2024年春のダイヤ改正で、富士山のアクセスを担うJR中央線富士急行線では、増便をはじめ輸送形態の変更が行われます。背景にあるのがインバウンドの急速な回復。1往復増発される東京直通特急は、かなり人気のようです。

大好評の「富士回遊」も増発

2024年3月16日(土)、JRをはじめ多くの鉄道事業者でダイヤ改正が行われます。昨今の人手不足や人口減を反映し減便となる改正も多いなか、積極的な増便などが行れるのが「富士山」へ通じるルート、すなわちJR中央線富士急行線(大月ー富士山・河口湖)です。

中央線富士急行線を直通する特急「富士回遊」は1往復増発され、毎日4往復の運転に。このほか富士急行線では特急(平日1往復)、普通列車(平日1往復、土休日2往復)の増発です。

さらに、これまで日中・夕方に3往復しかなかった中央線E233系10両編成による「大月直通」が、一気に5往復増の8往復となり、「富士回遊」が運転されない時間帯も補う形となります。

背景にあるのが、富士山エリアにおけるコロナ禍後の急速なインバウンド需要の回復です。2019年から運転を開始した初の“東京方面~富士山直通特急”である「富士回遊」は、途中の細々とした乗り継ぎもないことから好評のようです。

富士回遊」は3両編成で、一部の特急「あずさかいじ」に併結で運転されます。2月のある土曜、併結列車の下り「かいじ」4号車に乗ると空席もある一方で、1ー3号車の「富士回遊」は、途中で「1ー3号車、乗車率150%」という業務用の車内放送が流れたほど。車両の切り離しが行われる大月駅に近づくと、「かいじ」車両に乗っていた外国人乗客が次々と「富士回遊」のほうに流れ込んできました。車内検札をしながら、1-3号車へ「GO!GO!」と促す車掌も手慣れたもので。

ここまでの需要がありながら、富士急行線の乗り入れ両数の限界もあり、「富士回遊」は3両で直通せざるを得ない状況。このため普通列車などへの分散も促されています。

桜のシーズンは富士急行線でさらに増発も。富士急行線の下吉田駅から徒歩15分の「新倉山浅間公園」は、春には桜と五重塔(戦没者の慰霊塔)越しに富士山を望む“日本らしい”風景を見られることから外国人に人気で、今年はシーズン中は河口湖ー下吉田間で臨時列車「桜満喫号」が6往復(土休日5往復)も運行されます。

そして夏の登山シーズン。2023年夏の富士登山者数(7ー9月)はコロナ前に匹敵する約22万1000人。うち最も多い約13万7000人が、4つある登山口のなかで山梨県側の「吉田ルート」からきており、鉄道がそれを支えています。登山者のさらなる増加が考えられる一方、吉田ルートでは2024年から、登山者数が1日4000人を超える場合や夜間の登山規制なども行われます。

富士急行線を走るJR直通特急「富士回遊」(画像:富士山麓電気鉄道)。