東名高速で有名な「大和トンネル」の渋滞が対策により解消されましたが、“渋滞ポイントが少し移っただけ”という事実も明らかになっています。その新たなボトルネックにも、対策が施される見込みです。

「大和トンネルを先頭に」がすっかり「綾瀬SIC」先頭に

東名高速の上り線で、長年にわたり大渋滞の原因となっていた「大和トンネル」ですが、ここ数年、NEXCO中日本は「大和トンネルの渋滞はほぼ解消した」と宣伝しています。2021年7月、このトンネル前後で渋滞対策として“付加車線”の運用が開始され、走行可能な車線が3車線から4車線に増えたことによる効果です。

代わってラジオの渋滞情報で聞くようになった渋滞ポイントが、「綾瀬スマートICSIC)付近」という言葉――結局は、渋滞ポイントが“大和トンネルから数キロ西側に移った”ようです。

国土交通省横浜国道事務所で2024年3月4日、関係者が神奈川県内の道路の課題や整備の進捗について話し合う第6回「神奈川県渋滞ボトルネック検討ワーキンググループ」が開催され、東名高速の渋滞状況について、課題が共有されました。

そもそも大和トンネルの付加車線設置も、過去にこのワーキンググループでの結果を踏まえて実施されたものです。大和トンネルを先頭とした渋滞は、上り坂となることによる速度低下が主な原因でしたが、付加車線の設置で交通容量が増加したことにより、トンネル通過時の速度がかなり回復しているのがデータでも明らかになっています。

しかし、その手前の綾瀬スマートIC付近で大きく速度が低下するようになりました。ボトルネックが少し移動し、綾瀬スマートIC付近が新たなボトルネックとして顕在化していることが、NEXCO中日本から報告されています。とはいえ、そこから続く渋滞の長さや詰まり具合は、大和トンネルの付加車線がなかった頃と比べて緩和されています。

綾瀬SIC付近の渋滞の原因もわかっています。SIC入口の合流車線の先で、それまでの付加車線が途切れ、1.3km先でまた現れるという線形になっているため。綾瀬SICのところで車線移動による混雑が発生しているのです。

今回、その1.3kmの途切れた付加車線を“埋める”必要性がNEXCO中日本から報告されました。

そりゃ混むわ! 付加車線の「空白」を埋める

現在の上り線は、海老名JCTの合流部から綾瀬SICまで、付加車線が断続的に続きます。これらは、海老名JCTの合流車線や海老名SAの分岐・合流車線どうしをつないだもので、圏央道新東名の整備に向けてつくられたものです。

その後、2021年に綾瀬スマートICができたほか、前出した大和トンネル前後の付加車線も整備されました。それぞれ別の目的で作られた付加車線どうしの空白区間1.3kmが、ボトルネックになってしまったのです。

NEXCO中日本はこの1.3kmの付加車線整備について、「今後、事業化に向けて具体的な検討や必要な手続き等を進めていく」と話しました。完成の時期は見通せていません。

さらに現在、大和トンネルの東側へ約1.5km、付加車線を延長する工事も進められており、全てつながれば上り線は海老名JCTから横浜町田IC近くまでほぼ4車線化する見込みです。

とはいえ、大和トンネル東側の付加車線の延長部から横浜町田ICの分岐車線まで、やはり“付加車線の空白部”ができてしまい、ここが新たな渋滞ポイントになる可能性もあります。このためか、NEXCO中日本は「大和TN(トンネル)東側の工事中区間および当該区間の運用開始後の交通状況等に応じ、追加対策も検討」としています。

一方、大和トンネルは下り線にも付加車線も整備されましたが、下り線の渋滞については「(大和トンネル)西側区間の対策前後で渋滞回数・ボトルネック位置に大きな差はみられない」とのことで、相変わらず速度低下が続いています。

下り線でも現在、この付加車線をトンネル東側へ約2.7km延長する工事も進められています。ちょうど、トンネル手前で上り坂になる箇所をカバーするため、この整備後の効果にも注目です。

東名上り線、大和トンネル手前で事故により渋滞している様子。最も左側の付加車線はスムーズだ(NEXCO中日本東京支社のライブカメラ映像より)。