成績を上げることよりも大切なことは?



小学生の頃の私。得意だったのは、勉強ではなく一輪車でした



 こんにちは、食文化研究家のスギアカツキです。『食は人生を幸せにする』をモットーに、「一生モノの能力を養う食育」についてさまざまな実践法を提案しています。


 新学期を前に、塾などの習い事選びに悩んでいるママやパパはいらっしゃいませんか? 現状を少しでも改善しようと願っても、自分の子どもが思うように成績が上がらない、途中でつまずいてしまって続かないなど、悩みはつきませんよね。


 そうです、親が期待する通りにうまくいくことなんて、なかなかありません。


 結論から言いますと、どこの塾に通うか? 成績を上げるために何をすべき? という問題は“外殻のコト”。それよりも日常生活での変化の方が力を持つことがあります。


 そこで私は、今日から誰でもすぐに実践できる“食の観点”から、有効な工夫法をご紹介できればと考えました。具体的には、「塾や習い事前のおやつのあたえ方」に焦点を当ててみましょう。私自身の幼少時代のエピソードをふまえながら、小学生の我が子にも実践している心得を3つに整理してお届けしたいと思います。


◆子どもがつまずいたとき、食べ物は言葉よりも力になることがある
 栄養学的に考えた場合、子どもの成長に効果的な食べ物は多く存在し、さまざまな研究データが日々アップデートされています。特にスポーツにおいては身体作りに直結する大事なテーマ。正しい情報を得て実践サポートすることは有意義でしょう。


 しかしながら、もう少し力を抜いて考えてみたとき、「〇〇を食べたから成績が上がる、能力があがる」ということばかりに注力してしまうことで、子どもの心を置き去りにしてしまう可能性があります。


 世間の情報も大事ではありますが、目の前にいる我が子の個性をしっかり理解してあげられているか、今一度確認してみるのも無駄な時間にはなりません。


 食べものは時として、「がんばって」という言葉以上にパワーを与えてくれることがあり、ここではあえて「一度力を抜いて、食べ物でリフレッシュしませんか?」という意味を込めてご提案をさせていただきたいのです。


 それでは具体的に、幼少期の私が力を最大限発揮するために、親が実践してくれたこと。そして私が親になって小学生の子どもに喜ばれているおやつについてエピソードとともに紹介していきたいと思います。


◆①好きな食べ物、ワクワクする食べ物を用意しておく
→成績を上げるより、安心感や自信を持たせることを意識してみる



カップラーメンカップ焼きそばが大好物だった私。母は私の好きなテイストを理解して、用意しておいてくれました



 まずは、いろいろなことを考える前に、子どもの好きな食べ物を与えてみてください。「私の大好物を用意しておいてくれたからがんばろう!」というモチベーションにつながればよいですが、そう簡単には行きません。


 まずは、子どもの好み(感性)を大切にしてあげることで、日常生活において安心感や自信につながれば大成功。好きな食べ物を食べることは、楽しく生きる力につながります。


 私の場合はカップラーメンやカップやきそばが大好物だったので、母はおいしそうな商品を見つけて用意しておいてくれました。これらは習い事前の定番おやつとして、真っ先に思い浮かぶ存在です。



小学校高学年から中学生の頃は、塾の前にあんか焼きそばを食べるのが楽しみでした。勉強もその流れで頑張れていたのかもしれません



 また私は塾の前に、近所の中華レストランで早めの夕食をとるのが楽しみでした。そんな楽しい時間の延長線に勉強が無理なくつながっていたように思います。


 楽しいおやつの時間を塾での時間とつなげてあげる工夫や雰囲気作りを実行してみるのも有効でしょう。


◆②ご機嫌フードで空気作りを
根性論を強いるよりも、精神を安定させる



メロンパンを出すと笑顔になる息子



 次に、子どもの成績が上がらないときに、親が深刻に小難しく考えることをやめてみましょう。


 特に子どもが小学校低学年の頃の学力差は純粋に学習量によるところが大きいですから、取り戻しは可能。高学年や中学生になっても、情緒的にプレッシャーや激励を与えるより、なるべく冷静に子どもに寄り添い、建設的に共感や理解をしてあげることの方が有効です。


 まずは好きなことや得意科目に向かっているときの子ども機嫌や気分を観察してみてください。そしてその空気感をイメージしながら、子どもがご機嫌になるような食べ物を用意してみましょう。


 我が子にとってはメロンパンがそれにあたります。私も小さな頃からパンが大好きで、食卓に珍しいパンが置いてあるとウキウキしたことを覚えています。


 子ども2人を東大に合格させた母が強調していた言葉があります。


「親の不安は子どもに伝染してしまうの。だからとにかく親がどーんと構えていることが、子どもが能力を発揮するためには一番大事なのよ」



おいしそうなパンが食卓に置かれていると、何をするにもモチベーションアップにつながりました



 学力が伸び悩んでいる時ほど、親が心の余裕を持つことは、子どもの精神安定にも少しずつ効果をもたらしてくれます。


◆③親子の楽しい会話が生まれる食べ物を選ぶ
→子どもからの積極的な発言を引き出す



親子で好きな飴について話し合ってみると、盛り上がります。先日はロングセラー商品の「純露」で盛り上がりました



 親子関係が子どもの成績に与える影響性については、さまざまなところで研究が進んでいます。


 例えば、ある研究(※)では、「学校での出来事や友達のこと」にとどまらず「勉強や成績のこと」「将来や進路」「地域や社会の出来事やニュース」について、親側に限らず子どの側からも積極的に話すコミュニケーションがとれていることが、高学力層の子どもの家庭の文化的特徴の一つであるとされています。


 でもこれ、子どもがどんなに大きくなったとしても、いきなりやれと言われたら難しくないですか? 少なくとも我が家では不自然だと感じ、楽しい食テーマで実践しています。例えば、好きな飴について。子どもからどんどん発言してくれるはずです。



息子は自分が好きなブラックサンダーを私のカバンに入れてくれます。理由を聞いてみると面白い会話がはじまりました



 また、ちょっとしたコミュニケーションのきっかけになるようなことも面白いと思います。ある日「ママのカバンにオススメのおやつを入れておいてくれる?」とお願いしたところ、ブラックサンダーが入るように。理由を聞くと、嬉しそうに話をしてくれます。


※「保護者に対する調査の結果と学力等との関係の専門的な分析に関する調査研究」(2017年・お茶の水女子大学


<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>


【スギアカツキ】食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12