コメディアンビートたけしさんは自身の冠番組「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日系)にて、「(受給している年金は)月6万円」「めまいがして倒れた」と明かしています。(2023年11月19日放送回) 一方で、俳優の黒沢年雄さんは受給年金が月「約25万円」であることを自身のブログで明かしています。(2023年1月19日配信) ともに後期高齢者で20代前半から芸能界で個人事業主として活動しています。なぜ受給年金に約20万円の差があるでしょうか? 日本の年金制度を振り返り、シニア芸能人の年金事情に迫ります。

ビートたけしさんの年金は「6万円」~年金の種類をおさらい~

日本の公的年金には「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」の2種類があります。「国民年金」は日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入するもので、「厚生年金」は会社などに勤務している人が加入するものです。

その他に任意の公的年金として、国民年金の第1号被保険者が加入できる「国民年金基金」があります。

また、公的年金の他に企業が労働者使用者の合意によって設立する「企業年金」や、民間の保険会社が保険商品として販売している「個人年金保険」などがあります。この「個人年金保険」のために払い込んだ保険料は、一定の条件を満たせば個人年金保険料控除の対象となり、税金の還付を利用することができます。いずれも公的年金に上乗せして受け取ることができます。

(参照:いっしょに検証!公的年金厚生労働省

ビートたけしさんは同番組で「(自分は)厚生年金とかないからね」とも話していることから、公的年金として国民年金のみ受給しているようです。発言時の令和5年における、国民年金の満額は月額66,250円です。令和5年度の68歳以上の受給者の満額は、月額66,050円です。

「国民年金」の満額は令和6年、68,000円。前年比2.7%アップ

年金額は、物価変動率や名目手取り賃金変動率などに応じて、毎年度改定を行う仕組みになっています。

令和6年は前年度の物価変動率が3.2%、名目手取り賃金変動率が3.1%などの数値を参考に年金額が改定され、前年度から2.7%引き上げられました。

令和6年の「国民年金」の満額は前年度から1,750円増額され、68,000円。昭和31年4月1日以前に生まれた受給者は前年度から1,758円増額され、67,808円です。

(参照:令和6年度の年金額改定について厚生労働省

黒沢年雄さんの受給年金が月「約25万円」のワケ

芸能人は一般的に個人事業主に該当します。これは芸能事務所に所属している場合も同じで、芸能事務所と個人事業主として業務委託契約を結びます。

ところが、俳優の黒沢年雄さんは自身の年金についてブログ「クロちゃん」にて「(2ヵ月で)50万近く」と言及しています。(2023年1月19日配信)

年金の支給は年6回、原則として偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)の15日に、前月と前々月の2ヵ月分が支給されます。黒沢年雄さんは月額約25万円の年金を手にしているようです。

なぜ? 個人事業主でありながら、「国民年金」の満額を大きく上回る年金を手にしているのでしょうか。

黒沢さんは1964年に映画・演劇の製作配給を行う東宝と専属俳優の契約を結んだのをきっかけに芸能活動をスタートさせました。同日のブログにて「僕は18歳から、厚生年金…映画界も東宝映画専属俳優だけ厚生年金に入るシステムがあって…それから40年近く納めた。」と言及しています。

かつて日本の大手映画会社である東宝、松竹、大映などは自社制作の作品のみに出演する専属俳優を擁していました。なかでも、東宝は専属俳優が社員と同じように厚生年金に加入できるシステムを導入していたため、現在黒沢さんは厚生年金を受給できているようです。

個人事業主が年金を増やす方法

個人事業主の方で、将来受け取れる年金が「国民年金」のみでは心許ない方は、国民年金の第1号被保険者が加入できる「国民年金基金」や、保険会社が取り扱う「個人年金保険」へ加入する。

または、受給開始時期を原則の65歳から、66歳~75歳まで、昭和27年4月1日以前生まれの方(または平成29年3月31日以前に年金を受け取る権利が発生している方)は66歳~70歳まで繰り下げる。これらの方法で受給年金を増額させることができます。

ですが、年金の繰り下げ受給は年金収入を手にすることができない期間が伸びるというリスクがありますので、利用する際は自身にとって本当に有益であるか十分に検討しましょう。

THE GOLO ONLINE 編集部

(※写真はイメージです/PIXTA)