モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。3月6日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「『Figure AI(フィギュアAI)』から考える、人型ロボットの可能性」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。


吉田明世、塚越健司さん、ユージ



二足歩行ロボットを開発する「フィギュアAI」社とは?

AI人工知能)を活用した人型ロボットを開発しているアメリカの新興企業「Figure AI(フィギュアAI)」は2月29日(※現地時間)、チャット生成AI「ChatGPTチャットGPT)」などを開発した「OpenAI(オープンAI)」や、アメリカの半導体大手「NVIDIA(エヌビディア)」などから総額6億7,500万ドル(日本円で約1,000億円)の出資を受けたと発表しました。

吉田:「フィギュアAI」は、どういった会社でしょうか?

塚越:フィギュアAIは2022年にカリフォルニア州で創業した、人型ロボットを開発する「ロボティクス企業」です。この企業が注目されているのは、開発しているエンジニアが、もともと二足歩行ロボットを開発している「Boston Dynamicsボストン・ダイナミクス)」や、イーロン・マスクが共同創業者兼CEOをつとめる電気自動車(EV)に特化した新興自動車メーカー「Teslaテスラ)」の出身者という点です。

ボストン・ダイナミクスは、数年前から人型ロボットや、犬型ロボットで注目されていた企業でした。またテスラも、電気自動車だけでなく、人型ロボット「オプティマス」を開発しています。そういうところで働いた経験を持つ人が所属する会社なので、注目されています。

人型ロボットは人手不足対策などでも注目されています。今回の資金調達では、MicrosoftやAmazon創業者のジェフ・ベゾスの投資会社、さらに半導体大手のエヌビディアなどからも出資を受けました。

少し話がそれるのですが、このエヌビディアは昨今絶好調で、去年11月〜今年1月期の決算では、純利益が前年同期比8倍を超えた122億8,500万ドル(日本円で約1兆8,400億円)と、とんでもない企業です。

生成AIなどに使われる画像処理半導体(GPU)の需要が拡大しているということもあります。10年前は、時価総額のランキングで世界1,000位にも入っていなかったのに、今年2月末時点で(Microsoft、Appleに続き)世界第3位にまで浮上しているので、「エヌビディア」という企業の名前は、ちょっと覚えておきましょう。

ユージ:(米国の巨大IT企業の総称)「GAFA(ガーファ)」(※Google、Apple、Facebook(現Meta)、Amazon)に代わるIT企業群を指す言葉として「MATANA(マタナ)」(※Microsoft、Apple、TeslaAlphabetNVIDIA、Amazon)というものがありますが、そのなかにもエヌビディアの頭文字「N」が入っていますよね。

塚越:そうですね。注目してみてください。

◆自ら学習する人型ロボット

吉田:この「フィギュアAI」という会社、どんなロボットを開発しているのですか?

塚越:「フィギュアAI」は今年1月に、人型ロボットが動く様子をYouTubeで公開しました。



人間がロボットに「コーヒーを1杯つくって」と頼むと、ロボットがコーヒーマシンに(豆の入った)カプセルを入れて、ボタンを押してコーヒーをつくる過程を撮影した動画です。一見、大したことをしているようには思えないのですが、実はすごいことです。

ユージ:どこが、すごいのでしょうか?

塚越:一言で言えば「ロボットが学習する」ということです。今回は、コーヒーマシンでコーヒーを入れるために、10時間の動画を見せて学習させています。ただ、公開された動画の前の段階では、カプセルがうまくセットできないなど、何度も作業を間違えています。

そうした失敗の経験を元にロボットが作業を修正して、コーヒーを作れるようになっているのです。つまり、人間と同じように「学習」しているのです。失敗から学習し、ロボットが人間の指示なく自らミスを改善できます。現状では、あらゆることができる「汎用AI」ではなく、限定的な範囲の学習ですが、身体的な動きを学習できるのは、実はとてもすごいことです。

吉田:指示なく学習して改善するというのがすごいですね。

高齢化が進む日本では「介護ロボット」に期待

ユージ:「人型ロボット」については、どんな可能性があると思いますか?

塚越:人型ロボットというと、日本では2000年に「Hondaホンダ)」が二足歩行ロボットASIMOアシモ)」を発表しました。ロボットが二足でバランスをとって動くのは非常に難しいのですが、実は先ほど話した人型ロボットなども含め、最近ではロボットが走ったり、物を持ち上げたりと、かなり高度な作業や動きができるようになってきています。

フィギュアAIは公式Webサイトで、「アメリカでは倉庫業務や運輸業などの雇用不足が生じており、それらをロボットで穴埋めしたい」と述べています。人間の雇用が失われるという懸念もありますが、現実的に働き手が不足しているので、やはり(労働市場へのロボット投入は)重要だろうと言われています。

少し先になると思いますが、個人的には「介護ロボット」が重要だと思います。生成AIが搭載され、その人に合わせて会話しながらお風呂の介助をしたり、ベッドに運んだりできるようになるとすごいなと思います。

こういった分野は、近年では「ジェロテクノロジー」と言われています。「老年学」を意味する「ジェロントロジー(Gerontology)」と、「テクノロジー(Technology)」をかけ合わせた造語「ジェロテクノロジー」は、要するに高齢者を支えるためのテクノロジーです。

日本では、世界的にみても超高齢化社会で、他の国よりも(高齢化が)早く進んでいます。これが問題だと言われていますが、逆に言うと、高齢者の介護やいわゆるジェロテクノロジー分野が、日本市場でもっと積極的に拡大するであろうということでもあります。技術開発のしどころがあるということです。

日本では、ドラえもん鉄腕アトムなど、ロボットと人間が仲良くなるフィクション作品が好まれていますし、ロボットが好きだと思います。技術的にはまだまだ難しいところがたくさんありますが、ジェロテクノロジーを考えてみると日本企業はまだまだ参入できると思うので、期待したいと思います。

----------------------------------------------------
3月6日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年3月14日(木) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

----------------------------------------------------

<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/
自ら“失敗”を学習できる「人型ロボット」を開発! アメリカの新興企業「フィギュアAI」とは? 専門家が解説