2023年にはNEWS結成・デビュー20周年を迎えた増田貴久。音楽活動に加え、ドラマ、バラエティー番組への出演など、幅広い活躍を見せる増田が、3月12日から開幕するミュージカル「20世紀号に乗って」では主人公のオスカー・ジャフィを演じる。本作は、1930年代初頭のアメリカを舞台に、落ちぶれた舞台演出家兼プロデューサーの主人公が、偶然を装って元恋人の大女優と再会を果たし、彼女を再び自身の舞台に立たせようと画策するコメディー作品。増田に舞台出演への思いや稽古を通して感じていることなどを聞いた。

-本作は増田さんにとって2年半ぶりの舞台主演になりますが、稽古前に準備されたことはありましたか。

 このミュージカルはアメリカで映画化されたものを原作にしているので、その映画を見たり、海外版のミュージカルの音楽を聞いたりしました。(オスカーという役は)昔、何度もミュージカルで大成功して、今は落ちぶれているという人物なので、僕よりもっと年上の設定の役なのかなと感じていましたし、映画を見ると大人なダンディーな俳優さんが演じていらっしゃったので、僕の年代でいいのかな? と思いました。なので、スタッフさんに髪を白に染めたり、ヒゲを生やしたりした方がいいのか聞いたのですが、そういうことではないと(笑)。いろいろとお話をして、今回の公演は、映画と同じものを作るということではないので映画とは違っていいんだと今は考えています。

実際に稽古が始まり、ご自身のこの2年半の成長をどういうところで感じていますか。

 成長ではなく、共演者の方々のすごさを感じています。やはり共演者の皆さんは、自分のビジョンをしっかりと(演出の)クリス(ベイリー)に見せて、それに演出がつけられて役を作っていくという稽古の流れがありますが、僕はあまりビジョンを持っていくタイプではないんですよ。みんなの動きを見て(自分の芝居を)決めるのですが、プロの俳優の方々と一緒にお芝居をしていると自分の手数の少なさを感じます。ミュージカルとしての振る舞いやどう動けば良いのか、位置どりなど、すごいなと思いながら皆さんに付いていっています。

昨年はNEWS20周年を迎え、グループ活動も多かったことから、歌やダンスもすごく良い調子を保っていたのではないかなと思います。稽古を通してそうしたところは感じていますか。

 そうですね。NEWSとしてはそれほど踊ったというわけではないですが、歌もお芝居もたくさんやらせていただいたので、久しぶりの感覚はなく、自然と歌もダンスも入っていけたと思います。自分では調子がいいのかは分からないですが、久しぶりに歌うよりも継続して歌っている方が体が作られているというのはやっぱりあるんですよね。コンサート期間中にレコーディングすると、「体が乗っているね」とスタッフさんから言われることがあるのですが、そういうことなのかなと。今は、“乗り続けて”いると思います。

本作の演出・振付を担当するクリスさんは、振付家としても活躍されている方で、増田さんが出演したミュージカル「ハウ・トゥー・サクシード」でも演出、振付を手掛けました。本作でのダンスも注目したいところですが、稽古でのダンスや歌はいかがですか。

 今のところ(取材当時)は、それほど多くはないですが、稽古に入る前にクリスから「踊れることを知っているからたくさん振り付ける。覚悟していてね」と言われたので(笑)、どの曲でどう踊るんだろうと楽しみにしているところです。「ハウ・トゥー・サクシード」では、これまで感じたことがなかったクリスならではの世界観を感じたので、たくさんダンスを振り付けてもらえたらいいなと思いますし、クリスが考えている世界観に近づけたらと思っています。実は、「ハウ・トゥー・サクシード」のときに、僕のダンス人生でそれまで経験したことがない動きをしたんですよ。足をバレエのように“ポワントする”(つま先まで伸ばす)という動きをしてと言われたのですが、それが難しくて。1番の苦戦ポイントです(笑)。

今回、増田さんが演じるオスカーという役の印象は?

 映画を見たことで映画に引っ張られてしまっていて、どうしたらオスカーらしいのかと悩んでいるのですが、今は一つ一つ、一言ずつ作っていっています。まだ全体としてのオスカー像が作れていないのですが、全てのシーンが自分の中で1本につながるように、今は点をたくさん打って、役を自分の中に入れる前段階です。オスカーは乱暴な言葉やひどいことを言ったりもするし、独占欲が強くて自信があって横暴ではありますが、公平でもあるんですよ。何度も失敗してきたけれども、それでも付いてきてくれる仲間もいて、嫌われているわけでもない。何でそれほど人を引き付けるのだろうと、今は考えている段階です。

そうしたオスカーに共感できるところや、ご自身との共通点はありますか。

 今回、クリスといろいろと話をして、映画よりももっとポップにして、オスカーチャーミングな部分を見つけていこうと思っているので、映画版とはまた違うとは思いますが、自分に自信があって、何度失敗しても立ち上がるというところは似ているかもしれないですね。でも、オスカーのとげがある言葉は、何でそういう言葉になるんだろうと、自分と重ねたり、考えたりしながら作っているという感じです。

クリスさんが増田さんのことを「ユーモアのセンスたっぷりにキャストを引っ張ってくださり、優雅に座長を務めている」と「ハウ・トゥー・サクシード」の時を振り返って絶賛していましたが、座長としてはどのようなことを意識していますか。

 ユーモアというのは、休憩に入るときなどにボケてみたりしているので、そのことだと思います。ですが、通訳さんにはウケてもそれがクリスに伝わったときにはスベっているということが4、5回あったので、今のところは言葉だけが先走っている感じですね(笑)。

実際に座長として何かしていることはありますか。

 僕はいつも現場にお菓子や飲み物が山盛りにあるといいなと思っているので、「座長からです」とドーンと差し入れをしたいタイプなのですが、今回は、稽古場の机の上に戸田(恵子)さんからの差し入れが毎日のように届いています(笑)。おいしいパンが何種類もあったり、日持ちもする焼き菓子だったり、みんなのためののど飴だったり。まだ差し込む余裕がないので、戸田さんにおんぶに抱っこでいこうかなと思っています(笑)。

では、歌手として歌っているときとは違い、ミュージカルで歌うときに心掛けていることはありますか。

 これまで役をいただいて、役として歌うという経験がそれほど多くなかったので、自分がどの立ち位置にいて、どんな内容の歌を歌うのかを考えながら歌っていますが、泣いたと思ったら笑っていると曲の振り幅が大きいので、自分には新鮮です。普段は、「僕の気持ちじゃないけれども、僕が歌っている」のが、ミュージカルでは「僕とは違う人を僕の気持ちで歌う」ので、全く違う表現になるなとは感じています。

舞台で演技をする面白さや魅力はどこに感じていますか。

 お客さまが僕が息を吸う間(ま)までも感じる。同じ空間にいて、同じ時間に違う世界に連れていける。そうしたことを生でその場で感じられるというのはすごくワクワクすることだと思います。観劇に行くと音楽のパワーも感じますが、この作品もすばらしい楽曲ばかりなので、そこに色がついたものをステージから表現できるというのも楽しい時間です。

(取材・文:嶋田真己/写真:小宮山あきの)

 ミュージカル「20世紀号に乗って」は、3月12日~31日に都内・東急シアターオーブ4月5日~10日に大阪・オリックス劇場で上演。


増田貴久(ヘアメーク:坂部めぐみ/スタイリスト:内田あゆみ(Creative GUILD) (C)エンタメOVO