現在ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催されている第96回アカデミー賞の授賞式。脚本賞は前哨戦のゴールデン・グローブ賞と英国アカデミー賞に続いてジュスティーヌ・トリエ監督の『落下の解剖学』(公開中)が受賞。アレクサンダー・ペイン監督作品初の同部門受賞が期待された『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』(6月21日公開)は、惜しくも受賞に至らなかった。

【写真を見る】脚本賞を受賞したのはフランス映画『落下の解剖学』

1970年代マサチューセッツ州にある全寮制の寄宿学校を舞台にした『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』は、生徒や同僚から嫌われている堅物教師のポール(ポール・ジアマッティ)と家族から見捨てられたアンガス(ドミニク・セッサ)、そしてベトナム戦争で息子を亡くした料理長のメアリー(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)が過ごす2週間のクリスマス休暇を描く物語。

ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!』(99)で第72回アカデミー賞脚色賞にノミネートされたペイン監督は、その後『サイドウェイ』(04)と『ファミリー・ツリー』(11)で同部門を2度受賞。手掛けた作品が脚本賞にノミネートされるのは今回が初めてのことで、脚本を担当したデヴィッド・ヘミングソンは本作が初の劇場用映画作品。『プロミシング・ヤング・ウーマン』(20)のエメラルド・フェネル以来となる初長編映画でのオスカー受賞は叶わなかった。

前哨戦となる全米各地の批評家協会賞では『ホールドオーバーズ』と『パスト ライブス/再会』(4月5日公開)、『落下の解剖学』が三つ巴を形成する大激戦が繰り広げられ、今年に入ってから主要な前哨戦を『落下の解剖学』が立て続けに制していた。ジャンルも言語も多様な力作ぞろいとなった今年の脚本賞候補5作品は、いずれも一見の価値がある作品ばかり。なお『ホールドオーバーズ』は、脚本賞以外にも作品賞と主演男優賞、助演女優賞、編集賞にノミネートされ、すでにダヴァイン・ジョイ・ランドルフが助演女優賞を受賞している。

文/久保田 和馬

作品賞など5部門にノミネートしている『ホールドオーバーズ』は心温まるホリデーストーリー/Seacia Pavao / [c] 2024 FOCUS FEATURES LLC.