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 愛犬と共に暮らす時間はあまりにも短い。特に大型犬となればなおさらだ。できることなら健康寿命を伸ばしたいというのが飼い主の願いだろう。

 アメリカイェール大学が開発した犬用のがんワクチンは、既存の人間用がん治療薬を改良したものだ。

 8年間で300匹の犬に協力してもらい、臨床試験を続けたところ、骨肉腫なら従来の治療法に比べて1年後の生存率がほぼ2倍にもなることが確認された。

【画像】 犬の健康寿命を伸ばしたい。犬の治療用ワクチンの開発

 人間と同じように、犬もがんを患う。だが、がんと戦う手段がどんどん増えている人間に対して、犬の場合あまり選択肢がない。

 放射線療法や化学療法もあるが、その効果はまちまちで、飼い主にかかる医療費の負担だってかなり重い。だから治る見込みのある犬でも、泣く泣く諦めざるを得ないことも多い。

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人間のがんワクチンを改良し弱点を克服

 そんな状況を改善しようと、イェール大学の研究チームはすでにある人間のがんワクチンを改良し、犬にも効くようにした。

 なおこのワクチンはペプチドワクチンで、予防でなく治療目的で接種するものだ。

 その治療法とは、「モノクローナル抗体」を利用したものだ。

 私たちの体はウイルスやがん細胞のような異物を見つけると、「抗体」という誘導ミサイルのようなタンパク質を作り出す。

 抗体は、異物が持つ標的(抗原)にくっつくようにできている。だから免疫系は、異物にくっついた抗体を目印に、体に悪さをする邪魔者を攻撃することができる。

 “モノ”クローナル抗体とは、たった1種類の標的にくっつく抗体のことだ。

 ほとんどのがんには、健康な細胞にはない標的がある。モノクロナール抗体は、それにだけくっつくように作られている。だから、これを使うことで、健康な細胞を攻撃することなく、がん細胞だけを狙い撃ちすることができる。

 たとえば、大腸がんや乳がんなどでは、2つのタンパク質(「EGFR」と「HER2」)が過剰に現れるが、イェール大学の研究チームが応用したモノクロナール抗体はこのタンパク質だけに結合する。

 だが弱点がないわけではない。従来のものは、使い続けるうちに患者の体に耐性ができ、だんだんと効かなくなってしまう。

 それを克服するため開発されたのが、2021年に『Translational Oncology』で発表された「ポリクローナル抗体」だ。

[もっと知りたい!→]15年の歳月を経て犬用のがんワクチンが開発される

 これは”ポリ”という名称が示すように、EGFR・HER2の複数の部分にくっつくことができる。そのため効果が弱まりにくい。

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骨肉腫の犬の生存率が約2倍になったことを確認

 過去8年間でマウスや300匹の犬を対象に行われた臨床試験では、ポリクローナル抗体ががん細胞に結合すると、それを成長させる経路を混乱させることが確認されている。

 これをがんを患った犬に使用すると、がんによっては12ヵ月間の生存率がほぼ2倍にもなったという。

 たとえば骨肉腫の場合、従来の治療法では診断から1年後にも犬が生きている確率が35%だったのに対し、ポリクローナル抗体では60%だった。

 その生き証人とも言えるのが、11歳のゴールデンレトリバー「ハンターくん」だ。

 救助犬として活躍していたハンターくんは、2022年左前足に骨肉腫があることが発覚し、残念ながら足は切断することになった。

 だが、化学療法と今回のがんワクチンを使用した甲斐もあり、発見から2年経った今も元気に暮らしている。以下の動画でハンター君の姿を確認できる。

 研究チームは今後、このがんワクチンが健康な犬用の予防薬として使えるのかどうか調べる予定であるとのこと。

 この薬を使ったからと言って、犬の寿命が2倍にもなるわけはないが、それでも、元気で一緒にいられる時間が少し長くなるのなら、飼い主さんにとってこんなに嬉しいことはないだろう。

 なお、今回のもの以外にもオランダで、犬用のがんワクチンは開発されている。大切な愛犬と一緒にいられる時間が長くなるのなら、飼い主さんにとってこんなに嬉しいことはないだろう。

References:Novel cancer vaccine offers new hope for dogs — and those who love them | YaleNews / Cancer vaccine for dogs almost doubles survival rates in clinical trial / written by hiroching / edited by / parumo

 
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犬用のがんワクチン、臨床試験の結果生存率がほぼ2倍になったことを確認