トルコの東アナトリア地方にあるヴァン県とビトリス県にまたがる形で位置するヴァン湖は、琵琶湖の5倍以上の面積を誇る広大な湖だ。水深は西側が最も深く、最大で450メートル。比較的、浅瀬が多い東側でも100メートル前後ある。周囲にそびえる山々からの流水があるものの、古代の火山噴火によって河川が遮断されているため、強アルカリ性で炭酸ナトリウム等が豊富に含まれる塩湖として知られている。

 そんな事情から、この湖には魚類が生きるために必要な水草が少なく、したがって、食料となる魚類も少ない。生息しているのはせいぜい、ニシンの仲間にあたる小魚程度だとされてきた。

 ところがそんな広大な塩水湖で、ジャノ(トルコ語で怪物)と呼ばれる伝説の巨大生物が、映像として撮影された。1997年5月のことである。撮影したのは地元の大学で教授の助手を務める男性で、彼は2年以上もこの湖でジャノの追跡調査を行い、ついに未確認生物の撮影に成功したという。世界のUMA事情を研究するジャーナリストが言う。

「撮影された映像は、茶褐色を帯びた生物が湖面から頭の一部分を出して泳ぐ様子を捉えたものです。男性の証言によれば、生物の体長は15メートルから20メートル。水中で体を上下に揺らしながら、ゆっくりと移動していったといいます。ジャノらしき生物の目撃情報は1990年代になってから徐々に増え始め、地元テレビ局でたびたび特集が組まれるほどでした。そうした中での動く姿の撮影成功に『ついに伝説のジャノが姿を現した』と関係者からは歓喜の声が上がったといいます」

 映像はさっそくイギリスのケンブリッジ大学に回され分析されたが、残念ながらその正体に迫ることはできず。カバやアシカではないか、との見解を得るにとどまった。

「専門家の中には、新生代古第三紀始新世後期(約4000万年~3400万年前)、海に生息していた原始的クジラ類のバシロサウルスか、あるいはゼオグロドンではないのか、という説を唱える人がいました。どちらも現在は絶滅種で、現存している可能性は極めて低い。そして、やはり研究者の前に立ちはだかったのが、塩分を多く含む湖でそもそも巨大生物が生息できるのか、という根本的な疑問でした」

 だが、世界には塩水湖でも普通サイズの魚が生息している事例があり、生物学的には不可能なことではないという。

 その後、この映像をめぐっては、張りぼてを船で引っ張り、巨大生物に見せかけた、との疑惑が浮上。撮影した男性が金銭トラブルで消息不明になったこともあり、映像自体が捏造だったのではないか、とする報道もあった。

 だとすれば、頻繁に目撃されていた未確認生物はいったい何だったのか。現在も「ジャノ伝説」は地元で、謎多きミステリーとして語り継がれている。

ジョン・ドゥ

アサ芸プラス