ぶいすぽっ!所属タレントが着用した“きぐるみ”、「モチポリ」の正体

 今週末で開催期間が終了する『SANRIO Virtual Festival 2024 in Sanrio Puroland』には、著名なVTuberが公式企画として訪れている。同様の例では本イベントに出演するおめがシスターズと、『ななしいんく』所属の因幡はねるが先んじて訪問しているが、さらに別軸の方角からもゲストが訪れている。

【画像】TVアニメ・ゲームシリーズ作品の3Dモデル

 まず、3月4日に訪問したのは『ぶいすぽっ!』所属の胡桃のあと白波らむねだ。双方ともイベントに出演するというわけではなく、純粋に著名人枠としての訪問と思われる。

 『VRChat』のプレイモードはVRではなくデスクトップモード。二人のいつもの姿も表示されている配信画面は、VRモードでも訪れる一般ユーザーの存在を除けば、通常のゲーム配信のように見える。「ぶいすぽっ!」との親和性が高いシューターワールドで何度もゲームを遊んでいるのを見るに、かなりハマっている様子だ。

 ちなみに、二人のアバターは「モチポリ」が採用されている。「モチポリ」とは『SANRIO Virtual Festival』の観客用アバターとして生まれた、イベントの看板キャラクターだ。二人は「モチポリ」に事務所のロゴとそれぞれのSDイラストを貼り付けた、特別仕様のものを使っているようだ。

 絶妙な存在感を発揮しつつ、普段使っているワンオフ仕様の3Dモデルを用いないことで、悪意あるユーザーによるリッピングなどの潜在リスクを回避できるというわけだ。「高価な自前の身体を持ち込まないこと」と「著名人として認知できること」という、企業所属VTuberが『VRChat』へ進出する上で立ちはだかる課題を解決できるちょうどいい“きぐるみ”があったことで、実現した施策かもしれない。

 そして、3月11日には「にじさんじ」から椎名唯華本間ひまわり魔界ノりりむの3名が訪問予定だ。この3名も「モチポリ」での来園になると告知されていることからも、上記の仮説が裏付けられるかもしれない。「著名VTuberの“化身”」となるアバターは、VTuberとメタバースをつなぐカギになるだろうか。

Adoのイメージディレクターがデザイン 大丸松坂屋百貨店から新たな3Dモデルが登場

 『VRChat』向けのハイブランドなオリジナル3Dアバターを展開してきた大丸松坂屋百貨店からは、3月8日に第3弾アバター『玲來(れいら)』と『零韻(れいん)』が発売された。きょうだいの設定が与えられたアバター(『玲來』が姉、『零韻』が弟)で、キャラクターデザインには驚くべきことに、Adoのイメージディレクターを務めるORIHARAが起用されている。

 第1弾アバターから貫かれている「正装」というコンセプトを、耽美でゴシックなベクトルで解釈しつつ、華奢ながら凛とした女性の『玲來』と、儚さを感じさせつつ体つきはしっかりとした男性の『零韻』。それぞれ少しずつ方向性が異なるものの、2体とも眼力が強い。ここにはORIHARAの特徴的なデザインがよく現れている。

 これで、大丸松坂屋百貨店が販売するオリジナル3Dモデルの総数は全12体となった。昨年10月からおよそ半年ほど、著名企業がここまで一気に多数の人型3Dモデルを展開した例は類を見ない。なお、『玲來』と『零韻』の試着会に筆者が訪問した際には、今後は各アバターごとの衣装を相互に着せ替えができるような取り組みも検討していると担当者が語ってくれた。老舗百貨店メタバース領域への挑戦は、まだまだ始まったばかりといったところか。

■アニメやゲームなど既存IPキャラクターの3Dモデルを手掛ける新ブランド「キャラモ」

 新たな顔ぶれとして、デジタルギア株式会社という企業が3Dモデル販売ブランド「キャラモ」を立ち上げた。その第1弾として発表したのは、TVアニメ・ゲームシリーズ『レヱル・ロマネスク』のキャラクター・ハチロクの3Dモデル。美少女ゲーム派生のコンテンツとしてある程度有名なIPコンテンツ発の3Dモデルだ。

 販売形式はVRMだが、要望に応えて『VRChat』向けセットアップを施したものも製作中らしく、ユーザーが人型3Dモデルに求めるものとはなにかを感じるところだ。ちなみに、この手のIPコンテンツとしては、利用規約が緩めなのも興味深い(基本的には非営利利用の範囲で使えるようだ)。

 「キャラモ」というブランド名には、「メタバース上でこれから活動していく多くの人の歩みの第一歩を支援し、異日常を支援するモデルを構築したい」「メタバースの生活者の日常に少しでも多くの選択肢と実現を」という想いが込められているとのことで、そのきっかけとして人気キャラクターの3Dモデルを手掛けていく、というコンセプトのようだ。

 安心して手を出せる既存キャラクターの3Dモデルは、「あのキャラクターになってみたい」という根強い需要にリーチできるだろう。こうした想いの実現にあたっては、コンスタントに新作を展開できることが重要と思われるので、まずはここから半年ほどの動向をウォッチしていきたい。

 著名人から一個人まで、アバターメタバースを歩む上で必要不可欠なものだ。そして、それぞれに必要なアバターは、「誰からも識別できるユニークなもの」であることも、「ある程度は匿名的なもの」であることもある。全てはケースバイケースだ。それぞれの需要を満たすものが、バランスよく世に生まれることが肝要だろう。

(文=浅田カズラ)

3月11日のニュースたち