空港連絡特急「成田エクスプレス」の運行区間短縮が続いています。多摩地区の空港アクセスを担っていたはずの中央線の乗り入れも廃止に。どのような背景があるのでしょうか。

JR東日本「空港アクセス列車としての使命が薄れた」

JR東日本は、2024年3月16日ダイヤ改正で、空港連絡特急「成田エクスプレス」の中央線乗り入れを廃止します。運転区間の縮小が続く同列車ですが、どのような背景があるのでしょうか。

3月のダイヤ改正では、早朝・深夜時間帯に成田空港から八王子駅まで直通している列車(2往復)の中央線への乗り入れが中止され、新宿駅始終着に変更となります。

成田エクスプレス」は、首都圏の主要都市と成田空港を乗り換えなしで結ぶことが売りの特急でしたが、2022年3月ダイヤ改正で、大宮駅までの乗り入れが廃止。今回、中央線直通列車も廃止されることになり、運転区間の縮小傾向が続きます。

中央線乗り入れが廃止となる背景について、JR東日本は「最近では環境の変化もあり、中央線内から成田空港への直通需要は極めて限定的で、通勤時の着席利用を目的とした利用者の方が多い傾向があり、空港アクセス列車としての使命が薄れてきています」と話します。

コロナ禍や国際線羽田空港シフトなどが少なからず影響しているものの、「それ以前から成田空港への需要は限定的な状況」だったといいます。

さらに「朝通勤時間帯では、通勤電車をご利用の方から、成田エクスプレスの待ち合わせによって停車時分や到達時分が伸びることに対するご意見も頂いていました」とのこと。

「2024年3月ダイヤ改正では、成田エクスプレス中央線乗り入れ廃止にあわせて同時間帯の快速電車のダイヤを調整し、所要時間を短縮するなどの利便性向上を図ります」(JR東日本)。

だったら列車の「役割を変える」

成田エクスプレス」をめぐっては、昨年から使用車両のE259系の塗色変更が開始されています。この塗色変更では、車体から飛行機のシルエットもなくなり、「空港アクセス」を前面に押し出したデザインから「多様化した利用目的に合わせた都市間輸送特急」となるデザインへ変更されました。

ダイヤ面でも、千葉駅への停車列車が増えるなど、着席利用を取り込む方針が顕著になっています。当初は純粋な空港アクセス特急だった「成田エクスプレス」ですが、役割は変わりつつあるようです。

なお現在、「成田エクスプレス」の乗り入れが終了する立川、八王子といった主要駅では、成田空港行き空港連絡バスの運休も続いており、「成田空港へ乗り換え無しで行ける公共交通機関」が乏しい状態が続くことになります。

成田エクスプレス(画像:写真AC)。