タクシーに関するトラブルはいろいろあるが、よく聞くのが目的地への遠回り。運転手が気を利かせ、混雑する箇所や時間限定で一方通行になる道を避け結果そうなってしまう場合も多いが、一方で単なる勘違いや少しでも多くの運賃を貰うために遠回りされてしまったケースもあるようだ。

 都内のソフトウェアメーカーに勤める観月かなえさん(仮名・29歳)が、昨年秋に友人の結婚式に出席した日の夜のこと。高校時代のクラスメイトだった親友と5年ぶりに再会したこともあり、二次会の後は2人きりで三次会。思った以上に話が弾んでしまい、終電の時間をとっくに過ぎてしまったため、別れた後はタクシーを捕まえて自宅へ戻ることに。

 大体の場所を告げるとすぐに車を発進させたので車内でLINEやインスタグラムをチェックしていると、運転手が「お店の帰りですか?」と唐突に尋ねてきたそうだ。

◆夜のお店で働く女性だと勘違いする運転手

「一瞬、意味が理解できずにポカーンとしていましたが、この時は結婚式帰りだったのでドレスに上着を羽織ったキャバクララウンジで働いてる子みたいな恰好なのをすぐに思い出しました。だから、『友達の結婚式だったんですよ』と答えたのですが、すかさず『またまた~。誤魔化さなくていいんですよ』って。普通のタクシーのドライバーさんなら夜職を確認するようなことを聞いてこないと思うし、違うって言ってるのに否定するってありえないですよ。まあ、大学時代のごく短い期間ですけど、キャバ嬢のアルバイトをしていたことがあって、あながち噓ってわけじゃないですけどね(苦笑)」

 運転手の失礼な態度にイラッとしたため、あと適当に相槌を打って会話を拒否。その様子を察したのか運転手から話しかけてくることもなくなり、車内には沈黙が流れていたそうだ。

 そして、走り始めてから20分ほどで自宅近くの陸橋付近に差し掛かる。かなえさんの住むワンルームマンションは、陸橋の手前で分岐する側道に入って最初の路地で左折しなければならない。そのため、余裕をもって少し手前で「この先の側道に入って……」と伝えたが、ドライバーからは「えっ?」と聞いていない様子。そこで同じことを繰り返し言うも側道には入ってくれず、道路を直進して陸橋を越えてしまったそうだ。

◆ミスで遠回りしたのに…

「2回目に言った後でもまだ間に合ったはずなのに明らかに反応が鈍かった。今思うと居眠り運転まではいかなくても意識が少し飛んでいたのかもしれないですね。ただ、起きてしまったことは仕方ないので陸橋を越えた先の交差点でUターンし、グルッと回る形で同じ場所に戻るように指示。今度はちゃんと側道から私のマンションがある路地に入ってくれました」

 結果的に1㎞以上余計に遠回りする形になってしまったうえ、なんと支払いはその分も込みのメーター通りの額を請求されてしまう。

「以前、深夜にほぼ同じ場所からタクシーで帰宅したことがあったのですが、その時よりも500円くらい金額が高かったんです。だから、ドライバーさんのミスで遠回りになったことを指摘したのですが、謝罪もなければその分のお金を引いてくれることもありませんでした。それどころか『何が言いたいの? はっきり言ってくれないと分かりませんよ!』って逆ギレまでする始末。私がクレーマーみたいに思われるのも癪だし、これ以上話をするだけ無駄だなと思い、本当に頭に来ましたがメーター通りのお金を払ってそのままタクシーを降りました」

◆タクシー会社にメールでクレームを入れるも…

 ところが、翌日目が覚めても運転手の対応には納得がいかず、イライラは募る一方。そこでタクシー会社宛にメールで前日あった一部始終を綴り、大変不快な気持ちになったことを書いて送ったそうだ。

「以前みたいに運転手の名前は表示されていませんでしたけど、ドライバーを特定できるように領収書の伝票番号に乗車した大体の時間、乗った場所と降りた場所などの情報も一緒に書いておきました。でも、あれから4か月以上経ちますがタクシー会社からは何の連絡もなし。お詫びのメールくらい出すだろうと思ってましたが見事に期待を裏切られました(苦笑)。もちろん、今までタクシーに乗った中であんなひどいドライバーさんは後にも先にもあの人だけですけど、こっちが女性だからって舐めてかかってたんでしょうね。こんなことならあの時、我慢せずに文句言っておけばよかった! ああ、ムカツクー!!」

 仕事の内容に関係なく自身の言動でお客を不快な気持ちにさせ、ミスによって余計にお金を払わされる実害を被っているのに謝罪すらないのも論外。とりあえず、トラブルが起きない程度でいいから最低限の常識的な対応を身に着けてほしいものだ。

<TEXT/トシタカマサ>

【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。

―[タクシーでモヤモヤした話]―


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