富山市民に「地元のオススメ料理は?」と聞くと、大半の人が名を挙げるもつ煮込みうどん専門店『糸庄』。タクシー運転手直伝の「行列を避ける技」にならって食べに行く

 富山のご当地グルメと言えば、ますのすし、新鮮な魚介類、かまぼこ、富山ブラックなどが全国的に知られています。しかし、現地の富山県民に「地元のオススメグルメは?」と聞くと、その大半が「『糸庄 本店』の「もつ煮込みうどん」が美味い!」と口を揃えたように言います。ただし、同時に「最大1時間待ちのすごい行列店だから、時間に余裕がないと入れない」とも……。

 筆者が接したほぼ全ての富山県民が絶賛した『糸庄 本店』がかなり気になりつつも、滞在中は行列に並ぶ時間的余裕がなかったため、指をくわえつつ半ば実食を諦めていました。しかし、たまたま滞在中に乗った地元のタクシーの運転手さんから「『糸庄 本店』の並びの少ない時間帯」を聞くことに成功。その言葉通りに『糸庄 本店』に行くと、なんと並びゼロ。待ち時間ナシで、富山県民大絶賛の味に辿り着くことができました。

『糸庄 本店』を並ばないで食べる術とは?

 地元のタクシーの運転手さんが言う『糸庄 本店』の並びの少ない時間帯は「オープン前」「日曜日の夜間」だそうです。

『糸庄 本店』の定休日は、毎週火曜と第1・第3水曜日。これを除く毎日の営業時間は「昼の部」が11~15時30分(ラストオーダー15時)、「夜の部」が17~22時30分(ラストオーダー22時)。この「昼の部」「夜の部」とも、オープン前の15~30分前の時間帯は比較的空いていることが多いのだと言います。ただし、土日祝はこの限りではなく、さらに早めにお店に並ぶほうが賢明とも教えてくれました。

 そして、旅行者に嬉しいのが「日曜日の夜間」。富山県民の夜は早く、特に多くの人が翌日に仕事などを控えた日曜日の夜は、さらに人が少なくなるため並びゼロになるタイミングがあるそうです。ただし、あまりに閉店ギリギリに店に行っても、「売り切れで早めの閉店」となることもあるため、この辺は微妙とも教えてくれました。

 もちろん、タクシー運転手さんの説が常にそうだとは言い切れないものの、筆者はこの言葉を信じ、富山滞在中の「日曜日の夜間(21時頃)」に行ってみることにしました。

なんと並びゼロ! タクシー運転手さん説恐るべし!

『糸庄 本店』。タクシー運転手の言葉通り、行列はゼロでした
『糸庄 本店』。タクシー運転手の言葉通り、行列はゼロでした

 多少運試しのつもりで『糸庄 本店』に行ってみたところ、なんと並びゼロ。タクシーの運転手さんの話は本当だったというわけです。店頭の首をかしげたたぬきがやけに優しい表情をしているように感じながら。そのままお店の中へ。券売機で「もつ煮込みうどん」を購入し、カウンターでオーダーすることができました。なんてラッキー!

ムラが出ないよう時折鍋の蓋をパカっと開けて素早くかき混ぜていました
ムラが出ないよう時折鍋の蓋をパカっと開けて素早くかき混ぜていました

 カウンター前がキッチンとなっており、いくつもの鍋焼きの「もつ煮込みうどん」が作られています。そして調理する店員さんは時折、鍋の蓋をパカっと開け火入れのムラが出ないように素早くかき混ぜています。

まろやかなモツ出汁+沢山の具+氷見うどんが絶品!

「もつ煮込みうどん」1000円(税込)。蓋を開けて立ち込める湯気と良い香り!
「もつ煮込みうどん」1000円(税込)。蓋を開けて立ち込める湯気と良い香り!

 オーダーから数分、いよいよ筆者の元にも「もつ煮込みうどん」がサーブされました。写真を撮ろうと構える筆者に、店員さんはとても優しく「いいですか? 今から開けますよ」と言い、蓋を開ける瞬間を合わせてくれました。

 蓋を開けた瞬間、立ちこめる湯気ともつ煮込み仕立ての味噌の良い香りが漂います。もつ、かまぼこ海老天、えのきなどがうどんの上にドーンと乗り実に具沢山です。

鍋いっぱいに敷かれたたくさんの具材
鍋いっぱいに敷かれたたくさんの具材

 さっそくいただきましたが……これが美味! 富山県氷見市発祥の名物・氷見うどんを採用し、麺はしっかりコシがありモチモチ。もつ煮込みの味噌出汁は、ほのかニンニク感がある一方、まろやかな口当たりで優しい味わい。老若男女誰でも美味しくいただける味でした。もちろん、具材との相性も抜群で、食べ応え十分な絶品の味を楽しむことができました。普段は大行列をなすのも納得でした。

見た目以上にその味わいはまろやか
見た目以上にその味わいはまろやか

型通りではない接客に大感激!

 そして、筆者が『糸庄 本店』に強い好感を覚えた点がもう一つ。それは、店員さんたちの接客です。行列店の中には、その忙しさから「流行っているけど、店員がメチャクチャ事務的で感じ悪い」という店もあります。

 しかし『糸庄 本店』は、その真逆。着丼時の撮影にあったように、「おもてなし」が実に自然で、決まりきった接客ルールではなく、ラフではありながらも本質的な意味での「親切心」で対応してくれているように思いました。また、接客だけでなく店員さん同士もとても仲が良さそうで、年配の店員さんが孫ほどの歳の差の若い店員さんに「勉強がんばってる?」と優しく声をかけている場面も目にしました。なんだか富山の人の家にお邪魔しているような温かい空気で、「来て良かった~」と思いました。

まとめ

 富山県民大絶賛の『糸庄 本店』。その味を目指して多くの人たちが行列をなす理由がわかりました。そして、温かく接してくれた店員さんたちが生み出す「店の空気」にも大感激。富山の人の温もりを感じるお店でした。

(取材・文◎松田義人(deco))

●SHOP INFO

店名:糸庄 本店

住:富山県富山市太郎丸本町1-7-6
TEL:076-425-5581
営:「昼の部」11:00~15:30(L.O.15:00)、「夜の部」11:00~22:30(L.O.22:00)
休:火曜、第1・3水曜(※火曜が祝日の場合は営業。翌日水曜日休業)

食楽web