意味で結びつけていたのです
ヨーロッパでは未知の異教信仰があった可能性
今回発見された遺物は、アヴァール人のベルト金具で、7~8世紀に中央ヨーロッパで作られたものだ。
もともとは現在のハンガリー、カルパティア盆地に定住した遊牧民族アヴァール人の衣装の一部だった。彼らのファッションは、スラブ人などの近隣の人々にも採用されることが多かった。
このベルトの金具やほかの似たような遺物を分析するために、X線蛍光分析(EDXRF)、走査型電子顕微鏡(SEM)、鉛同位体分析、および3Dデジタル形態計測など最先端の技術を駆使した。
ウィーン自然史博物館のステファン・アイヘルト氏が分析を行ったところ、これら青銅製の装飾品の大部分は元々厚く金メッキされていて、ロストワックス鋳造法を用いて製造されたことが明らかになった。
専門のソフトウェアを使用した分析により、モチーフをより詳細に把握できた / image credit:Machaček et al, Journal of Archaeological Science 2024 (CC BY 4.0)
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チュービンゲン大学のエルンスト・ペルニッカ氏は、青銅合金に含まれる鉛同位体の化学分析を行って、発見されたすべての金具の原料である銅の共通の供給源を特定した。
アヴァール青銅器の原料の銅は、スロヴァキアの鉱石山脈で採掘されたものだった。
マサリク大学のヴォイテク・ノセク氏による3Dデジタルモデルを基にした形態計測分析でも、金具の一部は同じ工房で作られたか、共通の模型から作られたものであることがうかがえる。
マサリク大学の考古学者たちは『Archaeological Science』誌にこの研究結果を発表した。
追記:(2024/03/09)本文を一部訂正して再送します。
References:MU archaeologists uncover bronze belt buckle linked to unknown pagan cult | News | em.muni.cz / written by konohazuku / edited by / parumo
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