昨年グループ結成20周年を迎え東京ドーム公演を成功させるなど、さらなる飛躍を続けるNEWS・増田貴久。ドラマ、舞台、バラエティーと個人活動も精力的な中、この春ブロードウェイ・ミュージカル『20世紀号に乗って』に挑む。約2年半ぶりの舞台主演を前にした増田に作品への思いや稽古場でのエピソードを聞いた。

【写真】1930年代の衣装も華麗に着こなす! ミュージカル『20世紀号に乗って』メインビジュアル

◆演出家クリス・ベイリーと3度目のタッグで強い信頼関係

 原作は、1932年チャールズ・ブルース・ミルホランドが書き下ろした戯曲で、1934年にはアメリカで映画化。その後、原作と映画をもとに1978年にブロードウェイでミュージカル化された。トニー賞5部門を制覇し、2015年には初演以来40年ぶりにリバイバル上演、トニー賞のリバイバル作品賞にノミネートされるなど、ブロードウェイ・コメディーミュージカルの金字塔ともいえる名作だ。

 世界恐慌を脱出した1930年代初頭のアメリカを舞台に、やり手のブロードウェイの花形プロデューサー兼演出家だったが現在は多額の借金を抱える主人公が、自身が大女優に育て上げた元恋人を再び自分が手掛ける舞台に立たせようと悪戦苦闘する姿を描く。

 演出を務めるクリス・ベイリーとは、2020年、2021年と上演され好評を博したミュージカル『ハウ・トゥ・サクシード』以来、3度目のタッグとなる増田。本作の上演発表の際にはクリスから増田へ絶賛のコメントが寄せられていたが、「(オンラインで打ち合わせをした際に)『まっすーは踊れることを知っているから、たくさん振りを付けるので覚悟しといてね!』と言われていたので、ビビッてました」と笑う。

 「クリスと(演出補の)ベス(・クランドール)が思い描く世界観は、『えー! そういうふうになるんだ!』みたいな感じで、衣装もそうだし、ダンスもセットも照明も、ちょっと変わるだけですごく捉え方が変わるんです。今まで感じたことのないクリスの世界観は、『ハウ・トゥ・サクシード』の時にも感じたので、たくさんダンスをつけてほしいし、クリスの思い描く世界観に近づけたらなと思っています。作品の時代背景やキャラクターについて、何を聞いても正解の答えを出してくれるという安心感はすごいですね」と、強い信頼関係で結ばれている様子だ。

◆クセのある主人公も「ただ嫌われているだけの人じゃない」

 今回演じるオスカー・ジャフィは、派手好きで野心家、独占欲と嫉妬も強いというなかなかクセのあるキャラクターだ。「役作りのために、元となる映画を観たのですが、オスカー役を結構大人のダンディな俳優さんがやられていて。『え? この役なの? 俺で大丈夫ですか?』と思って、スタッフさんに『髪の毛、白と黒とかに染めて、髭とかを生やしますか?』と聞いたりもした」そう。「稽古の最初の頃は映画のオスカーに引っ張られる部分もあり、僕が演じるオスカーはどうしたらいいんだろうと悩んだこともありましたが、クリスともいろいろ話し、コメディミュージカルだし、もっと若く、もっとポップでチャーミングな部分があったりするキャラクターにしようということになりました」と語る。

 オスカー役に向き合う段階では、「乱暴な言葉やひどいことも言ったりするんですけど、どこまで本心で言ってるのか、怒ってるから出ちゃっただけの言葉なのか…。独占欲も強くて自信があって、横柄な感じではあるんですけど、素晴らしい作品を作ってきたり、何度も失敗してきたけど仲間がずっとついてきてくれていたりするので、嫌われているわけではない。本当に変な人ってだけじゃないというか…。オスカーはこんな人だけど、嫌われていないっていうのはなんでなんだろうとゆっくり考えた」という。「自分に自信があって、何度失敗しても立ち上がってきたみたいなところは自分と一緒かもしれないですね。オスカーのトゲがあるような言葉で言うようなセリフも、共感できないなとは思わないですし。自分だったらどんな言葉になるだろう?と自分を重ねながら役作りに努めました」。

 オスカーは舞台演出家兼プロデューサーという役どころ。増田の周囲には参考になりそうな存在は多そうだ。「周りにいるプロデューサーさんの“プロデューサーとしてのお仕事”って詳しくはわからないですけど、身近にたくさんいらっしゃいますしお話する機会も多いので、“プロデューサーさん像”というのが僕の中にすでにあるのはよかったなと思います」と語る。「でも、この『20世紀号に乗って』のプロデューサーさんは、たぶん参考になるタイプの人じゃないんです。優しくて穏やかな、ダンディな大人の方なので、オスカーとは全然違うんですよ」とニヤリ。「ご本人は、僕の役作りのために、稽古場での挨拶とかで、いろいろ作品にかぶせてお話してくれるんですけど、1ミリも参考にしないかなと思ってます(笑)」。

◆和気あいあいとした稽古場 発覚した小野田龍之介との共通点とは?


 共演には珠城りょう、小野田龍之介、上川一哉、渡辺大輔戸田恵子と、キャリア豊富な実力派が顔をそろえる。「龍ちゃん(小野田)は、初めて会った日に、稽古場でいろんな話をしている中で、『じゃ、今日呑みに行きます?』みたいに誘ってくれたり。(珠城)りょうちゃんと龍ちゃんと僕の3人で話している時も、龍ちゃんが一番大人の意見なんですけど、あとで年の話になったらめちゃくちゃ若くてびっくりしました」と語るなど、和気あいあいとした稽古場の雰囲気がうかがえる。「稽古場の龍ちゃんの席は、すごく整理整頓されていて。必要なものがすべて箱の中にきれいに置いてあるんですが、足元に(服についたホコリやゴミなどを取る)コロコロが置いてあったんです。それを見たみんなが、「…そういうタイプ?」「ちょっと気難しそう…」みたいなことを言ってた時に、僕もバッグの中にコロコロが入っていて(笑)。稽古場にコロコロを持ってきているキャストが2人いるのはヤバい現場かもしれないと、周りからちょっと引かれました。しかも2人ともキレイ好きというわけじゃないんです」と楽しそう。

 座長としての意気込みを尋ねると、「僕は、“まずは胃袋から”じゃないですけど、いつも現場にお菓子や飲み物、軽食だったりが山盛りあるといいなと思っているタイプなんです」と明かし、「でも、今回の稽古場は毎日のように『戸田さんからパンをいただきました』『戸田さんから〇〇をいただきました』と、戸田さんからの差し入れが毎日のようにあるんです。パンも、美味しいパンばかりで、しかも日持ちのするものだったり、いろいろな種類を差し入れしてくださって…パンパンマンです」と感謝(?)。増田のユーモアは、クリス相手にも炸裂しているようで、「僕は果敢にボケに行ってるんですけど、通訳さんだけ笑ってて、クリスは『あぁぁ』って時差でスベるっていうのを何度も経験しています。グローバルにスベってますね」。

 『Only You ~ぼくらのROMEOJULIET』(2018年)、『ハウ・トゥ・サクシード』と抜群の歌唱力と表情豊かなダンスで、ミュージカルでも確かな評価を集める増田。さまざまなジャンルでその才能を開花させているが、舞台・ミュージカルの魅力はどんなところに感じているのだろう?「お客様が生でその瞬間、僕らが息を吸う間みたいなものまでも感じることができて、皆さんを同じ時間に違う世界に連れていくことができる。生でその場で行われているっていうのはすごくワクワクする」と打ち明ける。「僕も音のパワーや音楽の力みたいなものをすごく感じるし、『20世紀号に乗って』のナンバーはすごく素晴らしい楽曲なので、そこに色がバーッとついたものをステージから表現できるというのはすごい時間だなと思います。僕はミュージカルの経験は浅いですが、すごく楽しい時間なんです」。

 周囲を明るく照らし、観る者の心を温かく楽しく躍らせる歌声、ダンス、芝居という増田の魅力がたっぷり詰まった本作も、また話題を集めることは間違いなさそうだ。(取材・文:編集部 写真:上野留加)

 ミュージカル『20世紀号に乗って』は、東京・東急シアターオーブにて3月12日~31日、大阪・オリックス劇場にて4月5日~10日上演。

NEWS・増田貴久  クランクイン! 写真:上野留加